管理コンソールはリアダンで! 本人確認は必須です!?
日課の管理コンソールチェック。
メニューからメッセージ機能を確認する。
「お、今日も返事が来てる!」
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メッセージ機能
新着メッセージがあります
・受信メッセージ(1)
・送信メッセージ
・新しいメッセージの送信(権限が不足しています)
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俺はメニュー画面を叩いて表示を変える。
新しいメッセージが来ると、ドキドキするね!
まるで俺がダンジョンに潜り始めたころみたいだ。
リアル・ダンジョン攻略記の掲示板でやりとりしてたっけ……。
あのブログは、今は見れない。
謎だよな……。
インターネットを経由せず、通信ログの残らない不思議なやりとり。
「さて、新しいメッセージは……?」
俺は内容を読み……混乱した頭を整理する。
ううむ。思っていたよりもずっとややこしいな!
この数日、俺は一人でメッセージを読んでいた。
別に情報を隠したいわけじゃあない。
認識阻害の悪影響を心配してのことだ。
ここはダンジョンの中だし、管理コンソールのメッセージだ。
安全に思える。
とはいえ、なにが引き金になるかわからない。
情報の扱いは慎重にしなきゃな。
しばらく待ってみたが、俺の身に異変は起きない。
読むだけで認識阻害や追放は起きないようだな。
二人に見せても安全だ。
そこでリンとトウコを呼んで管理コンソールを見せることにした。
「これがそのやりとりだ。安全だから読んで感想をくれ!」
「やっとおあずけ解除っスね!」
「もう、トウコちゃん! ゼンジさんは私たちを心配してくれたんだからねー」
「最初に届いたのはこのメッセージだ!」
俺自身はもう何度も読み返した。
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差出人:リヒト
件名:リアダンのリヒトです!
本文:
ブラッククロウさん!
リアルダンジョン攻略記のリヒトです。
ついに管理者権限を手に入れたんですね!
心配していました!
検索であなたの名前を見つけて、興奮しています。
ぜひお返事をください。
権限が足りないかもしれません。
その場合は攻略を進めてください。
より深くダンジョンを攻略すると管理者権限が強化されます。
十階層で一段階。二十階層で二段階。
そのあとは十階層ごとです。
メッセージの送信は二段階の権限で可能です。
二段階の権限でメッセージの送信が解禁されます。
早くお話したいですが、攻略には気をつけてください!
通信には魔石が必要になります。
返信は短い内容でもかまいません。
もし、あなたが私の知る人でないとしても、お返事をお待ちしております!
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メッセージを送信するには二段階の管理者権限がいる。
だが、俺はまだ一段階の権限しか持っていない。
二十階層を攻略すれば次の権限が手に入るが――。
それにはまだまだ時間がかかる。
しかし、俺たちは裏技を発見した!
ダンジョン所有者情報から自分の名前を変更する方法だ!
長い名前にして、言いたいことを伝えるのだ。
五十文字まで設定できる。
長文はかけないが、意思疎通はできる!
そこで、このように変更した。
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現在の名称:ブラッククロウ@リヒトさんへ。メッセージ受領しました! お元気ですか? こちらは元気です!
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まずは挨拶だ。
たいした情報は送っていない。
これは相手の素性がはっきりしていないためだ。
俺はこの「リヒト」をリアダンのリヒトさんだと確信している。
ほぼ、そうだろう。
だが、疑わしい点もある。
公儀隠密が見つけた「スゲタリヒト」氏。
しかし「スゲタリヒト」氏は二か月以上前に失踪していた。
俺と掲示板でやり取りしたころには失踪していたことになる。
失踪後に俺とやりとりしたのか、あるいは別人なのか……といった疑問。
住居を調べたが、消息はつかめなかった。
持ち帰ったノートは今も手元にある。
この情報社会において、まったく足跡を断っているのだ。
監視カメラに映らず、通信の形跡もない。
もう、パージされてしまったんじゃないか……?
だが、名前を変更すると返事はすぐに来た。
「これがその二通目だ」
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差出人:リヒト
件名:お返事ありがとうございます!
本文:
ブラッククロウさん!
こんなに早く返事をいただけるとは!
名前の変更機能を使うとは盲点でした。
これなら一段階の権限でもコミュニケーションがはかれますね!
なにか聞きたいことがあれば、どんどん聞いてください!
ただ……名前の変更にはコストがかかるはずです。
なるべくこちらからメッセージを送りますので、気になるところに質問いただければ!
今日はダンジョンの深さについてお話します。
ダンジョンは階層構造になっています。
階段をくだることで、深く潜っていく形式が一般的です。
他にもいろいろなタイプがありますが、それはまた別の機会にお話しします。
ダンジョンには深さがある点がポイントです!
塔のように登っていくダンジョンでも、平面で横に広いダンジョンでも考え方は同じです。
ダンジョンのレベルとか、深度と呼ぶこともあります。
深く潜るほど、敵も強くなっていきます。
しっかりとレベルを上げてから次の階層へ進むと良いでしょう。
深い階層ではより良い報酬が得られます。
敵のドロップアイテムや、宝箱の報酬ですね。
経験値も多くなる傾向があります。
伝えたいことはたくさんありますが、どこまで伝えていいのか僕にも線引きができません。
頭が痛いとか、体調に異変を感じることがあれば、メッセージを読むのをやめてください。
正式に権限を取得すれば大丈夫だと思いますが……。
無事に伝わっていることを祈ります!
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「お返事に喜んでくれてるみたいですねー!」
「ああ。昔のリアダンみたいで懐かしい」
「ダンジョンの奥にはお宝があるんスね!」
「敵も強くなるけどな!」
「で、返事をしようとしたんだが……」
リンが俺の顔色を見て言う。
「あれ? ダメだったんですか?」
「ああ。エラーメッセージが表示された。名称の変更は一日一回に制限されています、ってな」
「ケチっスねー!」
「というわけで翌日。また変更を試してみた。今度は変更する画面へ進めたんだが……」
「……ダメだったんですか?」
こんな表示が出た。
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汎用ポイント:10必要です。
変更してよろしいですか?
はい いいえ
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汎用ポイントはゴブリンの魔石五個分の価値だ。
十ポイントなら低階層のゴブリン五十匹分ということになる。
階層が深くなるごとに、モンスターも強くなる。
手に入る魔石の価値も高くなっていく。
この頃はザクザク手に入れているので、払えない額じゃない。
「いや、コストがかかるって表示が出てな、汎用ポイントを十ポイント使った」
「いちいちお金かかるんスかー!? ケチケチっス!」
金じゃないが、まあダンジョン内通貨みたいなもんか。
「どう変えたんですかー?」
「変更した名称は――」
俺はノートに残しておいた、その時の名称を読み上げる。
「――ブラッククロウ@あなたはスゲタリヒトさんですか? リアダンのリヒトさんであれば、私の職業を答えてください」
リヒトさんとスゲタリヒトさんは同一人物なのか?
それとも、リヒトさんを装った別人なのか……。
「これで正体がわかるっスね!」
「疑うみたいで気が引けますが……しかたないですよね?」
「ああ。遠慮してる場合じゃないからな!」
これは絶対に確認しておかなければならない!
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