異能バトルは突然に!?
エドガワ君と長髪の男がにらみ合う。
空中に浮かぶ剣をエドガワ君の能力が防いでいる。
一方、俺は一人目の――短髪の男と向かい合う。
男は日本刀を正眼に構えている。
剣道で言えば、中段の構え。
刀の切先が俺の喉元に突きつけられている。
スキがない。
俺の動きに合わせて剣先が追ってくる。
足運びもスムーズ。姿勢もブレない。
ちゃんとした剣術を身につけた動きだ。
短髪が言う。
「おいおいどしたァ? もう逃げねえのか?」
「逃げるわけにはいかなくなったからな!」
もちろん一刻も早く、外に出て連絡はしたい。
しかし、二人を置いて逃げるわけにはいかない。
エドガワ君の異能は強力だが、無敵ではない。
何らかの能力で破られる可能性がある。
そもそも、ダンジョン領域に現れた連中が一般人とは思えない。
異能者かダンジョン持ちだろう。
危険だ!
ぎろり、と凶悪な表情を浮かべる男。
「へえ! なら、かかって来いよォ!」
輩だよ!
「その前に落ち着いて話し合えないか?」
「話なんざねェ! ぶった斬って、そのあとだ!」
「いや……斬られたら話せないんだが!?」
「うるせえ! 死ねっ!」
だから、死んだら話せないんだが!?
話が通じないならしかたがない――
叩き伏せてからじっくりお話しようじゃないか!
男がやや大振りの斬撃を放つ。
刀が俺の肩口を切り裂く――もちろんこれは分身だ!
俺はもう身を低くして踏み込んでいる!
刀をくぐりながら、横薙ぎに一閃!
「うりゃあっ!」
男の胴を狙った【フルスイング】の一撃――
男が驚き――
「なにっ!? ――なあんてなァ!」
――男の口元がにやりと吊り上がる。
刃が加速して走る。
俺の刀に割り込んで、がちりと受ける。
だがギリギリといったところ。
受けきれまい!
ぎいん、と刀が激しい音を立てる。
刀を持った俺の手に激しい衝撃。
いや――衝撃なんてもんじゃない!
これは……吹っ飛ばされる――!?
「――ううおおっ!?」
「なんだァ!?」
――同時に、相手も吹き飛んでいる。
俺は壁にぶつかりかけ、壁に着地。
うおお、脚がじぃんとする!
手も、あまりの衝撃に痺れている。力が入らない。
かろうじて刀は手放さずにすんだ。
とっさに【吸着の術】をかけなかったら、危なかったな!
短髪の男も【フルスイング】のノックバック効果で後退している。
内壁にぶつかり、壁に飾られていた写真立てが落ちて割れる。
「ははっ! おもしれェ! 似た能力か!」
男のダメージは小さいようだ。
その顔には凶悪な笑みが張り付いている。
似た能力――
相手を吹き飛ばす力。反発力。
あるいはノックバック効果。
だとしても――
こっちは全力の横振り。
あっちは刀を割り込ませただけだぞ……!?
似ているが、違う。
おそらくはもっと強い力だ!
ここでは俺のスキルは不完全とはいえ……。
相手が異能を使っているのか、スキルを使っているのかはわからない。
なんにしろ、同じ技では不利!
「おらぁッ!」
考えている暇はない!
男が踏み込んでくる。
正眼の構え。
剣先を俺につきつけるように距離を詰めてくる。
それだけで、かなりの圧力だ!
俺は一歩退く。
突き出された刀は無防備に見える。
斬り払って懐に入り込めば、あるいは――
だが……打ち込む気持ちはわいてこない。
恐れではない。危機感。
そうすべきでないという直感。
俺はあえて男の攻撃を誘う。
「よし来い! さっきの技を見せてみろ!」
俺は右手を振る。
にやりと笑い、相手も刀を合わせてくる。
「望むところだ、おらァ!」
乗ってきたな!
だがこれはフェイント!
俺の右手に刀はない!
左手で握った刀が本命だ!
さらにスキルで加速する――
「ファストスラッシュ!」
「――甘えっ!」
男は無理やり刀を引き戻し、握りの部分で斬撃を受ける。
「むっ――!」
先ほどと同じ激しい衝撃が俺を襲う。
今度は刀身ですらない!
柄に触れただけだぞ!?
強烈な反発力に体が浮き上がり、吹き飛ばされる!
だが、食らうのは二度目!
こうなることは予想していた!
刀を当てた方向と真逆に吹き飛ばされる!
つまり反発力は斬りつけた方向と逆!
俺は吹き飛ばされる勢いそのままに、部屋の奥へ――!
――エドガワ君とにらみ合っている長髪のほうだ!
よし! 狙い通り!
このまま吹き飛ばされる勢いで――
「フルスイングっ!」
空中で回転しながらの横薙ぎ!
長髪の男が目をむく。
「なにっ!?」
ぶち当たる直前――新たな剣が現れて防御する。
念動力か、別の能力かはわからないが剣は宙に浮いている。
だが関係ない!
俺は力を込めて、そのまま振り抜ける!
「うりゃあぁぁっ!」
「――うぐえっ!?」
ノックバック効果が相手の剣を吹き飛ばす。
その剣にぶち当たって長髪の男が吹っ飛び、廊下に転がる。
短髪が刀の切っ先で俺を指しながら言う。
「――てめっ! 汚ねぇぞ!」
「そいつは忍者にはホメ言葉だぜ!」
廊下の先で長髪が起き上がる。
「やれやれ……受けた剣ごと吹き飛ばされるとは……面倒な能力だな」
長髪の男の周囲には、三本の剣が浮かんでいる。
さらにもう一本出して、防御したらしい……。
こいつも厄介な能力だ!
剣先はこちらを向いていて、今にも飛んできそうだ。
短髪の男もこちらを睨んでいる!
元気いっぱいだね!?
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