慢心……環境……想定不足はとっさの判断で!?
狭い場所でも敵はかまわずやってくる。
コウモリや蛾にとって、狭さは関係ない。
隙間を器用に通り抜けてくる。
コウモリの群れがバサバサと襲いかかってくる!
トウコがショットガンを構えようとして、壁にぶつける。
それでも無理やり構えて発砲する。
「だあっ! ピアスショット!」
やや雑に放った一撃。
散弾の大部分は壁をけずっただけに終わる。
それでもいくらかは敵に命中して数を減らす。
だが残ったコウモリは想定以上の速さで迫っている!
最後尾のリンがあせったように言う。
「……ここからだと狙えません! ゼンジさん、どうしたらいいですか!?」
俺も前にトウコが居て動けない。
壁伝いに上へ移動するか……?
それとも【入れ替えの術】で立ち位置を変える?
いや――
「――いったん下がって立て直そう! リン、下がれるか!?」
「ご、ごめんなさい! 下がるには狭くて!」
後ろはちょうど、狭くなっている場所だ。
急いで通り抜けるのは難しい。
「うらっ! 死ねっ!」
トウコはショットガンのフォアエンドをスライドさせる。
だがその動作を壁が阻む。
それでもトウコは無理やりに動く。
装填。射撃。
コウモリを次々に撃ち落としていく。
散弾が壁に当たって固い音を立てる。
トウコより前方の分身が被弾して塵になる。
けずれた壁面が細かい石粒となってパラパラと散る。
「弾切れ! リロードっス!」
敵の数が多い!
さらに後続が来ている!
俺もなんとか抜き出したクギ束を投げつける。
だがコースがやや甘い。
トウコの頭越しだから、上方向しか狙えないのだ。
数匹撃ち落としたものの、後続が来る!
接敵された!
コウモリは俺たちには向かわず、上方にそれるように滑空していく。
この動きは――フン爆撃だ!
避けるスペースはない!
防ぐ盾もない!
「二人とも、しゃがめ!」
「りょ!」
「はいっ!」
二人はすぐにその場で姿勢を低くする。
分身を三体出す。
それぞれを守る配置だ!
さらに、コストを度外視した高強度版!
屈んだ俺たちの前に立った分身が盾となる。
そこへ、投下された爆発性のフンが着弾する。
爆竹のような破裂音が連続して響き、嫌なにおいが広がる。
防ぎきれなかった数発が俺の周囲で破裂する。
「ぐっ!」
「いたたっ!」
「わあーっ!」
俺たちはそれぞれに声を上げ、それに耐える。
久しぶりの被弾!
「キイッ!」
「キキーッ!」
コウモリの群れが戻ってくる。
逆側からだ。
今度は突っ込んでくるコース!
俺はとっさに指示を出す。
「リン! 焼き払え!」
「はいっ! ファイアボール!」
リンが突き出した手から炎がほとばしる。
まるで火炎放射!
過剰なほどの火力が狭い通路を埋め尽くす。
これなら撃ちもらす心配はない!
炎が収まると、コウモリの姿はない。
リンは急激な魔力消費にへたりこんでいる。
「はあはあ……や、やりましたー」
「ナイスだリン! ……よし! 倒せているようだな!」
ちゃんとやれている。
敵は――すべて燃やし尽くしたようだ。
「トウコ、そっちの敵はどうだ?」
「クリア! 敵はいないっス!」
「ふう……。なんとかしのいだな!」
「狭いと、どうにもなんないっスね!」
「はあはあ……そうですねー」
多少のダメージはあるが、大きなケガはない。
戦闘終了!




