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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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考え方が違っても、向いている方向は同じ!

 わさわさと植物モンスターが攻めよってくる。

 分身が支えていた前線が崩される。


 俺はそこへ踏み込んで横薙ぎに刀の峰を叩きつける。


「フルスイング! うりゃあっ!」


 敵の群れが大きく後退する。


「来たか忍者野郎! 手抜きしやがって!」

「手を抜いてたんじゃない! 戦術ってやつだ!」


 前に出て戦うから偉いわけじゃないぞ。


「斬らなきゃ敵は減らねえんだよ! おらァ!」


 キリトは獰猛な表情で敵中に切り込んでいく。

 やはり突出しすぎている。

 左右の敵が包囲を狭める。


 敵に取り囲まれようとするその時、左右の敵が塵となって消える。


「どんどん行きな! うしろは私が守ったげる!」


 キリカがフォローする。

 しかしやはり無理に前に出ている感じは否めない。


 今度はキリカが狙われている。


「はあ……前に出すぎなんですよ」


 カトウがため息を吐く。

 二本の剣を扇風機のように回転させ、左右から伸びてきたツタを刈り取っていく。


 結局、全部のしわ寄せはカトウに行っている気がする。

 苦労してるなぁ、こいつ。



 俺は攻める方向を変える。

 キリトが進んだ方向を正面と考えて、包囲しようとする片翼を押し返す。


 分身を放ち、剣を振り、臨機応変に戦う。

 しかし植物モンスターはひたすらに押し寄せてくる。


 雨のせいか、トレントのせいか、倒しても次々と湧いてくる。

 足元から芽吹いて育つのだ。



 俺は大声で言う。


「なあ、敵の数が多すぎないか!?」

「あァ!? だからなんだっつんだ!」


 キリトは振り返りもせず怒鳴り返してくる。

 ああ、会話が通じない!


「だから! 数が多いから戦い方考えようぜ!」

「敵は斬る! ダンジョンはぶっこわす! 変える気はねェ!」


 キリカさんが口を開く。


「これが私らのやり方なんだ。口出しすんなっ!」


 ああ、こっちも会話が通じないよ!?


 俺はカトウの様子をうかがうが……。


 目をそらしたっ!?

 駄目だ……説得するのはムリだとあきらめているのか……?



 俺はモンスターを打ち払い、さらに言う。


「モンスターの数が異常だ。雨が止むのを待て!」

「待ってらんねえんだよ! こいつらを外に出すっつうのか忍者野郎!」


「そうは言ってない!」

「ともかく斬る! おらァ!」


 キリトがトレントの胴へ大上段からの一撃を入れる。

 幹が大きくえぐられ、トレントの動きが止まる。


「――ォォォォン!」


 だが深く穿たれた傷もあっというまに治ってしまう。

 異常な再生力。


 当初考えていたより、このダンジョンは強力だ。

 攻撃力や移動力はないが、耐久力や繁殖力が高いのだ。


 斬撃や打撃で戦うには分が悪い。

 火……ここにリンがいれば……!


