ヘルメット戦士バイクライダー参上!?
新装備を身につけて更衣室から出る。
「わあ! ヒーローみたいでカッコいいですねー! すごくいいですー!」
「よっ! マスター店長っ!」
これもボディースーツの一種である!
ライダーやヒーローが身につけていそうな代物!
和風な忍者装束ではない。
未来忍者とでも言おうか。
強化外骨格とかサイボーグ忍者とか、そういうやつだ。
といってもメカメカしくはない。
金属パーツを使ったり鉄や銀系の配色にすればもっと未来的で映えるんだが……。
俺はあくまで黒! 忍者カラーで行く!
「いつも通りの黒色がいいですねー」
「お、さすがリンはわかってるな!」
トウコが俺の胸板を押す。
ここは革が分厚く、レザーアーマーのようになっている。
「おー! なんかマッチョっスね!」
「今回は防御優先だから、いつもより装甲――革パーツを分厚くしている」
パーツは人体の筋肉を模している。
デザインもいいけど人体にそった形状だからフィット感も増す。
いつもの忍者装束も拳や腕、肩、胸、脛などは革を分厚くしている。
これはさらに厚みを増したのだ。
それほど幅は取らないから、狭い通路につかえることはない。
金属じゃないから多少の柔軟性もある。
関節や可動部は薄くしてあるので動作に支障はない。
隠密行動にも適したぴったりしたフォルム。
「あ。あれっス! 仮面のライダーみたいっス!」
「かぶってるのは仮面じゃなくてヘルメットだけどな!」
「じゃあヘルメットライダーっス!」
「それ、普通のバイク乗りじゃねえか!」
ヘルメット戦士バイクライダー参上!
普通の人だ!
「手袋もバイク乗りさんみたいですねー」
「全員分あるぞ。拳はナックルガードをつけて補強してあるから頑丈だ。指先は柔らかい革を使っている」
素材は同じ『頑丈なコウモリの皮』だ。
これを【忍具作成】で柔らかく加工している。
リンは手袋をはめて満足げに言う。
「これで手も守られますねー」
「ああ。少し長めにしてあるから肌が露出しない。ジッパー付きだからすぐに脱げるし」
毒対策としては申し分ないはずだ。
手袋はグリップ力が増すし、ケガも防げる。
蛾がいない階層を突破したあとも使うつもりだ。
トウコが手をにぎにぎしながら言う。
「ミリタリー用の手袋に似てるっス!」
「タクティカルグローブだな。作るとき参考にしたから似ていて当然だ。トウコ用の手袋は、人差し指をとくに柔らかくしてあるぞ」
トウコが銃を握って確かめる。
引き金の感覚は繊細だ。
早撃ちをするには少しの抵抗でも気になるだろう。
トリガーガードからトリガーへ指を交互に動かす。
「これなら使えそうっス! あざっス!」
「使っておかしかったら言ってくれ。蛾の階層を抜けたら指の部分を切ってオープンフィンガーにしてもいい」
俺も素手で使う術があるから検討中だ。
【反発の術】と【吸着の術】だ。
これらの術は、もともとは直接触れる必要があったんだよな。
靴を脱いで裸足にならないと反発走りはできなかった。
今はスキルレベルが上がったおかげで靴や手袋ごしでも使えるようになった。
それでも直接触れたほうが効力が高まるのだ。
「あとはブーツも全員分用意した。安全靴のように鉄板が仕込んである。少し歩きにくいかもしれないから気をつけてくれ」
「はーい。でも、素早く動けなくなりませんか?」
「ああ。これはコウモリ対策だ。すぐに爆発しないフンがあったろ? あれを――」
「――うんこ踏んでもいいようにしてるんスね!」
「トウコちゃん……」
「うん。まあ、そうだ。踏みたくはないけど、避けれないからな」
地雷のように転がっているコウモリの爆発するフン。
靴底を強くしておけば足を傷めずに済むだろう。
やや機動力が落ちるがやむを得ない。
全てを兼ね備えた装備なんて作れないからな。
全員で試着して、少し調整する。
靴も手袋もオーケー。ヘルメットもフィットした。
このヘルメットには、普通の品と違って首部分に前垂れがある。
兜の面頬の一部、垂に近い。
喉を守るパーツだな。
垂を模しているが、今回は毒対策として首の肌を露出させないための用途だ。
ほぼ布なので防御性能はほとんどない。軽量化のためだ。
面頬にもいろんな種類があるんだが……。
まあ、今は置いておこう。
これはどちらかと言えばヘルメット寄りの兜なのだ。
「あ、そうだ。ヘルメットには毒対策でヘパフィルターをつけている」
トウコが首をかしげる。
「へぱってなんスか?」
「空気清浄機に使われていますよねー?」
「そうそう。ほこりや花粉をキャッチしてくれるやつな。鱗粉や毒針毛も防げるはずだ」
工場や医療現場でも使われている。
ほとんどの微細な浮遊物をキャッチしてくれる。
ウィルスが含まれるエアロゾルも吸着するから感染症対策にもなる。
「へー。弱そうな名前のくせにスゴイっス!」
「布で口を覆うより効果がありそうです!」
「これなら毒ガス攻撃も防げそうっスね!」
「それはたぶん無理だぞ? 毒ガス用のマスクとは違うし」
「えぇー!? ウィルスに効くのになんでダメなんスか!?」
「と言われてもな……俺はマスク専門家じゃないぞ!?」
「ウィルスと毒は違うんじゃないかなあ、トウコちゃん」
まあ、調べておいたから答えはわかる。
「ゲームでよく見るガスマスクにはでっぱりがあるだろ?」
「あるっス! 口のとこにつきでてるっス!」
「アレを吸収缶と呼ぶんだけど、そこに毒を吸収する薬剤がつまってるらしい」
「へー!」
「アレが片側についてるのは銃を構えるのにジャマだかららしい」
今回のヘルメットに吸収缶――邪魔なでっぱりはない。
「さすがゼンジさん。詳しいですね!」
「ま、調べただけだけどな。なんとなくじゃクラフトはできないからさ」
【忍具収納】君にも限度がある。
イメージをもとに作成するので、完全に丸投げするとあやしいものができる。
忍具なら多少雑なイメージでも作ってくれるが――
――いや、マスクは忍具!
忍者は面頬やマスクで顔を隠すものだ!
フィルターも忍具! ヘルメットも同様である!
「これでヘルメット、グローブ、靴の説明をしたな。これで毒とコウモリの爆撃対策はバッチリだ!」
「安心ですね!」
「じゃ、さっそく出発っス!」
トウコが転移モノリスへ向かう。
ヘルメットをかぶり、グローブと靴を装着しているが――服は従来のまま。
「まてまて! お前の衣裳がまだだろ!」
「あ、忘れてたっス!」
頭隠して尻隠さず!




