ダンジョン文通は命がけで!?
リヒトさんは【エンジニア】の職業とスキルで、俺にブログを見せていた。
俺たちは概念系能力だと推測している。
そして、そのスキルは今、妨害されて使えない。
リヒトさんの苗字はスゲタ。
リアダンの管理人で間違いない。
だが、こちらのスゲタ氏とは別人だ。
――つまり、そういうことだ。
しかし、その正体を口にしていいのだろうか。
ダンジョンの中で認識阻害は働かない。
そのはずだ。
……だがどうしても、不安がぬぐえない。
俺は言う。
「リヒトさんは二人いる。こっちと、あっちに」
「あっちのリヒトさんは、前にスナバさんとお部屋を見に行ったスゲタリヒトさんとは別人なんですよね?」
「ああ。別人だろう」
トウコがじれったそうに言う。
「あっちとかこっちとか――よーするに、異世界人っス! そうっスよね?」
言っちゃったよ!
口に出していいのか悩んでいたのだが……問題ないらしい。
怖いもの知らずだな!
「俺もそう思う。スゲタリヒトさんは二人いた。ひとりは違う世界に。もう一人は俺たちの世界に……」
異世界と呼ぶべきか、並行世界と呼ぶべきか……。
これはまだわからない。
同一人物が二人いるとわかっただけだ。
メッセージにはこうある。
――クロウさんが僕の苗字を知る方法は一つ。
――そちらにいる僕が関係しているのではないでしょうか?
――彼は無事でしょうか?
「リヒトさんは、こちらの彼の関連から苗字を知ったと思ったようだ。彼の無事を心配していた。だから俺は、返事を返した。俺が伝えたのはこれだ」
俺はメモを読み上げる。
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現在の名称:ブラッククロウ@彼と面識はありません。二か月前から消息不明です。認識阻害や追放は承知。頭痛なし。
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俺の側からは一日一回、五十文字しか送れないのがもどかしい。
それに対する返事も来ている。
これが最新のメッセージだ。
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差出人:リヒト
件名:世界を守ろうとする力について
本文:
僕は、クロウさんと会えなかったんですね……。
消息不明ということは……追放されてしまった可能性が高いでしょう。
これは僕の落ち度です。
クロウさんとコンタクトを取るより前に、そちら側の僕と接触していました。
僕自身であるという油断もあったかもしれません。
与えてはいけない情報まで、話してしまったようです。
連絡が途絶えていたので心配していたのですが……最悪の結果です。
僕は僕自身を消してしまったかもしれない……。
認識阻害と追放についてご存知なのですね!
僕の理解では、世界を守る力です。
世界を維持するために、邪魔者を消す力です。
ダンジョンやスキルを隠そうとします。
バグを修正するみたいに、ときには記憶を、ときには人物を消してしまいます。
だから僕は細心の注意を払って、リアル・ダンジョン攻略記を立ち上げました。
そしてダンジョンの情報を伝えてきました。
でも足りなかった。失敗した。
僕自身に渡した情報のなにかが、重大な情報だったのでしょう。
彼には世界を守る力について伝えていました。
それ以上のことも。
世界の防衛力についてご存じであれば、このことについては話せます。
しかしこれ以上の内容となると……リスクが大きすぎます。
僕にはどうしても伝えたいこと、お願いしたいことがあります!
ですが、今はまだ危険です……!
それはクロウさんが次の管理者権限を取得したらお伝えできると思います。
これはお願いです。
どうか、力を蓄えておいていただけないでしょうか!
レベルを上げ、魔石を蓄えてください。
歯切れの悪い伝え方になっていますね。
僕は怖いんです。
やっとつながったクロウさんとの連絡が途絶えてしまうことが。
僕があなたを消してしまうことが。
あなたが僕のメッセージを閉じて、永遠に立ち去ってしまうことが。
どうかこの情報が、あなたに害をもたらしませんように!
クロウさんが、僕を信じてくれますように!
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