 だが、それを言っても始まらない。

 都合よく助けに来たりしないのだ。


 外で御庭が連絡をしていても、移動に時間がかかる。

 この状況が終わるまでには間に合わない。



 キリカが言う。少し息が上がっているようだ。


「私らは逃げない。退かない。私らの後ろには無力な人々がいる。一歩だって退けないんだ!」


 その目には力がある。

 倒しても減らない敵を前に、少しもあきらめていない。


 キリトは前へ前へと切り込んでいく。

 囲まれることを気にも留めず、ただただ前へ。


 その体は傷だらけで、服は赤く染まっている。


 カトウも文句を言わずについていく。

 たぶん、いつもこうなのだ。



 ふうむ。

 トクメツの連中は公儀隠密と考え方が違う。

 俺たちは忍者だ。逃げも隠れもする。

 有利な状況で戦おうとするし、不利なら撤退して次を考える。


 だが俺たちの目的は同じ。

 ダンジョンの害を防ぎ、人々を守ることだ。


 やりかたはどうでもいいはずだ。


「聞け! 少し下がるんだ!」

「怖いんなら一人で逃げろや、忍者野郎!」


「俺も逃げるつもりはない。場所を変えるんだよ! ダンジョンの外で食い止めればいい!」

「場所だァ……?」


「奴らは雨の中だと際限なく増える! だからダンジョンの中で戦ってもキリがないんだ。だが、外でなら――」


 まだ雨は止まない。

 植物モンスターは足元から次々と芽吹いて増殖している。

 トレントの周囲のモンスターは移動能力を得て、俺たちを襲ってくる。


 不利な場所。ダンジョンの地形効果。ボスのバフ。

 ここで戦っても勝機は薄い。


 正面からのごり押しで勝てるとしても、こちらの損失が大きい。



「――ニワ! カエリタイ! オォォ――」


 トレントがむせび泣くように叫ぶ。

 枝を伸ばし、根を動かし、外へ外へと進もうとする。


 家に帰りたいだけなんだ。

 愛して育てた庭に戻りたいだけなんだ。


 だとしても、モンスターを外へ出すわけにはいかない。

 しかし領域内なら。ダンジョンと外界の中間ならば……!



 俺は再び叫ぶ。


「とにかく外へ出るんだ! ここで倒れたら、人々は守れない!」

「……倒れる気はねぇけど、そうだなァ」


 そう言うキリトは満身創痍だ。

 それでも、ふらつくことなく立っている。


 キリカが言う。


「外へ出てどうするんだい?」

「出ると言ってもダンジョン領域までだ! そこで食い止める! そこから外へは出さない!」


 キリカがうなずく。


「いいね! そうしよっか!」

「じゃあ、戻るぞ!」


「にしても、ダンジョンを出るのもなかなか面倒そうだ……」


 すでに周囲は敵だらけ。囲まれている。



 御庭が転送門の近くで手を振っている。


「殲滅課の諸君! クロウ君! 退路はこちらで確保するよ!」


 ナギさんの隣にいたエドガワ君が必死の表情で走ってくる。

 手になにか持っている。


 雨粒をしたたらせ、きらりと光るワイヤー。

 ワイヤーはナギさんから伸びている。


 走ってきたエドガワ君が俺から見て少し右側で立ち止まった。

 これによりワイヤーが斜めに張られる。


「クロウさん! 蹴散らしてください!」

「おう! フルスイングっ!」


 俺たちを囲んでいた敵が吹き飛ぶ。

 吹き飛んだ敵はエドガワ君にはぶつからない。


 ワイヤーに接触した植物モンスターが次々と切断されて塵となる。


「なんだァ!? 敵がぶったぎれてくぞ!」

「こちらの能力だ! ワイヤーには触れないでくれ!」


 ナギさんの手につながるワイヤーは異能により固定され、するどい刃となっていたのだ。

 敵の包囲が崩れる。


 俺は振り返って叫ぶ。


「よし! 退路ができた! 転送門まで走れ、トクメツさん!」


「ありがとっ! 外へ行くよキリちゃん! コウ!」

「キリちゃんはやめてくれよ、姉さん!」

「承知しました」


 姉さん?

 やっぱりキリトとキリカは姉弟なんだな。


 トクメツの三人はキリトをしんがりにして走っていく。

 追いかけようとする植物はワイヤーに切断されて塵となる。


 うーむ。停止ワイヤー強すぎる!



 エドガワ君が情けない声をあげる。


「ひええっ! ボクはどうすればいいんですかね……?」


 異能に守られたエドガワ君に敵は近寄れない。

 しかし敵中に残されてしまった。

 自力で脱出するのは難しい。


 そこで俺!


「入れ替えるぞ! ――ほら、走れ!」


 入れ替えの術を発動。

 俺の位置はワイヤーよりも転送門寄り。敵は倒されている。


「あ、ありがとうございますっ!」


 そして俺は敵のど真ん中。


 すぐに反発跳躍して空中へ。

 そこから二段ジャンプ!


 敵の頭上を軽々と越えて安全圏へ!

 あとは走るだけ!


 根っこでウネウネ走ってるような連中に追いつかれるわけないよね!


 そういうわけで、全員がダンジョンを脱出できたのだ!

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― 新着の感想 ―
[一言] この脳筋集団対話の窓口作っておいた方がよくない? 他の組織とぶつかったり不利な状況に突っ込んだり色々と問題ありすぎる…
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