追放の逆? 逆追放ってなーんだ?
リンとトウコを呼んでリヒトさんからのメッセージを見せた。
「どう思う?」
リンが心配そうに言う。
「あちらのゼンジさんは行方不明なんですか……? 大丈夫でしょうか……!?」
「連絡が取れないだけで元気かもしれないぞ」
「そうでしょうか……ゼンジさんが友達に連絡もせず放っておくなんて、考えられません」
「かもなぁ。俺ならちゃんと連絡しそうだよな。まあ、仕事が忙しすぎて昔の友達とは疎遠になっちゃったけど……」
トウコがいい笑顔で言う。
「たしかに店長はマメっス! 休みの日でも返事くれてたっス!」
「休ませろよ! 俺の睡眠時間はトウコとオーナーに削られていた気がするよ……」
働きすぎていた当時の俺。休む暇もない。
休みの日も実質仕事していたし……休暇とは!?
うーん。
昔のことは忘れよう!
「リヒトさんとはダンジョンが現れてからの付き合いのはずだ。こまめにやり取りしていたのに、連絡が途絶える状況か……」
「うぅ……心配です!」
リンは心配しすぎて顔色が悪くなっている。
悪い想像がふくらんでしまうんだろう。
俺はリンの頭にぽんと手を置く。
「まあ、あっちの俺の心配してくれるのは嬉しいけど……別人だし、あんまり気にしないでくれ」
「はい。そうですよね。わかってるんですけど……」
そう簡単に割りきれないよね。
俺も気になっている。
トウコはケロっとした顔で言う。
「店長は店長っス! ここにいるから大丈夫っ!」
割り切ってるよ!?
トウコはシンプルだな。さっぱりしていてよろしい!
「ま、そういうことだ。俺は俺、あっちはあっちだよ」
自律分身は俺自身だ。
でも、あちらの俺は俺とは別人である。
似ているけど違う存在だろう。
リンが俺の腕に抱きつく。
「そうですよね! ここにいるゼンジさんが、ゼンジさんですよね!」
「……うむ」
やわらかい感触。いい匂いがする。
……おっと。
意識がそれた。
「向こうの店長はパージされちゃったんスかね?」
「普通に考えたらパージされたか死んだかだけど……もう一つ可能性がある」
第三のパターンがあるのだ。
「なんですかー?」
「前に御庭から聞いたんだが、ダンジョンと相性が良すぎると、帰ってこなくなることがあるんだってさ」
「なんスかそれ!?」
「ダンジョンで死んじゃったのとは違うんですよね?」
「出入り口が消えて、ダンジョンの中に消えてしまうんじゃないかって話だ」
御庭も知らないらしいので、これは推測だ。
ダンジョン保持者は数が少ない。
理由はともあれ、すぐにいなくなってしまう。
無事に暮らしているダンジョン持ちはレアなのだ。
俺たちのように三人そろってるのは激レアである。
「なんかパージに似てるっス!」
「あの、ゼンジさん。ストーカーさんは世界から追放されるって言ってましたよね?」
あのときストーカーはこう言った。
――禁則事項? ダンジョンのことを人に知られてはいけない……だと?
――世界から追放……? なんでそんな……!
禁則事項とは、ダンジョンやスキルのことを一般人に知られることだ。
シモダさんに【隠密】らしきスキルを見せてペラペラしゃべってたからストーカーは追放された。
「ああ。御庭たちは同じことを切り離しって呼ぶが、ストーカーが聞いたシステムメッセージでは追放だったな」
「ええと……もしかして。相性が良くて帰ってこないってことは、罰として追放されるのとは逆……なんじゃないでしょうか?」
俺はリンの言葉にとっさに言葉を返せない。
追放の逆……? 逆ってなんだ?
「バツの逆は、ご褒美っス!」
「罰の逆は褒美かもしれないが、追放の逆じゃないだろ? ……追放の逆とすると、逆に追放するのか? いや……自分から行くってことか?」
「はい。良い人はダンジョンの妖精さんに呼ばれるんじゃないでしょうか?」
妖精さんて! システムさん的な奴か?
俺も会ってみたい気がするが……。
それはさておき、呼ばれる……?
招聘……招かれているってことか?
「おお、なるほど!」
トウコが身を乗り出すようにして言う。
「つまり召喚っスね! 異世界転移っス!」
これは想像に過ぎない。
しかしこの考えはなんだか……しっくりくるかもしれない!
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