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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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伝線タイツと崩れたキモノ! 汚されてしまった……!?

「さて、ここらが潮時(しおどき)か。帰るぞ!」

「えー? まだ行けるっス!」


「魔力はポーションのおかげで大丈夫ですが……。でも、安全第一ですよね!」

「そうだ。無理して進んでケガしたらバカらしいだろ?」


 あと、集中力も切れてきている。

 攻略を急ぎたい気持ちはあるが、無理は禁物。



 トウコは服をつまんで匂いを嗅いでいる。


「うー。そっスね! それに、なんかヨゴレた感あるっス!」

「言うな。それを言うな!」


 フン爆撃を食らったせいだ。

 もうヨゴレは塵になって消えているとはいえ……うん。


 モンスター由来のヨゴレは倒せば消える。

 血とか肉とかアレとか……。



 リンが近づいてきて、恍惚とした顔で言う。


「もう変なニオイはぜんぜんしません。いつも通り、いい匂いですよー!」

「いや……はやく帰って風呂はいりたいよな!」


 自分の汗は消えてくれない。

 気分をリフレッシュするためにも風呂に入りたい!


「それなら、いそいで帰るっス! ほらはやくーっ!」


 トウコが小走りになって急かす。

 急にやる気だな!


「装備も直したいし、対策アイテムも考えなきゃな……」


 穴をふさぐくらいの補修は今でもできるが――



 リンがダンジョンの奥を指さす。


「あっ! コウモリさんが来ましたよ!」

「げっ! 撤退するぞ!」


 装備を直しているヒマはない!



「しつこー! うらうらっ!」


 トウコがショットガンを連射する。


 すぐに応戦してくれるのは頼もしいが、戦ってるときりがない。

 俺はトウコに声をかける。


「トウコ! いくぞ!」

「りょ! じゃまなんで、ショットガンはポイっス!」


 トウコは弾を撃ち尽くしたショットガンを捨てる。

 手を離れ、塵になって消えた。



 俺は分身を走らせる。

 条件を与えておいたので、どこまでも壁に沿って進む。


 コウモリたちが手近な標的に狙いを定める。

 こいつをオトリにして、俺たちは来た道を戻ろう!



 狭い通路を急いで進み、振り返る。


「ふう。()いたな」


「はい。コウモリさんはついてきてません」


 これで一息つける。


「道もだんだん広くなってきたっス!」


「じゃ、隊列を組みなおそう。先頭はリン。システムさんを前に回してくれ」

「はーい」


 もちろん、システムさんと一緒に分身も前に出す。


「二番手は俺。動きが取れない状態になったら【入れ替えの術】で隊列を変える」

「んじゃ、あたしが後ろっスね!」


「おう。背後から敵が来たらトウコがぶっ放せ!」

「りょー」


 トウコは短銃身のショットガンに持ち替えている。

 狭いところならこっちのほうがいいよな。



 リンが前方を指さす。


「あ、蛾さんがいますよ。少し先です!」

「じゃあリン、倒しちゃって」


 リンは手を突き出し、敵を狙う。


「はーい。ファイアボール! ……あれ?」


 火球が飛ぶ。

 だが、妙に弱々しい。


「どうした? 疲れたなら……」

「いえ……おかしいなー? ファイアボール!」


 再び魔法をくり出す。

 今度は力強い火球が飛んだ。


 炎が蛾を焼く。

 だが、すべての蛾は倒しきれていない。


「残りは俺が! うりゃっ!」


 壁を登って狙いをつけ、投擲。

 こうすればこの位置からでも射線が取れる。



 何度か棒手裏剣を投擲し、残った蛾を倒す。


「よし、全滅! 進むぞ!」

「は、はい……」


 リンの声は苦しそうに聞こえる。

 暗さや【暗視】の見え方もあってわかりにくいが……顔色が悪いか?


「ん……? リン、大丈夫か?」

「なんだか、めまいがして――」


 リンがよろよろと壁に手をついて体を支える。


 後ろでトウコが言う。


「あたしもちょっとフラフラするっス。あれ!? これって――」

「毒か……!?」


 装備のスキマから毒が入り込んだのか……!?


 蛾は少し離れたところを飛んでいた。

 だが、鱗粉は……?


 狭い通路だ。

 散らずに粉が舞っていても不思議はない。



 リンが伝線したタイツを押さえながら言う。


「もしかして、お洋服に穴が開いちゃったから……?」

「うー。ぜんぜん気づかなかったっス!」


 俺の装備は穴が開いていない。

 だから、毒を受けずに済んだのだろう。


 ともかく、薬だ!


「息を止めて、リカバリーポーションを飲め!」

「は、はーい」

「リョーカイっス……」


 二人は慎重に薬の小瓶をあおる。


「装備の穴をふさぐぞ!」


 そう言いながら【忍具作成】を発動させる。


 二人の装備の穴をふさいでいくが――これには少し時間がかかる。

 その間、俺は動けない。


 いま敵が来ると面倒だ……。


 本来、クラフトは安全な場所でやるべきだ。

 だが今やらなくては!


 リカバリーポーションは状態異常を治してくれるが、予防はできない。

 治っても、また鱗粉を食らったら意味がないのだ。


「ふう……効いてきました。もう大丈夫です!」

「ふっかーつ!」


「よし! とりあえず服の穴もふさがった! 急いで帰ろう!」

「はーい」

「りょ!」



 そのあとは問題なく十三階層を駆け抜け、階段へたどり着いた。


 天の声が響く。

 おっ!?


<【暗視】 2→3>

<【ファストスラッシュ】 2→3>



「熟練度で暗視とファストスラッシュのレベルが上がったぞ!」


「おめでとうございますー!」

「へー! 今度は何色になるんスか?」


 色……?


「ああ、見え方は変わらず緑色だぞ?」


 トウコががっかりしたように言う。


「なーんだ。地味っスねー!」

「【暗視】に派手さを求めるな! 赤や黄色になったら困るだろ!」


 見づらいわ!



「なにか違いはあるんですかー?」


 俺は周囲を見回す。

 うん。ちゃんと違いがある!


「これまでよりも明るく見えるぞ。これはいい!」

「わあ。それはよかったですねー!」


 リンは自分のことのように喜んでいる。



 階段で充分な休憩を取り、十階まで戻る。

 そして一階へ転移。


「ふう……。無事に拠点に帰還したな!」

「少し疲れましたねー」


「そうだな。風呂入って休もうぜ!」

「おっふっろー!」



 新しい状況に対応すると頭を使う。


 ちょっとしたケガ、装備の破損。

 いつもとは違う場所や状況。

 そんな小さな積み重ねが大事故を招く。


 余力がある状態で引き返して正解だった!

 うまくリカバリーもできたし。


 なにより、今回は攻略がはかどった。

 一気に三階層も進んだからな!


 いいペースだ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 蛾の毒が思ったより厄介だった… これは防具の強化が急務ですな よりしなやかによりぴっちりに!
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