機密保持とニードトゥノウの原則!?
スナバさんは常にシズカちゃんのそばを離れない。
だから悪性ダンジョンには入らない。
でも、スナバさんはダンジョン保持者だ。
俺はスナバさんに聞く。
「自分のダンジョンの間引きはシズカちゃんと一緒にするんですか?」
「いや、連れて行かない。危険すぎるからな」
あ、そうなんだ。
「でも、間引きしないと悪性化しますよね?」
「ああ。だから最小限はやる。月に一度程度だ。シズカはコハルに預ける。無理な場合はダンジョン側をロックしてもらうこともある」
コハル?
ああ、ナギさんの苗字だっけ。
親しくなるとサン付けが取れるのかな?
俺にはまだサンがついてる。
当然だ。俺とスナバさんはまだ数回しか会っていない。
これから打ち解ければいい。
ナギさんとシズカちゃんは仲がいいのかな?
「ナギさんに預ければ大丈夫なんですか?」
「いや。ぐずったときは能力を使ってとめるんだ」
「えっ? まさかの力技で!?」
「最近は慣れてきて問題は減ったと聞いている」
ゼロではないんだ……。
「それから、ダンジョンをロックってどういう意味ですか? ダンジョンごと停止させる?」
そんなことができるのか!?
スナバさんが言う。
「ああ、これはコハルとは別の話だ。鍵をかけるようにして、ダンジョンを封じる異能者がいる。必要があれば、御庭から紹介されるだろう」
ナギさんと似た能力の人がいる……?
停止とロックでは違うのか。
「へえ。興味はあるけど……紹介されるのを待つか」
「ボクも会ったことありません……」
あ、エドガワ君も知らないのか。
俺が新入りだからってわけじゃないらしい。
「公儀隠密のメンバーって、みんなが顔見知りじゃないんですか?」
「ああ。知りすぎると危険なんだ。俺も知らないメンバーはいる。ここのような拠点も複数あって、分散している」
「御庭から拠点がいくつもあるとは聞いたな」
そういえば、俺の街にも拠点を作るとか言ってたっけ。
ここは少し遠いんだよな。
エドガワ君が言う。
「ええと……どうして仲間に会わせないんですか?」
「拷問されたり、異能で情報を引き出される可能性がある。一人から全体の情報が洩れるのを避けている」
真顔で話すスナバさん。
エドガワ君がビビる。
「えっ!? 怖いんですけど……!」
俺も、それは心配している。
異能者やダンジョン保持者には悪人もいる。
ストーカー事件で、それは身に染みて分かっている。
悪い虫に好かれやすいリン。
変異しかけているトウコ。
俺一人で守ることは難しい。
一人でいるよりも組織に属していたほうが安全だ。
組織に入れば、また別種の問題もある。
それは覚悟していたことだ。
公儀隠密はちゃんと対策している。
メンバーを保護する考えもある。
「忍者組織らしくもあるし、スパイや軍隊のようでもあるな。情報を持たないことで組織を、ひいてはメンバーを守ると」
スナバさんが言う。
「そう。ニード・トゥ・ノウの原則だ」
情報は最小限にする。知る必要がある人だけが知る。
機密管理の考え。
特異対策課の中にも複数の部署がある。
俺たち公儀隠密だけじゃない。
公儀隠密の中でも複数の拠点やチームがある。
別チームの顔や能力は知らない。知らされない。
この拠点が壊滅しても、他の拠点、他の部署は残る。
他の部署のメンバーが捕まっても、この拠点の情報は洩れない。
ちゃんとしてるね!
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