第五エリアの再偵察! 雨季でウキウキ!?
自律分身は食事を一口食べて言う。
「ウマいな……! クセがなくて――」
それを聞いてトウコがふきだす。
「ぷっ! デジャブっスか!? 店長とおんなじこと言ってるっス!」
「自律も俺なんだから同じこと言うわ!」と俺。
「ん? かぶってたか?」と自律分身。
少し前に決戦場で分かれた俺自身なのだ。
同じ物を食えば同じ感想になるのは当然だ。
自律分身は食べながら偵察してきたことを説明する。
内容はこうだ――
第四エリアとは違い、雨季のサバンナだ。
天気が悪いので少し薄暗い。
エリアを貫くように広い川が流れている。
川は土色に濁っている。水量も多い。
流れは速くない。
川に入ってみたらしい。前回よりもさらに深くまで。
腰丈を超えるほどになると、流れが強くて体が流されそうになったそうだ。
胸より深い部分もあるらしい。
聞いたかぎりだと、歩いて渡るのは無理だろう。
泳ぐか、船のような乗り物が必要だ。
さいわい、水棲モンスターは見当たらなかった。
小さいワニだとか、狂暴な魚は棲んでいない。
「――以上が偵察結果だ。第六エリアには入らずに引き返してきたぞ」と自律分身。
「川におさかなはいないんですねー!」
「なあんだ。残念っスね!」
「食べることばっかり考えてるだろ!?」と自律分身。
「襲われる心配してくれ!」と俺。
緊張感! 緊張感よ!
モンスターとか、川の渡り方とか気になるだろ!?
思い出したように自律分身が言う。
「あ、そうだ。土産があったんだ」
手袋をはめて、リュックサックに手を突っ込む。
取り出したのは花束――ではなく、花のついた枝である。
「わあ! アカシアの花ですねー! これ、食べられますよ!」
顔をほころばせ、【食材鑑定】をかけるリン。
花より団子派だな!
最初に第五エリアにいったとき、天ぷらにして食べたいと言っていたのだ。
リンが枝に手を伸ばす。
それをトウコが止める。
「トゲ! トゲに注意っスよ!」
「あっ! そうでしたー!」
自律分身は手袋をはめている。
リンが手に取ろうとしたら引っ込めるつもりだった。
「お、トウコは覚えてたか。いいぞ!」と自律分身。
「トウコは前に毒にやられたからな」と俺。
「あのときはひどい目にあったっス!」
ナイス緊張感!
学習能力があるようで安心したぜ!
「システムさん。鑑定してもらえますかー?」
<名称:アカシアの枝。カテゴリ:素材>
<名称:アカシアの花。カテゴリ:素材>
「へえ、花と枝で別枠なのか」
【物品鑑定】では素材だが【食材鑑定】では食べられる判定らしい。
【毒術】と【薬術】も試す。
枝は前と同じ。
同じアイテム扱いだ。
エリアの違いは関係ないらしい。
薬は、抗炎症薬と下痢止め薬。
毒は、嘔吐毒が作れる。
ではアカシアの花は――
薬は、抗炎症薬と傷薬。
毒は作れない。
「おお、傷薬は良さそうだな!」と俺。
「さっそく作ってみるか?」と自律分身。
自律分身は枝も花も何本か持ち帰ってきている。
「お薬ですか? いいですねー」
といいつつ、リンの表情は浮かない感じ。
「いや、てんぷらにしよう!」
「はーい!」
「やたーっ!」
薬なんていつでも作れる。
また第五エリアに行けばいいのだ!
 




