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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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ザ・イリュージョニスト誕生!? その2

 ハルコさんは御庭に見惚れている。


 御庭はさわやかに続ける。


「さあ、座ってくれ!」

「はいぃ」


「ハルコ君はショッピングセンターの事件で助けになってくれたそうだね」

「は、はい! あ、いえっ! 助けてもらったのは私のほうなんですけど……」


 ハルコさんが俺を見る。


「お互い様だ。ハルコさんの能力があったから安全に避難できたんだ」



 御庭が言う。


「ハルコ君。その能力を見せてもらうことはできるかな?」


 事件の後、詳細は報告してある。

 だから御庭たちはハルコさんの能力を把握(はあく)している。


 直接見たいのだろう。

 あるいは試験のようなものか。


「えと、なにを見せればいいんでしょうかぁ……?」


 なんでもいいと思うけど、ハルコさんは緊張してしまっているようだ。

 俺は助け舟を出そうとするが、御庭が口を開く。


 御庭はハルコさんのカバンを手で示す。


「たとえば、そのカバンがそうだね? 本物と区別がつかないほど見事だ」


 高級ブランドの品だが――まさか!?

 ハルコさんは少し気まずそうに答える。


「あ、あれ? バレちゃいましたかぁ?」


 俺は気づかなかった。

 つまり――


「――そのカバン、(まぼろし)なのか?」


 よくできた幻影だ。


 このカバンは先ほどから普通に使っていた。

 物を取り出したり、ぶらぶらと動かしていたのに、少しも違和感はなかった。


「はいぃ。カバンをデコってるんですよぉ」


 高級ブランド物のカバンがぶれて、消える。

 その下から現れたのは安物のカバンである。


「僕が見せてほしいのは、もっとわかりやすいものだよ」

「ハルコさん。例の壁がいいんじゃないかな?」


 俺たちの言葉にハルコさんはうなずく。


「で、では!」


 ハルコさんが手をかざすと、御庭たちとの間に壁が現れる。

 会議室の壁と同じ材質、模様だ。


 壁の向こうからくぐもった御庭の声が聞こえる。


 御庭が壁から顔を出す。

 ちょっとシュールだ。


 御庭は楽しそうに、壁に手をすかしたり、出たり入ったりしている。


「これはすごい! 見えるのに触れない。それなのに音は通さないんだね!」

「物理法則がおかしいよな。さすがは異能(いのう)!」


「あはは……。面白がってもらえてよかったですぅ」



「これは錯覚(さっかく)じゃない。実際に五感で捉えられる映像を投射しているんだね?」

「幻覚や精神攻撃じゃなくて、映像を出してるんだな」


 精神に働きかけて脳をだましているのではないってこと。


「えっと、そうなんですねぇ?」


 ハルコさんはよくわからず使っているようだ。

 御庭が言う。


「一般の人にも見えるし、カメラにも映る。実在する映像ということだ」

「つまり、人に能力がバレる可能性があるから注意しないといけないな」


「は、はいぃ。あぶないんですよね?」


 俺たちの言葉にハルコさんがうなずく。

 切り離し(パージ)認識阻害(ブロック)については説明してある。



「ではハルコ君。分身の術はできるかな? ほら、忍術だよ!」


 ふむ。ハルコさんの能力なら似たことができるかもしれない。


 欲しがるね、御庭!

 さすが忍者マニア!



 ハルコさんは前に、なにもないところには映像を出せないと言った。

 でも壁は出せている。


 練習すれば人間型の映像も出せるようになるんじゃないか?



「こんな感じだ――分身の術!」


 俺は分身を出す。

 実体があって触れるものだ。


 【分身の術は】ショッピングセンターのときに見せたし、説明もしてある。


「やったことないんですけど……試してみますぅ」


 そう言うとハルコさんは手を前に出す。


 なにか見えてきた――

 もやもやと不鮮明(ふせんめい)映像(ビジョン)が現れる。


 だが――ノイズが走って、そのまま消えてしまう。


「――ダメみたいですねぇ」

「やっぱり人間の形は苦手なのか?」


「はい。お洋服やアクセサリなら得意なんですけど……こんなの役に立ちませんよねぇ……?」


 ハルコさんは肩を落とす。

 そこに御庭は笑いかける。


「いやいや役に立つとも! 異能は万能じゃない。制限や(かたよ)りがあるのは当たり前だよ!」


 スキルは取得すれば使える。

 異能は選んで身につけるものじゃないから、ちょっと違うらしい。


「なあ御庭。異能って、使用者の好きなものに限定されるのか?」

「いや、好きなものとは限らないね」


 才能のようなものかな。

 自分で選べるわけじゃない。


 絵が好きだからって、絵の才能があるとは限らない。

 音楽が嫌いでも絶対音感を持つ人はいる。


 異能者でも同じか。


「そうか。御庭が大好きな忍者になれてないんだから、好き嫌いは関係ないよな」

「……好きなことが異能になるなら素晴らしいよね」


 御庭はちょっと悲しげだ。



 ハルコさんが言う。


「私は自分が身につけるものを()()()だけです。でも……自分が好きなわけじゃないんですけどぉ」

「ファッションに関係した幻を出せる、ということだね?」


 ハルコさんはあいまいな笑みを浮かべる。


「うーん。そうみたいです」


 俺は訊ねる。


「壁はどうなんだ?」

「あれは、とっさに。それからできるようなったみたいですぅ」


 御庭がうなずく。


「異能は成長するからね。簡単ではないけど、すこしずつ練習するんだ」

「エドガワ君も成長したらしいからな。危険な状況だと違うんだろう」


 ワニと戦ったときは経験値や熟練度の入りがよかった。

 死地での経験は一味違う。


 ショッピングセンターは戦場だった。

 実際に死んだ人もいる。



「そういえば御庭。どうやってハルコさんのカバンが幻だとわかったんだ?」


 事前に能力を知っていても気づけないほどよくできた幻。

 それを御庭は一目で見抜いた。



 俺の発言にハルコさんが乗っかる。


「それが御庭さんのチカラなんですかぁ? 知りたいです!」


 御庭が言う。


「うん。異能を使っている。さて、そこで問題だよハルコ君! 僕の能力がわかったかな?」

「はじまったな……御庭クイズ!」


 俺は少しあきれた顔で言う。

 御庭の横で、ナギさんも小さくため息をついている。



 精神感応(テレパシー)ではない。

 読心能力(マインドリーディング)でもない。


 直接的な戦闘能力ではないと言っていた。


 悪性ダンジョンでは体術で戦っていたし、見てわかるような能力は使っていなかった。

 俺にもいまだに御庭の能力はわからない。


「うーん……お会いしたばかりだしぃ」

「ではヒントを。テレパシー(精神感応)洗脳(ブレインウォッシング)ではない。さあ、どうかな? クロウ君も考えてね!」


 御庭はハルコさんの能力を見抜いた。

 それが能力の一部らしい。


 知覚系の能力か……?


 うーむ。なんだろう?

誤字報告助かっております!

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― 新着の感想 ―
[一言] 得られる異能に方向性はありそうだけどね。ハルコさんは自分に自信がないから盛る能力を得たりとか。 と考えると御庭さんは自分は忍者じゃないと自覚してるけど、忍者はいるかもしれないと考えて、そうい…
[一言] んー 組織の長をやってるんだから虚実を見抜く魔眼やその手の能力が可能性高いかなぁ…? カバンに触れてはいないから接触系ではないし
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