決着と後始末。なにかが起こっている……?
昨日の更新直後に見た人は前半部分を読んだかもしれません。
加筆修正して再構成しました。
俺は老婦人の家があった場所を眺めている。
立派な庭のある緑に包まれた家。
今はパージされて跡形もなく消えている。
キリトが舌打ちしてがしがしと頭をかく。
「ちィ! しゃーねえな! もうちょいだったのによォ!」
もう少し時間があればパージ前に倒せたかもしれない。
キリトは悔しそうな表情を浮かべている。
キリカが言う。
「まあ、いいでしょ! 被害もでなかったし、キリちゃんも無事だし!」
「姉さん! ちゃんはやめろって!」
キリカはニヤニヤ笑いを浮かべながらキリトの頭を撫でている。
「ほら、髪が乱れたよー。直したげるよー」
「やめろよ……」
キリトが大人しくなる。
仲良し姉弟かよ!
カトウが言う。
「惜しかったが、あれでいいだろ。キリトも立ってるのがやっとだろ?」
「うっせェ! 触んな」
カトウはふらつくキリトに肩を貸している。
キリトはふくれ面でカトウに体を預けている。
思ったよりキリトの負傷は重いようだ。
あのまま室内でトレントと戦い続けていたらヤバかったかもな。
トレントの頑丈さは想定以上だったからな。
それぞれが落ち着いたところで、御庭がキリカに言う。
「さて、特異殲滅課のキリカ君。今回は僕ら公儀隠密と連携してうまく対処できたね! これからも協力していこう。日を改めて話す機会をもらいたいけど、いいかな?」
「特異対策課、公儀隠密か。……思い出したよ。最近できたハンパな組織があるってね」
公儀隠密――特異対策課はどうも知名度が低いようだ。
御庭が言う。
「うん。僕ら公儀隠密は若い組織だ。だけど力の限り人々を守ろうと努力している。それはわかってほしい!」
御庭は柔らかい表情で話している。
だがへりくだっているわけではない。
口調は断固としたものだ。
キリカが頭をかく。
「ああ、悪いね。別にバカにしてるわけじゃないんだよ。貴様らは現場に来た。人々を守ろうとしている。それはわかってるさ!」
「それじゃあキリカ君。同じ志を持つ仲間として、今後ともよろしくおねがいしたい!」
「ああ。だけど私らは部隊ごとに独立してる。ほかの隊に口出しはできないし、私らも指図は受けない。もちろん貴様らからもね!」
御庭が手を差し出す。
「指図なんてしないさ。仲良くやろうってことだよ!」
「ま、そういうことならわかったよ!」
キリカが御庭の手を握り返す。
こうして公儀隠密と特異殲滅課、五番隊の協力体制が成立したのだった。
後日、別の悪性ダンジョンでサタケさんを治療した。
ポーションは一般人のサタケさんにも効いた。
ダンジョン持ちだけに限定することなく効果を発揮するということだ。
ダンジョン内で使用したからペナルティもなかった。
そういうわけでサタケさんは無事、仕事に復帰した。
これで俺の仮リーダー役も終了である。
調査チームとは今後も密に連携を取っていく。
サタケさん、エドガワ君、ハルコさんと一緒に行動することもあるだろう。
それにしても……。
サタケさんを治療するための悪性ダンジョンを探すのには苦労したんだよな。
以前からマークしていたダンジョンを再調査しても、忽然と消えていた。
それに新しいダンジョンの手がかりをつかんでも、空振りが続いた。
住人が行方不明になっていたり、すでにパージが起きた後だった。
思えば正月に俺たちが対処しようとしていたダンジョンもなくなっていたんだよな。
ダンジョンの数が減っている……?
トレントのダンジョンは新たに発生したもので、昔からマークしていたものではない。
発生から一週間程度しか経っていないらしい。
例外もあるが、基本的にダンジョンは時間をかけて強くなっていく。
その割にボスのトレントは強すぎた。
領域が拡大した後のパージの早さも異常だ。
御庭の想定を上回っていた。
普段はもっと時間がかかるのだ。
もっと広がってからパージが起きるはずだった。
これはどういうことだろう?
ダンジョンの成長が速まっているということか……?
あるいはトレントが特別な存在だった?
意志が強い個体だったとか……。
うーむ。考えてみても答えは出ない。
だが、なにかが起きているような気がしてならない。
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