トウコの第三職業は中級ナントカで!?
戦闘を終えたところでトウコが声を上げる。
「あっ! キタキター!」
「どうしたトウコ?」
「レベルっス! ついに二十っスよー!」
トウコは二本指を立て、ブイの字を作っている。
満面のどや顔だ。
「わあ! トウコちゃん、おめでとう!」
「おお、よかったな!」
「へへー! これで新しい職業が選べるんスよねー」
トウコが空中に指を走らせる。
ステータスウィンドウを操作しているんだな。
「なにが選べるのかなー?」
「あ、中級シューターが増えてるっス。これ一択っスね!」
もともと【学生】【給仕人】なども選べたはずだ。
中級職を差し置いて選ぶ意味はない。
「ちなみに、中級ゾンビはないのか?」
「そんなん、あっても選ばないっス!」
「そりゃそうか。グールとか吸血鬼が増えてたりもしないのか?」
「ないっス! あんまりゾンビのスキルを使ってないからっスかね?」
別種族へ変更もないらしい。
そもそもゾンビが職業な時点で何かがおかしい。
種族じゃないのかと。
そういう職業を選ばせたいわけじゃないが、条件は気になるところ。
「【捕食】は使ってるよな? 【復活】と【狂化】をたくさん使うようじゃ困るが……」
巨大窓女戦でトウコが暴れ出したときは苦労した。
窓女より【狂化】トウコのほうが怖いわ!
「【憤怒】も持ってるよねー?」
【憤怒】か。
悪性ダンジョンで、大鬼の魔石から得たスキルだ。
効果は――対象一体を破壊するまで、怒りに身を任せる。筋力が一時的に上昇する――だったな。
「筋力が増えてもトウコの場合、使いどころがないから【憤怒】は使ってないよな?」
「トウコちゃんは銃ですからねー」
「でも怒ると勝手に発動しそうになるっス!」
「ううむ。危険なだけのスキルじゃないか……?」
トウコはけろっとしている。
「ま、使うとき考えるっス! とりあえず中級シューターでいいっスか?」
「ああ、いいと思う」
「なにができるのか楽しみですねー!」
トウコが空中に指を振り下ろす。
「んじゃポチー! これで中級シューターっス!」
トウコは二丁の拳銃をクロスさせてポーズを決めた。
リンはパチパチと拍手を送る。
「おめでとうー!」
俺も適当に手を叩く。
「はい、おめでとう。んで、ステータスはどうだ?」
「あれ、店長!? 投げやりじゃないっスか!?」
ええ? 欲しがるね?
「よかったな! かっこいいぞ!」
俺はトウコの頭をわしゃわしゃと撫でる。
トウコはその手をはねのける――が、口元は緩んでいる。
「ザツっ! 扱いがザツっス! でも喜んじゃう自分がニクいっス!」
「で、ステータスはどうなった?」
「敏捷がビープラスになったっス!」
「敏捷だけか?」
「そうっスね。どうもステータスの伸びが悪いっス!」
「俺も中級忍者で敏捷がビープラス。上級忍者で体力がビープラスだ。そんなもんだろ」
「ステータスはなかなかあがりませんねー」
ステータス上昇の恩恵は大きい。
忍者のステータスは悪くない。敏捷と体力が上がる。
常人離れした素早さや体力のおかげで、ダンジョン攻略がはかどっている。
シューターは敏捷だけしか上がらないから少し不遇だ。
その分スキル――銃が強いわけだが。
「で、スキルはどうだ?」
「【中級銃創造】! 【中級銃器】! 【中級弾薬調達】! 【中級緊急回避】!」
「中級ナントカってスキル、ダサいよな」
俺の【中級忍術】もそうだ。
上級なら格好つくんだけどな。
「ぜ、ゼンジさん言い方……?」
お? リンが俺にツッコむパターンはめずらしいな!
慣れないのか、リンも戸惑ってるのが面白い。
トウコはかまわずスキルを読み上げていく。
そしてがばっと俺を見る。
「【弾薬創造】キターっ! どうスかコレ!?」
「おお、よさそうだな!」
名前の通りなら、弾丸を造れるってことだ。
「トウコちゃん。これで弾がなくて困らないねー!」
「そーなんスよ! これでイケるっス!」
「スキルの説明はどうなってる?」
「【銃創造】みたいに弾薬を作れるみたいっス! これは決定っ!」
「おう。いいと思うぞ!」
トウコが勢いよく空中に指を振り下ろす。
取得したようだ。
弾丸が作れるなら、弾不足問題は解消だな!