ダンジョン脱出! 変わる状況!?
悪性ダンジョンの入口まで走る。
エドガワ君とハルコさんは無事だろうか……。
長髪の男は厄介な能力を持っていた。
剣を生み出すか、収納から取り出す能力。
剣の呼び寄せ――取り寄せ能力かもしれない。
加えて念動力で剣を浮遊させる。
あるいは剣を操る異能とか、磁力操作の類かもしれない。
見た範囲では同時に三本の剣を操っていた。
剣のパワーや威力はキリトに劣る。
しかしスピードと操作性は上だろう。
三本の剣を避けきるのは難しい。
俺とは相性の悪い相手と言える。
どう攻略したものか……。
まあ、まずは対話だ。
話が通じるといいが……。
だが、エドガワ君とハルコさんがやられていたら……話しだけじゃすませられない。
「いや、悪い想像はよせ。とにかく、戻ろう!」
入口にたどり着いた俺は、呼吸を整えて転送門へ飛び込んだ。
視界が切り替わる。
ダンジョン領域に呑まれた老婦人の家である。
俺は刀を構えて周囲を見回す。
「みんな、無事か!?」
室内は荒れている。
自律分身が剣で腕を刺し貫かれ、壁に釘付けにされている。
「よう俺……いいところに戻ったな! いつつ……」
これは、痛そうだな……。
タンスの幻が消えている。
浮遊する剣が五本、エドガワ君の周囲を取り囲んでいる。
そのうち一本が突き刺さって、エドガワ君の服を血に染めている。
額に汗を浮かべたエドガワ君がほっとしたように言う。
「クロウさん……よかった!」
ハルコさんも無事だ。
エドガワ君の背後で壁に背を押しつけて立っている。
「ゼンゾウさん……無事だったんですねぇ!?」
エドガワ君が長髪の男に言う。
「賭けはこっちの勝ちみたいですね……さあ、降参してください!」
長髪の男は、なぜか先ほどは身につけていなかった黒いサングラスをかけている。
暗い室内でサングラス……?
長髪が俺に問う。
「戻ってきたのはアンタか……キリトのアホはどうした?」
声は詰問するように鋭い。
だが、心配するような響きもある。
「無事だ。中でモンスターとじゃれ合ってるぞ」
長髪はやれやれと息を吐いて、両手を上げる。
「ふう。それならいい。もう戦うのも面倒だし俺は降参する!」
空中の剣が力を失い、床に落ちる。
うーん?
どうやら決着がついたようだ。
「どういう状況なんだ? 誰か説明してくれ」
自律分身を壁に張り付けていた剣も抜け落ちる。
解放された自律分身が腕を押さえながら言う。
「とりあえず、俺を解除してくれ。説明するより早い」
エドガワ君は油断なく銃口を長髪に向けている。
判断分身を出し、クナイを持たせて長髪の近くに立たせた。
「聞きたいことはいろいろあるが、少しじっとしていてもらう。妙な動きをしたらぶすりといくからな!」
「ああ。だが、早めに頼む。キリトが心配だ」
仲間が心配らしい。
そりゃそうだよな。
ともかく自律の記憶を読み取ろう。
そう時間はかからない。
「ああ。んじゃ解除!」
自律分身が消える。
そして記憶が還元される。
これで俺がダンジョンにいた間の出来事がわかるだろう。




