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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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領域の拡大! 特製のフィニッシュテープは効果抜群!?

「なあ御庭。ボスが領域から出たらどうなる?」

「領域が拡大する。今は家の中だけど、もう少しで庭まで広がるよ」


 うーん。まるで俺の心を読んでいるかのようだ。

 読心能力ではないらしいけど……便利なもんだ。


「なら、庭に出しても問題ないよな?」

「庭まで領域が拡大したとしても大丈夫だろう。その先はまずいね」


 隣の家や道路まで領域が広がるとマズい。

 巻き込まれる人が出るし、あまり広がると領域全体がパージされる。


「この家の敷地まではオーケーだな」

「うん。仮にこの家の敷地がパージされても認識阻害の影響を受ける人は少ないだろうね」


 そうなったとしても二次被害は小さい。

 ゼロではないが許容できる範囲だ。


「よし。じゃあボスを庭へ出して迎え撃とう。その先まで進みそうなら――」

「――ナギ君が止める、でいいかな?」

「いいですよ。止めるだけなら簡単です」


 ナギさんの異能ならトレントの動きを止めることはたやすい。

 そうしないのはトクメツがいるからだ。


 ナギさんは御庭のそばを離れられない。

 敵を倒すことより守ることを優先しているからだ。



 特異殲滅課の三人がトレントと戦っている。

 キリトは少しふらついている。疲労と出血のせいだろう。


 ひとりでダンジョンで戦っていた分、負傷が多い。

 深手はないが細かい傷が無数にある。

 応急処置はしていたが傷が治ったわけじゃない。


 それでも目は死んでいない。

 まっすぐに敵だけを見ている。


「こんだけぶちかましても倒れねェ! こうなりゃ直接斬るしかねェな!」


 あ、特攻をかけそうな雰囲気。

 一か八かの賭けに出る感じだ。


 キリカとカトウが言う。


「道は私が作ったげるっ!」

「……やれやれ」


 なにやら命がけの雰囲気になってきている。

 無理して正面からぶつからないで!?



 俺は声をかける。


「待て待て! 盛り上がってるところ悪いが考えがある!」

「あァ?」


 キリトが小さく目線をよこす。


 お?

 一応は聞いてくれそうな雰囲気だ!


 俺は分身を出してトレントへ向かわせながら、さらに言う。


「少し下がってくれ。庭まで後退する。無理に攻めなくていい」

「庭は外だろうが!」


 俺はダンジョンから出るとき、領域の外へは出さないと言った。

 それは守る。


 領域が庭まで広がっても、そこは領域内だ。外ではない。

 ちょっとズルい言い方かな?


「庭までだ。この家の敷地より外に領域は広げさせない。ここなら被害は出ないし、楽に倒せる」

「ん……? どういうことだァ?」


 あ、伝わってない。

 キリカが俺をにらむ。


「食えないな。貴様らは口先ばかりだ」

「俺はあんたたちの心配もしているんだよ、キリカさん。突っ込んでケガするのはキリト君だろ?」


 トクメツの優先順位はダンジョンを潰すこと、モンスターから人々を守ることだ。

 キリカさんの個人の優先順位はどうだろう。

 大事な弟がかなり上位にあることは間違いない。



「あァん!? キリト君だァ? (くん)はやめろ、忍者野郎!」


 いまそこに食いつくんじゃないよ!

 このデコ助野郎!


「俺が言いたいのは、もっと楽に倒せるってことだ。ケガしたらバカらしいだろ!」


 キリカがうなずく。


「そういうことなら、わかったよ! 貴様の口先に乗ってやろうじゃない」

「おお」


 キリカが指をつきつけてくる。


「だけどもし、コイツが外に出て人を襲うようなことがあれば……責任は取ってもらうから!」


 目が怖いよ!

 責任取って腹を切るのかな。切腹かな!?


「ああ。人の被害は出さないと約束する」

「じゃあ下がるよ。キリト。コウ」


 キリトは不満げに、カトウはあっさりとうなずく。


「……おうよ」

「承知しました」


 トクメツの三人は庭――今は普通の空間――へ出る。

 俺たちも外へ。


 ダンジョン領域の外に出ると、そこは静かな住宅街だ。

 明るい陽射しを受けて、庭の花々が咲き誇っている。


 さっきと変わらず雨は降っていない。

 雨が降ってたら、屋外へは出せないところだ。



「静かですねぇ?」

「領域と外では空間がズレているから、音が伝わらないらしいですよ」


 ハルコさんにエドガワ君が説明している。


 領域内でトレントが暴れているが、音も振動も伝わってこない。

 物理現象どうなってんだろうね。


 俺たちは普通に出入りできるのに別の空間なのだ。

 繋がっているのにズレている。

 わかるようでわからないな。


 領域の外から見ると、老婦人の家に変わったところはない。

 室内は天井が高くなったり部屋が広くなったりしているが、歪んで見えるわけじゃないのか。

 不思議なものだ。


 それを言ったらダンジョンのほうがもっと不思議か。



 御庭が言う。


「さてクロウ君。領域が広がりそうだよ!」

「ん? どうしてわかるんだ? 異能か?」


 俺には変化が感じられない。

 音とか光が出るわけじゃないよな。


「異能とは違う。感覚だよ。誰でもある程度は感じられるものだ。慣れればわかるようになるから、意識してみてほしい」

「ふーむ?……わからん!」


 首をかしげていると、妙な感覚を覚える。

 気圧で耳が詰まる感じに近い。全身でそれを感じる。


 そして、あっという間に庭がダンジョン領域に呑み込まれた!

 空気が変わる。温度が変わる。住宅街の生活音が聞こえなくなる。


「オォォォ!」


 室内からトレントが叫ぶ。

 もう庭まで領域が広がっている。


「来るぞ! ナギさん!」

「準備できています」


 庭に移動したのは罠を張ってもらうためだ。

 分身が握ったワイヤーの先がナギさんの手元へ伸びている。


 室内から庭に入るには、このラインを越えなければならない。

 トレントが根を動かして直進する。


「ニワ! ニワ!」


 ワイヤーは人間の首くらいの高さに設置されている。

 トレントはワイヤーを気にもかけず、突進してくる。


「よし! 接触したな!」


 勢いよく庭へと降りてきたトレントの胴体がワイヤーに引っかかる。


 そして――


「おおッ! すげェ切れ味だ!」

「これは……やったか!?」


 トクメツ連中が驚いている。

 トレントの幹は真っ二つに切断される。


 凄まじい威力! 切断力!

 停止の異能強すぎる!


 この作戦はナギさんの異能ありきである!


 相手が動いて触れれば勝手に切れる。

 ワイヤーは停止能力によって固定されるから、こちらから当てることはできない。


 移動先がわかっていないと成立しない攻撃だ。

 このために庭に誘い込んだ。

 うまくいったな!

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[一言] セップクはなし!ザンネン!
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