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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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熱帯雨林はスコールで!

 ざあざあと大粒の雨が降る。


 雨を受けて、草木は生き生きとしているように見える。

 トラバサミ花も花弁をパクパクさせている。


 草木の間に隠れていた別の植物モンスターもうごめいている。


 ――長いツタをゆらゆらと揺らしているもの。

 ――粘液をしたたらせているもの。


「うわぁ……たくさんいたんですね」

「きもっ! ムリムリ! 早く帰りましょうよぉ」


 モンスターの数が少ないと思っていたが間違いだ。

 目に入っていなかっただけ。


 モンスターの数や密度はかなりのものだぞ……。


「入口へ戻る! 花を踏むなよ!」


 俺たちは足元に気をつけながら入口近くの石畳まで戻った。



 エドガワ君たちは胸をなでおろす。


「よかった……石畳まで戻れました!」

「ふう……これで安心ですねぇ」


 転送門周辺には植物が生えていない。


「ふむ。この石畳の土台があるからか……」

「あ、これのおかげで外にモンスターが出てこないのかもぉ?」


 ダンジョンの外、悪性ダンジョン領域。

 普通の世界とダンジョンの狭間。

 普通ならここにモンスターがあふれ出る。


「植物型のモンスターだから、外には湧かないのか? ふーむ。転送門を通らなくてもスポーンしそうだけど……」


 転送門を通らなくてもいい。

 領域内にモンスターは湧くはずだ。

 大鬼やショッピングセンターの領域ではそうだった。


 植物系モンスターだから土の上にしか発生できないのか?

 でも、庭には土がある……。


「ボクにもわかりません。ダンジョンごとにルールは違うみたいですが……」

「もう確認オーケーですよねぇ? うわぁ雨が強くなってきましたよぉ! もう帰りませんかぁ……?」


 俺はうなずきかけ――


「そうだな。いや……なにか聞こえなかったか?」

「地響き、ですかね……?」


 エドガワ君にも聞こえたようだ。空耳じゃない。


 森の木々が揺れる。

 みしみし、と木が軋むような音。


 大きなものが動くような地響き。

 足音とは違うようだが……。


「な、なんか音、大きいですよぉ!?」


 軋む音が大きくなる。なにか近づいてきている。


 森をかき分けるようになにかが現れる。

 濃い雨のカーテンのせいで全貌は見えない。


 木が外側に倒れて……いや、動いている?

 ずりずりとなにかを引きずりながら木が動く。


 周囲の木を軋ませながら進んでくる。


「……動く木? 樹木(じゅもく)のモンスターか!?」


 ツリージャイアント。

 あるいはトレント。


 体を揺らして、巨木が森を割って現れる。

 まだ遠いが、それでも大きさはわかる。


「えー!? そ、そんなのアリですかぁ!?」

「大きい……! あれがボス個体ですかね!?」


「警戒しろ! ヤバかったら転送門へ飛び込め!」


 俺たちは転送門を背にして様子をうかがう。


 巨木の幹がめきめきと横に裂ける。

 現れたのは口。人間のような顔だ。


 その口が動き、およそ人間離れした音を発する。


「……サナイ!」


 木々がこすれあうようなその音は耳になじまない。


「な、なんかしゃべりましたよぉ!?」

「こいつは……のみ込まれた住人の成れの果てか……!」


 巨大な樹木は根を脚のようにくねらせて進む。

 ゆっくりと、こちらへ近づいてくる。


 歩みは遅いが、いずれは転送門へたどり着くだろう。

 そうなれば石畳は砕かれ、周囲の草木モンスターも外へあふれ出る!


 裂けた木の口が叫ぶ。

 木々をこすり合わせたような、枯れたような声。

 それは悲痛な叫びだった。


「ニワ……! カエリタイ……!」

「庭……?」


「も、もしかして、この家のおばあさんとかぁ!? うそでしょぉ!? 意識あったりするんですかぁ!?」

「いや……ないはずだ! 前に変異者に話しかけてみたが、ダメだった」


 大鬼に対話は通じなかった。

 言葉を話してはいるが、わずかに残った思念のカスに過ぎない。


「ワタサナイ! ワタサナイ!」

「渡さない……って言ってますね? なんのことですかね?」


「庭。帰りたい。渡さない……か。帰りたいのはわかるが……なにを渡さないんだ?」

「うーん? あっ。雨がやみましたよぉ!」



 雨が弱まり、止む。

 すると、樹木の化け物の動きが鈍くなっていく。


「止まった……? おとなしくなったようだな」

「雨が降ってないと動けないとかぁ?」

「わからんが、そうだといいな」


「クロウさん。どうしますか?」

「いったん帰るぞ! アレが出てくるまでまだ時間はありそうだ。その前にサタケさんを治療しよう!」


「えぇ? 大丈夫なんですかねぇ?」

「どっちにしろ、アレが外に出てこないようにしなきゃな!」


 このダンジョンは今は安全。

 少なくとも転送門周辺は安全だ。


 だがボスらしき木のモンスターはこちらに向かって来ている。

 目指しているのは転送門。つまりダンジョンの外だ。


 外へ出てくるのは時間の問題。

 もうすぐモンスターがあふれ出すかもしれない!

 その前にサタケさんを治療しなくては!

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― 新着の感想 ―
[一言] このままでも入口付近を有効利用できそうだけど… 問題を解決してあげないとかわいそうな案件ですね?
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