実践的訓練は護衛ゲームで!
エドガワ君は肩を落としている。
「うーん。ボクもいいところを見せたいんですが、ぜんぜんダメですね……」
「エドガワ君の能力は近寄らせないことだから、攻撃する側だと不利だよな」
「ああ。適材適所だ。エドガワは守りでこそ力を発揮するだろう」
「ルールを変えてなにかやってみようか? エドガワ君の能力が生きるヤツ」
スナバさんが言う。
「じゃあ道場でやろう。考えがある」
俺たちは道場へ移動した。
板張りの体育館のような部屋で、かなり広い。
「畳を敷くこともできるが、このままでいいだろう」
いわゆる武道場だ。
畳を敷けば柔道やレスリングのような競技もできるわけだな。
「ケガをしないようなルールなんですね?」
スナバさんが言う。
「ルールを説明する。三人でそれぞれ違う役割を行う。攻撃、護衛、護衛対象だ。スタート地点は道場の奥。護衛対象が道場から出れば勝ちだ」
「お、シンプルなルールだ! 訓練にもよさそうですね!」
「遊びで漫然とやってもしかたがない。役に立つ訓練であるべきだろう」
「お二人とも、訓練好きすぎませんか……?」
俺とスナバさんが言う。
「実戦でしくじりたくないからな。できる準備はしておくんだ!」
「必要だからやる。そういうことだ」
スナバさんとは気が合いそうだ!
俺はこういうの好きだし!
訓練や練習は、いつだって意味がある。
やっただけ力になるんだ。
「じゃ、さっそくやろうぜ!」
「ああ。順番を決めよう。まずはエドガワが護衛役だ」
「は、はい!」
エドガワ君の能力が発揮できるルールという話だからな。
とうぜん、護衛役だろう。
「クロウさんは護衛対象でいいか?」
「ああ」
俺はうなずく。
俺は護衛対象。守られる役だな。
ルールの詳細を聞いておこう。
「で、護衛対象はなにをすればいいんだ?」
「守られる一般人という設定だ。自発的に動かず、護衛役の指示で動いてくれ」
「攻撃や防御はしないってことだな。移動はどうだ?」
「護衛役の指示で動くだけにしてくれ」
俺は戦ったり、動いたりしない。
言われたとおりに移動するくらいだ。
守られる一般人役だから攻撃や防御にい参加してはいけない。
「うわあ、どんどんルールが決まっていきますね……」
「エドガワ、質問はあるか?」
「ええと、はい。攻撃役はどこまでやるんですか? 殴られたりはちょっと……」
エドガワ君は心配そうに言う。
訓練とはいえ、殴られたくはないよな。
スナバさんが言う。
「テイクダウンしたら護衛失敗にしようと考えていた。なら、護衛対象の体に触れたら護衛失敗にするか? 難易度が上がるぞ」
護衛対象である俺が触られただけで負けらしい。
弱すぎ設定!
「エドガワ君。これ、かなり難しいぞ?」
「あと、護衛も触れられたら負けでお願いします。強く殴ったりするのはナシで……」
護衛すら一撃くらったらやられる設定!
いや、これは面白いかもしれないな!
スナバさんが言う。
「いいだろう。触るだけで敵を殺す能力もあり得る」
「俺も似たことを考えていた。ダンジョンだと一撃食らったら終わる場合もある」
エドガワ君がひきつった顔で言う。
「お二人の考え方、怖すぎるんですけど……」
スナバさんが言う。
「では、武器や道具はどうする?」
「最初はナシでやろう!」
「あとで使う気なんですね……」
武器を想定した訓練もしておかないと!
対人戦を想定するなら、敵は武器を持っている可能性が高い。
「制限時間はどうする?」
「長すぎてもダレそうだ。三分くらいでいいかな?」
エドガワ君は遠い目で言う。
「はい……ああ、どんどん決まっていくなあ。ルールはこれくらいでいいですか?」
ルールが複雑になると覚えられなくなる。
こんなものでいいか。
「いいぞ。まずはシンプルにやってみよう!」
「ああ、はじめよう!」
ルールは決まった!
さあ、やろう!
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