ダンジョン文通は命がけで!? その3
俺は自分のダンジョンの管理コンソールを操作している。
日課のメッセージチェックである。
「おっ!? リヒトさんから返事が来ているぞ!」
前回俺が伝えたのは以下だ。
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現在の名称:ブラッククロウ@あなたを信じます! そちらの私とリヒトさんは知り合いですか? 彼は無事ですか?
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これまでのやりとりで、リヒトさんはどこか遠いところにいるとわかっている。
こちらとは違うあちら側だ。
並行世界、異世界、ダンジョンの中……。
いろいろと考えられるが、まだハッキリしない。
リヒトさんは認識阻害を心配して正確な情報を話してくれない。
こちらのスゲタリヒト氏が失踪したのは、パージによるもので間違いない。
あちらのリヒトさんがこちらのリヒトさんを消してしまった、というのが真相だろう。
そりゃあ慎重にもなるよな。
これに対する答えが以下である。
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差出人:リヒト
件名:ご質問の答え
本文:
はい。僕はクロウゼンジさんと知り合いでした。
友人と呼んでもいい関係だったと思います。
こちらのクロウさんともリアル・ダンジョン攻略記を通じて知り合いました。
僕も手探りで、まだ正確な情報を持っていなかった頃です。
ブログを通じてダンジョンの情報をやりとりしていました。
一人で攻略していた僕にとって、彼とのやりとりは心躍るものでした。
夜通し話し合って、新しい情報や考え方を伝え合ったものです。
僕とは違う職業にステータス、新しいスキル。
ダンジョンの攻略方法やモンスターの種類。
日々の発見を教えあったんです。
リアダンの記事の一部はクロウさんの検証結果をもとにしています。
彼のダンジョンにかける熱意は並々ならないものがありました。
あ、そうだ!
こちらのクロウさんの職業は、ブラッククロウさんとは違うんですよ。
忍者ではありませんでした。
スラッガーという職業です。バットで戦っていました。
クロウさんは職業に貴賤はないとよく言っていました。
僕の職業も戦闘職ではありませんが、使いかた次第ですからね。
質問の後半部分について答えます。
現在のクロウさんの状況は把握していません。
探したのですが、見つけることができず……。
連絡も途絶えていて……とても心配です。
僕も今は探しに行ける状況にないのです。
あいまいな答えになってしまい申し訳ありません。
今、彼がここにいてくれたらどんなに心強いか。
僕があなた――ブラッククロウさんへ連絡したのもこれが理由です。
あなたはあなたであり、彼とは違う。
だけど僕が頼れるのはあなただけです。
いつかお会いできる日を願っています!
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予想通り、あちらの俺とリヒトさんは知り合いだった。
自分じゃない自分がいるというのは、微妙な気分になるな。
それにしても――
「……まさか忍者じゃないとは思わなかったぞ!」
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