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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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ルールの再定義! からの乱入!?

 スナバさんが言う。


「さて、休憩はもういいな」

「ですね。三回戦やりますか! 今度の役割はどうします?」


「攻撃役はエドガワだな」

「えっ! ボクが攻撃ですか……?」


 俺はうなずく。


「攻撃役をやってないのはエドガワ君だけだ」


 スナバさんが言う。


「あとは護衛と護衛対象だが、クロウさんはどちらがいい?」


 選ばせてくれるっていうなら護衛役だよね。

 守られる練習をしてもしょうがない。


「護衛役でお願いします」

「よし、なら俺が護衛対象だ」


「ルールはさっきと同じでいいですか?」


 俺は言う。


「さっきと同じで、スキルや異能には触れてもオーケーとしよう。分身には攻撃してもいいぞ」


 エドガワ君の異能には最初から触れているようなものだし。


 壁や膜があるわけじゃないので、触ってはいないのだが。

 ややこしい能力だこと!


 能力に触れても負けにはならない、ということを明確にしておく。



 エドガワ君は困った顔をしている。


「分身を攻撃って言われても……殴ったら倒せるんですか?」

「ある程度ダメージを与えたら消える。俺は痛くないから気にせずやっていいぞ」


「やりにくいんですが……」


 エドガワ君は気まずそうな顔をしている。

 そりゃそうか。



「他に確認や変更はあるかな?」


 エドガワ君があわてたように言う。


「あ、あります! さっきのはナシで……えっと、入れ替えの術ですか?」


 スナバさんがうなずく。


「たしかにこのルールでは強すぎるな。禁止でいいか、クロウさん?」


 スナバさんが俺を見る。

 俺はうなずく。


「入れ替えなしか。いいですよ。分身はアリでかまいませんね?」

「ええと、はい」

「普段使うスキルはなるべく使ったほうが訓練になるからな」


 これはスキルや異能は持っている前提の訓練だ。


 実戦では能力を縛って戦ったりしない。

 でも、訓練のルール上バランスが崩れるから【入れ替えの術】を禁止するという話だ。


 何度も術を見せると弱点がバレるし。

 例えば【入れ替えの術】は動き回る相手には発動できない。


 能力を知られると対策される。


 仲間とはいえ、弱点をわざわざ知られたくない。

 だから使わないで済むならそのほうが良い。


 ちなみに【分身の術】にはこれと言った弱点がない。

 見せ放題な術である!



 スナバさんが言う。


「他のスキルがあるなら使ってもかまわない。ただ、ケガするような攻撃は禁止だ」


 エドガワ君が両手を合わせて俺を拝む。


「やさしくお願いしますね! ほんとに!」

「わかってるって。強く殴ったりはしない」


 ルール上、護衛役が攻撃してもいいのだ。

 でも生身で攻撃したら攻撃役に触ってしまう。

 すなわち負け。


 しかし分身なら接触扱いにならない。

 攻撃できるってわけだ。


 だけど、防御的な使い方にとどめるとしよう。

 エドガワ君が泣いちゃうからな!



 ルールを調整しながら訓練を続ける。

 同じルールでくり返すより、変化があったほうが役に立つ。


「あとは……ん?」

「誰か来たな」


 訓練室のドアが叩かれている。

 エドガワ君がドアを開け、顔を見て言う。


「はい……あ、ナギさん?」


 ドアからひょこりと顔をのぞかせたのはナギさんだ。


 楽しげに笑いながら室内に入ってくる。

 足取りも軽い。


 あれ? ナギさんてこんな感じで笑うのか。

 なにか浮ついているし、違和感があるな……?


 御庭がいないからか?



