イヤなゾーン……!? 十二階層へ!
「あ、階段がありましたよ!」
「やたーっ! これで、うんこ毒ゾーンから出られるっス!」
俺は顔をしかめる。
「なんだそりゃ!」
「トウコちゃん、言い方……なんだかイヤになっちゃうよー」
コウモリと毒蛾のゾーン。
洞窟追いかけっこゾーン。
うーん……。
「楽しそうな言い方は思いつかないけど……降りてみるか!」
俺たちは十一階層から下り階段へ足を進める。
疑似的な安全地帯だ。
ここに余分の荷物を置いていこう。
魔石がかなり手に入ったからな。
ジャラジャラして邪魔である。
帰りに回収しよう。
「さて、休憩はもういいな。いくぞ!」
「はい!」
「ごーごー!」
十二階層も引き続き洞窟風である。
おそらく五階層ごとに地形が変わるのだ。
これまで罠はなかった。
洞窟の地形だと罠はないのかな?
迷宮階層のような厳密な罠チェックはいらないだろう。
とはいえ気は抜かず、最低限の警戒はする。
分身を先行させて足で罠を調べる。
罠を見つけたら警戒のレベルを上げよう。
時間対効果も考えて攻略を進めたい。
「あっちから戦闘音が聞こえるっス!」
「ふむ。コウモリの爆撃音か」
爆竹がはじけるような音。
そして壁に金属がぶつかるような音。
「武器の音かなー? ゴブリンさんでしょうか?」
俺たちは息をひそめて音のするほうへと向かう。
まき散らされたフンの匂い。
血が香る。
「正解だったな! ゴブリンとコウモリだ!」
「蛾はいないっスね!」
ゴブリンは二体だけ。
大抵は四体で行動しているので、すでに倒されたんだろう。
その頭上を、コウモリが取り囲むように旋回している。
コウモリが下降する。
ゴブリンの頭上を通過するコース。
これはフン攻撃だ!
「キィィ!」
「ゴブッ!」
ゴブリンは上に向けて盾を構え、フン爆撃を受け止める。
「アギッ!」
その陰から斥候ゴブリンがナイフを投擲する。
だがハズれた。
ナイフが壁に弾かれて涼しげな音を立てる。
スキをさらしたゴブリンへ、コウモリが急降下していく。
斥候はさっと盾の陰に隠れて縮こまる。
コウモリの攻撃も空振り。
コウモリが空中へ戻ると、再び斥候がナイフを構えて盾の外へ。
「アギャァ!?」
そこで斥候が転倒する。
足を押さえて、ごろごろと悶えている。
血が出ているな。
「ん……? なにか踏んだか?」
「うんこっス! 爆発する音が聞こえたっス!」
「落ちていたフンを踏んじゃったの……?」
「不発弾があるのか? あるいは……狙ってやっている!?」
フン攻撃は着弾すると爆発する。
もしかして、爆発を遅らせることもできるのか?
しかし、コウモリにそんな知恵があるか?
本能なのか、スキルの効果なのか……どちらにせよ厄介だ!
倒れた斥候にコウモリが群がっていく。
そのまま引き裂かれて絶命。塵となる。
残った盾持ちも攻撃役がいなければ無力だ。
コウモリ強いぜ!