画角良好! 映えるカメラワークで監視しよう!
玄関に足を踏み入れたところで電子機器が消えた。
つまりここは悪性ダンジョンだ。
これで最小限の目的達成!
俺はすぐに玄関の外に出る。
すると、スマートウォッチが復活する。
境界線は玄関だ。
ここを越えると電子機器は使えなくなる。
エドガワ君が拍子抜けしたように言う。
「あれ? もう外に出るんですか?」
「入る前にやることがあるだろ?」
ダンジョンに入る前にやっておくべきことがある。
俺はサタケさんが休みの間だけの臨時リーダーだ。
調査チームの作業はエドガワ君とハルコさんが行う手筈になっている。
「あっ!? 忘れてました! 本部への報告とカメラの設置ですね!」
「そうそれ。エドガワ君はカメラを。ハルコさんは報告を頼む」
「報告ですかぁ? はぁい」
そう言うとハルコさんは端末を高速で操作する。
悪性ダンジョンを発見し、これから突入する報告である。
位置や時刻を本部へ報告する。
今日ここに来ることは伝えてある。
サタケさんを病院から移送する手配もできている。
あとは安全確認をすれば、連れてきてくれる。
エドガワ君はカバンをごそごそとあさっている。
カバンから二台の小型のカメラを取り出す。
バッテリーで動いて本部に映像を送れる。
「設置場所はどこにしますか?」
「いつもはどうしてるんだ?」
「いつもはサタケさんが決めてくれます」
「じゃあ今回はエドガワ君が考えてみてくれ」
エドガワ君が迷いながら指さしていく。
「ええと……ここと、あそこでどうでしょうか」
「実際にカメラを置いてみてくれ」
エドガワ君が示した一か所目は、庭から玄関を写すアングル。
二か所目は玄関から庭を写している。
映像はスマートウォッチからも確認できる。
ダンジョン内では見れないが。
「どうですか?」
画面を切り替えて確認する。
「よさそうだ。お互いを写しているんだな」
「はい。外から写せるともっといいんですが……」
二台のカメラはそれぞれを画面に収めている。
一台は外に置ければなおいいが、ここは住宅街だ。
「設置は難しいな」
「はい。目立ちますからね」
今回はやめておく。
状況次第である。
悪性ダンジョンが広がって、庭まで飲まれたら映像は途絶える。
映像が途絶えれば、それは危険信号として本部に伝わる。
ハルコさんがしゃがみこんで、カメラの角度を変える。
「でもこっちのほうが良くないですかぁ?」
「ふむ。入口より庭を多く映しているようだが……」
意図はなんだ?
ハルコさんは自信満々に言う。
「こっちのほうが映えます!」
咲き乱れる花々が風に揺れる様子が映っている。
「たしかに、見映えはするが……もうちょい出入り口を写してくれ」
「えぇ? カワイイのになぁー。じゃあ自分のスマホでツイスタに……」
「だからネットに上げるのはダメだって!」
「はぁい。そうでしたー」
ハルコさんはスマホをしまう。
ダンジョンにかかわる情報をネットに上げるのはご法度。
端末内に持っているだけで危険といえる。
それがなくても、住居不法侵入中だぞ。
生垣が茂っているので、外から俺たちは見えにくい。
いざとなったらハルコさんの幻でなんとかする。
「さて、心の準備はいいかな? エドガワ君、ハルコさん」
「あ、はい。おかげさまで……」
「私も大丈夫ですぅ」
二人の緊張も取れたようだ。
「んじゃ、再突入だ!」
再び、ダンジョン領域内へ!




