久しぶりの回避盾作戦!
部屋の入口で戦うのはラクだ。
通路に侵入されなければ安全である。
しかし、これに慣れると他の状況に対応できなくなってしまう。
作戦を変えよう。
「次はやり方を変えてみるか!」
「どうすればいいですかー?」
「俺が敵をひきつけるから、その間に攻撃するんだ」
「回避盾作戦っスね!」
盾がないなら、俺自身が盾になるのだ。
攻撃を受けるのではなく、避けることで注意を引きつける戦術。
「でも、危なくないでしょうか?」
「前はそうしてたろ? 大丈夫だよ!」
「わかりました。……でも、無理しないでくださいね」
「おう! 食らうつもりはないから安心してくれ!」
仮にコウモリの攻撃を食らっても大したダメージじゃないしな。
即死しなければポーションが使える。
試してみて、危険そうならやり方を変える。
油断や手抜きとは違う。
もともとコウモリとは多対一で戦っていたのだ。
フン攻撃があるとはいえ、基本は変わらない。
攻撃を見切って避け、すれ違いざまに攻撃する。
これだけ。
今回は回避に専念できるから、もっと簡単だ。
攻撃は部屋の入口から二人が行う。
トウコが思いついたように言う。
「てか店長! 分身をオトリにすればいいっス!」
「ん? そうだなぁ……」
トウコの言うことはもっともだ。
俺も考えた。
なんでも分身で解決できてしまう。
まったく便利な術だ。
とはいえ何事も頼りすぎはよくない。
自分の体を動かす感覚が鈍ってしまう。
と思うのだが――
リンが心配そうに言う。
「それがいいです! ケガしたら大変ですし!」
「んじゃ、分身作戦でいこう!」
そうだな。今回は分身で試そう。
分身操作の練習にもなるし!
俺は二体の判断分身を放つ。
回避を条件に設定しておく。
攻撃が来れば自動で回避するが、単純な動作しかしない。
複雑な動作や位置取りはできないから、俺が直接操作する。
同時に複数の分身を操作するのは難しい。
状況を把握して、適切なタイミングで動かす。
当たり前だが自分の体の安全も確保しなきゃいけない。
さらに、リンとトウコの動きにも気を配る。
分身の数を増やせばもっと難易度は上がる。
トウコが耳をそばだたせる。
「次の部屋はコウモリだけっスねー」
「背後からも敵は来ていません」
俺は【隠密】状態で通路から部屋を覗きこむ。
コウモリに【隠密】は効果が薄いので、分身が見えるギリギリの位置から壁と床に張り付いて身を隠す。
少し広い部屋だ。
いるいる!
群れ二つ分。二十匹ほどだ!
「よし。攻撃したら少し下がってくれ!」
「はい。――ファイアボール!」
「ピアスショット!」
リンは天井で休んでいるコウモリを燃やす。
トウコは空中のコウモリを撃ち落とす。
「キーッ!」
残ったコウモリがこちらに気づく。
そして一斉に飛んでくる!
「よし、下がれ!」
二人が通路に身を隠す。
俺は【隠密】しながら分身を操作する。
二体の分身を部屋の中へ走り込ませる。
長いマフラーをはためかせながら、右に左に走っていく。
「キッ!」
コウモリは目立つ標的を狙う。
「よし! 分身がターゲットになったぞ」
いい調子だ。
あとはひたすら避けるだけ!
飛びかかるコウモリの軌道を読んで、分身に回避を指示。
ギリギリのところで回避は成功。
何体ものコウモリが連続で飛来する。
右に左に、ときには身を低くさせて避けていく。
リズムゲーみたいな感じだな。
分身のマフラーが被弾して塵と化す。
分身の服や装備はハリボテのようなもので耐久力はない。
少しの力で破壊さえてしまう。
それでも、分身そのものは無傷だ。
まだやられない。
だがマフラーなしだとコウモリの狙いが的確になってくる。
避けきれない。
連続して三体のコウモリに狙われて、被弾。
分身が塵となる。
まあ、別にやられてもいい。
次を出すだけ。
残機がたくさんあるアクションゲームみたいなもんだ。
コンテニュー!
リンとトウコが攻撃を続け、コウモリの残機はゼロ。
負けるはずのない戦いだが、とにかく勝利である!
脳トレになったぜ!
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