ダンジョン文通は命がけで!? その2
「このメッセージの要点は三点ある。ひとつめ。スゲタ氏のパージは、リヒトさんの情報が原因だということ」
「はい。何か重要な情報を伝えたからですね」
「ふたつめ。認識阻害の話。リヒトさんは世界の防衛力と呼んだ」
「これはあたしたちも知ってたっス!」
「みっつめ。頼みごとがあるが、今は話せないこと。レベルを上げて、魔石を集めろと」
「管理者権限がないと危ないみたいですねー」
メッセージ機能はダンジョンの仕組みだ。
そして、地球世界の仕組みとは関係がないとも言っている。
リヒトさんはこれを正式な通信手段だと考えている。
逆に【エンジニア】のスキルは非公式な通信だ。
だから認識阻害や追放の対象になる。
今は妨害されて使えない。
これはおそらく俺とのやりとりのせいだ。
世界の防衛力に気付かれたってことだ。
対策されて、通信網……スキルを届かせる経路を塞がれた。
そういうことだろう。
トウコが言う。
「お願いって、なんかと戦うんスかね?」
「レベルを上げるってことは、その可能性が高いよな?」
「魔石はなにに使うんでしょうかー? メッセージを送るため?」
「うーん。わからん。今聞いても答えられないんだろうし……」
「詳しく聞いたらパージされちゃうかもしれませんねー」
トウコが耳をふさぐ。
「じゃあ聞きたくないっス!」
「うむ。どっちにしろ俺たちのやることは変わらん。二十階層を攻略して、管理者権限を手に入れる!」
リンがポンと手を打つ。
「あ! これで少しノートの意味がわかりましたね!」
スゲタ氏の部屋で見つけたノートに書かれていたこと。
――危険、備える。連絡、くろう
「なにか危険なことを俺に頼みたいってことだな?」
「面倒ごとは店長に頼めば、だいたいオッケーっス!」
トウコがいい笑顔で親指を立てている。
「いや、笑顔で頼られても困るんだが……」
「こちらのリヒトさんが書いていたのは、やっぱりゼンジさんの名前だったんですね?」
「ああ。そうだろう。スゲタ氏は、リヒトさんから俺の名を聞いて、ノートに書いたんだ」
リンが不思議そうに言う。
「でもこれ……おかしいですよね?」
「自分に伝言とか、回りくどいっス!」
ふーむ。この違和感は……。
世界の防衛力を警戒して直接は言えなかった……?
「どうして、こちらのリヒトさんからゼンジさんに伝えなきゃいけないんですか?」
「ん……? そりゃ、俺がリアダンを読んでいて話が通じるから……いや、それはおかしい……」
「急いでるならブログで店長に言えばいいっス!」
「トウコちゃん。それはできないの。だってそのころ、ゼンジさんはまだブログを読んでいないから……」
たしかに、時期がズレている!
俺一人でメッセージを読んだ時には気づかなかった。
リンは俺に詳しすぎる!
俺より詳しいんじゃないの!?
「時期か……! 俺がリアダンを読んだのは、スゲタ氏が失踪した後だったんだよな……」
「あーっ! そういうことっスね!?」
なぜリヒトさんは自分自身を消す危険を冒してまで連絡しようとしたのか……。
混乱してきたな。
少し考えをまとめよう。
スゲタ氏と俺は面識がない。
リヒトさんと俺はまだリアダンでやりとりしていない。
なのにスゲタ氏に俺の名を告げている。
矛盾するのだ!
「なんで、リヒトさんはゼンジさんのことを知っていたんでしょうか?」
「リヒトさんが俺を知る方法はあるぞ。俺がリヒトさんの苗字を知ったのと同じだ!」
「それなら簡単っス! あっちにも店長がいるんスよね!」
「そうだな。並行世界なら、ありえる話だ」
異世界かもしれないし、ダンジョンの中という線もある。
まだはっきりとはしていない。
リヒトさんがこっちとあっちにいるなら、俺たちもそうである可能性が高い。
「さっきのメッセージが一番新しいんですよね?」
俺はうなずき、二人に問いかける。
「そうだ。次の返信はこれから送る。何を聞くのがいいと思う?」
そろそろ名前の変更ができる頃合いだ。
聞きたいことはいろいろある。
リンが言う。
「向こうのゼンジさんが元気か、気になりますねー」
「店長とあっちのリヒトさんは知り合いなんスかね?」
「んじゃ、その二つと……リヒトさんは俺の反応を心配しているみたいだから……」
考えた末、以下のように変更した。
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現在の名称:ブラッククロウ@あなたを信じます! そちらの私とリヒトさんは知り合いですか? 彼は無事ですか?
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さあ、返事を待とう!
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