 俺は言う。


「ハルコさんとの話はもう終わったんですか?」

「……」


 ナギさんは無言でうなずく。

 口元は緩んで笑顔の形になっている。


 エドガワ君は後ろに下がってもじもじしている。

 ナギさんがエドガワ君に近づく。


「……」

「な、なんです……?」


 エドガワ君は顔を赤らめてうつむく。

 この二人のからみは見たことなかったな。


 ていうか、違和感の正体がわかった。

 これ、ナギさんじゃない。


 見た目はナギさん。顔も服もさっき見たままだ。

 でも中身は――


「ぷっ! あはは! 私ですよぉ」

「やっぱりハルコさんか!」


 笑いをこらえきれずに吹き出したのは、ナギさんの幻をまとったハルコさんだった。


 おかしいと思ったんだよね!



 ハルコさんは目に涙まで浮かべて笑っている。

 ナギさんのイメージが壊れるわ!


 エドガワ君が驚いて、ナギさんに化けたハルコさんを見る。


「えっ!? これ、幻ですか!?」

「そうなんですぅ! 御庭さんが変化(へんげ)の術をやれって……そしたら、できちゃいましたぁ!」


 ハルコさんがくるくるとその場で回る。

 うーん。ナギさんの見た目だと違和感がすごい。


「見た目は完全にナギさんだな。表情や動きが違いすぎるけど!」

()れすぎて別人ですよねぇ! すごくないですかぁ!?」


 自分の体にナギさんの見た目を貼り付けているのだ。

 ハルコさん風に言えば(デコ)っている。


「ああ、すごいな!」


 俺は変化の術は持っていない。

 取得リストにも現れないから、適性(てきせい)がないのかな?


「御庭さんがすごく喜んでくれて……君こそ次世代の忍者だ! なんて!」



 スナバさんがやれやれという感じで言う。


「また御庭の忍者かぶれが出たか……」


 スナバさんは黙っていたけど、入ってきたときから気づいていたな。

 スキルで見破ったのかもしれない。



 俺は二人を紹介する。


「こちらスナバさん。ナギさんのふりをしているのがハルコさんだ」


 ハルコさんが幻を解く。

 いつもの顔が現れる。服もブランド服に戻る。


「アオシマハルコです。よろしくおねがいしますぅ!」


 ハルコさんは上目遣いにスナバさんに笑いかける。

 スナバさんは小さくうなずく。


「よろしく。スナバレンジだ」


 エドガワ君が続く。


「あ、ボクはエドガワトオルです……って、知ってますよね」

「これから一緒に働くらしいので、お願いしますねぇ、トオル君!」


 いきなり名前呼び! グイグイいく!


 エドガワ君は少し戸惑(とまど)いながら言う。


「えっと……はい。お願いします」

「でもトオル君、私のときとコハル(ナギ)さんのときで差がありすぎじゃないですかぁ?」


 ハルコさんは頬をふくらませてエドガワ君に指をつきつける。


「え?」

「しゅっとした美人さんがタイプなんですねぇ?」


 ハルコさんはからかうように言う。


「い、いえ。どちらかというとニガテで……」

「ドキドキしちゃうからですかぁ? 私には塩対応なのに……」


 ハルコさんが悲しげな顔を作る。

 エドガワ君は降参するように両手を上げて後ずさる。


「いえ! ハルコさんもニガテです! じゃなくて……ああ……」


 エドガワ君は頭を抱える。



 そろそろ助けるか。


「ハルコさん。訓練の途中なんだ。少し待ってもらえるかな?」

「あ、はーい。わかりましたぁ」


 スナバさんが言う。


「それならシズカと一緒に見学していてくれ。シズカ、挨拶しろ」


 シズカちゃんが小さく頭を下げる。


「うわぁ! かわいいですねぇ? よろしくね」

「……」


 シズカちゃんはさっと、スナバさんの後ろに隠れる。


 ハルコさんが俺を見る。


「あれぇ? また私、嫌われちゃいましたかぁ?」

「シズカちゃんは人見知りなんだ」


「いつものことだ。すまないが、仲良くしてやってくれ」


 スナバさんがシズカちゃんの背をやさしく押す。

 二人は訓練室の端に仲良く座った。



 さて、訓練の続きだ!

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[一言] 変化の術(御庭命名
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