漁夫の利!
斥候ゴブリンが倒され、残りは盾持ちゴブリンだけ。
コウモリの攻撃に耐えているが、勝ち目はもうない。
「よし、あいつをオトリにしてコウモリを倒そう!」
「店長、鬼っスね!」
「えーい! ファイアボール!」
孤立した盾ゴブリンをオトリにしてコウモリを倒す。
コウモリがゴブリンに攻撃したところを狙って、コウモリを仕留めるのだ。
両者全滅!
残ったのは俺たちだ!
「漁夫ってやったっス!」
「ぎょふ?」
トウコの言葉にリンが首をかしげる。
元は故事成語だ。
鳥と貝が争っているときに、あとから来た漁師が両方ゲットしたという話。
トウコが言ってるのはゲーム用語である。
「漁夫の利のことだな。争ってるところに乱入して横から攻撃することだ」
「バトルロイヤルゲーだとセオリーっスよ!」
「そうなんですねー。なんだかズルい気もします」
「別にズルくないっス! 戦略っスよ!」
ゲームじゃなくても有効な戦術である。
「相手はモンスターだしな! どっちにしろ倒す!」
「リン姉はやさしすぎるっス! そのやさしさ……いや、やらしさはあたしに向けてほしいっス!」
リンはスルーした。
「ゴブリンさん、負けちゃうみたいですねー」
「それは俺も気になった。十一階層のゴブリンは強かったけど、コウモリに勝てないのか」
「相性っスかね?」
「かもなあ」
そのあともゴブリンとコウモリの戦いを観察した。
たいていの場合、コウモリが勝つ。
だがまれにゴブリンが勝つ。
「あ、条件がわかった。盾ゴブリンと呪術師ゴブリンが多いと勝てるんだ」
「斥候さんはすぐやられちゃいますねー」
斥候ゴブリンは投げナイフを使うと、その後の手数が減る。
剣士はコウモリを迎撃できるが、被弾すると脆い。
呪術師だけだとすぐにやられる。
重要なのは盾ゴブリンなんだ。
なるほどね。
ふーむ。
あとは組み合わせ。パーティのメンバー次第か。
一度勝ったゴブリンパーティーは次も勝てるのか?
気になるな。
ゴブリン研究家の血が騒ぐぜ!
コウモリに勝ったゴブリンをつけてみよう!
すると――次のコウモリ戦も勝利。
連勝だ。
ゴブリンはコウモリを食うわけじゃないが、攻撃されれば反撃する。
その結果、成長していくのだ。
観察している個体は盾二匹、呪術師と剣士のパーティだ。
呪術師は二種類の魔法を使う。
火炎放射と炎の柱。
どちらもコウモリには有効だ。
蛾のいる部屋に入っても、ゴブリンと蛾は争わない。
すぐに通り過ぎて次の通路へ移動する。
急いで移動しているように見える。
つまり、ゴブリンは蛾の毒を認識している?
ゴブリンのくせに学習しているとは!
歴戦ゴブリンパーティーとコウモリが戦闘を始める。
「まだストーキングするんスか?」
「もう充分だ。漁夫るぞ!」
「かわいそうですけど……ファイアランス―っ!」
俺たちは容赦なく、争う両者を打ち倒した!
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