洞窟探検家は白黒視界で!?
俺たちは通路を進んでいる。
だんだん道幅がせまくなってきた……。
洞窟探検家になった気分だ。
先頭はシステムさんと分身だ。
その後に俺、リン、トウコと続く。
「【暗視】ゲットっス!」
トウコは【暗視】スキルを一レベルだけ取った。
あとは熟練度で強化するつもりらしい。
「どうだ?」
「おもしろっ! 白黒ーっ!」
トウコは興味津々で周りを見回している。
「視界が白黒になるんですよねー?」
リンが俺を見る。よく覚えてたな。
「そうそう。スキルレベルを上げると緑色になるから、さらに見やすくなるぞ」
「へー。そーいう感じなんスねー! おーっ! 店長も白黒っス!」
「そりゃそうだろ!」
俺の熟練度も貯まってきたはずだ。
明るい場所にいると育たないので時間がかかっている。
そろそろかな?
「いいなー! 私は取れないみたい……」
リンのスキルリストには【暗視】がない。
職業かステータスの影響だろう。
「でもリンには俺たちが取れない【魔力知覚】があるし、システムさんもいるだろ?」
「そうですね。でも……」
リンはもどかしげな様子。
疎外感があるのかな?
「違うから分担できる。頼りにしてるよ!」
「はいっ!」
リンは笑顔でうなずいた。
「そうだトウコ。火や水晶は目が痛くなるから直視しないようにな」
リンが驚く。
「あっ! 火を使うとまぶしくなっちゃうのかな!?」
「あれっ? 店長は平気そうっスけど、どうなんスか?」
「俺だって直視したら目がくらむぞ。予測して、タイミングよくスキルをオフにするんだよ」
トウコが目をむいて言う。
「はあっー!? そんなんムリっス!」
「ムリじゃない! 練習すりゃできる!」
リンが目を輝かせて言う。
「ゼンジさんはどうやってタイミングをはかってるんですかー?」
「魔法の場合は、リンの声を聞いてればわかる。慣れだな」
リンが顔を赤らめる。
「……わかってくれてるんですね!」
「うん……まあ、そうかな?」
ちょっと違うと思うが……。
「リン姉が無詠唱じゃなくてよかったっス!」
「ちなみに銃の発砲炎もまぶしいから気をつけろよ!」
「あー、チャージショットは派手っスからねー!」
「かっこいいけど、困りますねー」
弾丸の軌道が派手に明るく光る。
魔力をためているときの銃口もエフェクトが強い。
スキルなしでも、銃口を直視していたら目をやられる。
掛け声なしに撃つこともあるし、たまに食らっている。
トウコが通路の先を指さす。
「蛾がいるっス! あっ、試しにチャーショットで撃ってもいいっスか!?」
まだ遠い。
余裕をもって試せる距離だ。
「ああ。試すにはちょうどいいかもな」
トウコが事前に試すのはめずらしいな。
成長したか。
ここだと道幅が狭くて、隊列を変えるのは難しいが……。
今トウコは最後尾にいる。
「じゃあ、あたしが前に出るっス! ちょっと失礼してーっ!」
「あっ!? トウコちゃん、せまいよ!?」
トウコはリンを壁に押しつけてグイグイ行く。
「通れるから平気っス!」
「う、うーん。そう?」
トウコめ、これが狙いか!
成長したと思ったら、ぜんぜんしてねえ!
妙に時間をかけて、二人はすれ違った。
「うぐぐ、ぷはーっ! 息ができなくてあやうく天国に行っちゃうところだったっス!」
「いってしまえ!」
「うへへ。さーて次は店長っス! これは不可抗力なんで仕方ないっス!」
「仕方あるわ! 押すな押すな! 密着すな!」
俺たちがもみ合っている間も、蛾はひらひらと舞っている。
敵意のない相手でよかったよ!




