検証! 緑のモンスター!?
「ファストスラッシュ!」
鋭い斬撃が花のバケモノを切り裂く。
首をはねるように茎をはね飛ばす。
塵が散って、魔石が残る。
「ふむ。植物型のモンスターみたいだな」
「ゼンゾウさん……強いんですねぇ!」
「この花は別に強くないしな。にしても……よく見ればそこら中にいるぞ!」
「ひっ! えぇー!?」
「うわっ! 気づきませんでした!」
エドガワ君が片足を上げて驚く。
すぐ近くに花のモンスターがいる。
噛みつこうと口を広げているが、エドガワ君の足には届いていない。
ハルコさんの足元の花を分身が踏みつける。
分身の足に花が噛みつく。
「あ、ありがとうございますぅ!」
「足元気をつけろ。踏むなよ!」
草花に紛れていて気付かなかった。
いや、草花そのものがモンスターだ!
俺は刀で足元を薙ぎ払う。
視界を妨げる草を刈り取ると……いるいる!
平べったく背の低い花。
開いた花びらは、まるでトラバサミ。
踏むと口が閉じて足に食いつくのだ。
刀の先でつついてみる。
花弁が閉じて、鋭い歯がガチリと噛み合う。
ふむ。触ると口が閉じる。
オジギソウみたいな仕組みなのかな?
「うわっ! なにしてるんですかクロウさん! 危ないですよ」
「危ないか試してるんだ」
「そんなの危ないに決まってるじゃないですかぁ!?」
花弁は刀に噛みついて勝手に傷ついている。
強度はさほどではないな。
自分の身を守るような頭もない。
「金属を噛み切る力はないようだな」
だが分身の足には深々と食い込んでいた。
人間なら大ケガだな。
俺は安全靴なので噛みつかれても大丈夫だろう。
刀を引いてみる。
噛みついた花は離さない。
茎がピンと伸びる。グイグイと引っ張ってくる。
茎の長さは膝くらいまで。
背丈……草丈? は低い。
刀を引き抜く。
花は茎をのばしたままパクパクと動いている。
しばらくするとスルスルと地面へ戻っていく。
そして口を開いて天を向く。
動きを止めた。
「ふーむ。踏まなきゃいいのか。なら安全だな!」
「安全じゃないですよぉ!?」
俺は花を斬りつける。
閉じる間もなく、塵に変わる。
動く前に斬れば駆除はたやすい。
「ほら、無害だろ? 踏まなきゃいいんだ」
「ええと……踏んだら危険なんですが……」
なんであきれたような顔してんだ?
「だから対処がわかれば問題はない」
「うう……地雷原を歩いてる気分ですよ……クロウさん、どうして平気なんですか?」
「怖いですよねぇ? それが普通ですよねぇ?」
あ、そういうことか。
「ダンジョンの中じゃいつもこうだしな。足元には罠があるかもしれないし、敵がいつ襲ってくるかわからない」
「いや……あの、ボクたちはそこまでの心構えはないと言うか……」
「戦うのはナシって聞いてきてるんですよぉ」
二人は戦闘員じゃないからね。
俺もそこまでの覚悟は求めていない。
あくまで調査チームだ。
ダンジョンを攻略するのが仕事じゃない。
「ああ、そうだな。とりあえず入口に戻ろう。……ん?」
ぽつり、と雨粒が落ちてくる。
空模様が変わる。
「あれ? 雨ですか?」
「降ってきましたねぇ? っていうかぁ、大雨ですよぉ!」
スコールだ!




