祝勝会は香草ステーキで!
草原ダンジョンの食卓に料理が運ばれる。
ワニ肉料理である!
リンがじゃーんという感じで言う。
「はーい! ステーキにしてみました!」
「おお! うまそうだな!」
大きめに切り分けられた肉は鶏肉に似ている。
焼き目がついていて、ほかほかと湯気を立てている。
トウコが皿に顔を近づけて言う。
「んー! いい匂いっス!」
「バジルとパセリを刻んだものとオリーブオイル、塩コショウで味付けしてみましたー。どうぞー」
「いただきます!」
口に肉を運ぶ。
ハーブのいい香りが鼻孔をくすぐる。
肉をかみしめる。
思いのほかさっぱりした味が口の中に広がる。
「お、うまい! 思ったよりクセがないんだな!」
リンは少し心配そうな顔で言う。
「そうなんですよー! だから、ちょっとハーブが強すぎたかもしれません」
ワニは濁った川に住んでいので、クサそうなイメージがある。
だが、そんなことはなかった。
そして脂がのっているのに、しつこくない。
ハーブは肉の臭みを消す工夫だったんだろう。
肉が案外さっぱりしていたので、ハーブがなくてもイケる。
でもハーブの香りが食欲をそそるんだよね!
主張しすぎて肉の味を邪魔したりもしない。
「絶妙だよ! すごく美味い!」
俺の絶賛の言葉にリンがはにかむ。
「そう言ってもらえるなら……えへへ。うれしいです!」
「やっぱり、生とはぜんぜん違うっスね! うまー!」
「そりゃそうだろ!」
完璧な焼き加減!
彩り鮮やかで目でも楽しめる野菜の付け合わせ!
生と比べんな!
「焼いたお肉でもスキルがもらえたらいいのにねー」
「もっと食べたらもらえるかもしれないっスね!」
まだ食う気かよ!
「スキルと言えば、ついもらっちゃったけど、スキルオーブはリンが使えばよかったかな」
「あ、そうっスね! あたしは【捕食】でスキル増えるっス!」
「俺は【勤勉】で育てられるし【検証者】もあるからな」
「でも、みんなで頑張りましたからー。喜んでもらえたら、私はそれで幸せです」
まぶしいっ!
笑顔がまぶしいぜ!
成長の遅さに悩んでいたはずなのに……!
当たり前のように分け与えてくれる!
「……天使かよ!」
「女神っス!」
料理に舌鼓を打ちながら反省会が始まる。
いや、祝勝会だな!
「つり出し作戦はなんとかうまくいったな!」
「思ったより足が速くてあせったっス!」
「トウコは引き撃ち余裕っス! とか言ってたのに、ぜんぜんだったな」
「走るだけで必死だったっス!」
ギリギリすぎて撃つ余裕はなかったのだ。
「遠くから見てて、ドキドキしましたー!」
このときリンは小山で待機していた。
さぞ心配だっただろう。
「マキビシは効果があったな」
「でかマキビシっスね!」
リュックサックからのばらまきもうまくいった。
自分で踏まないように、一気にばらまく。
このために準備段階で試行錯誤したのだ。
うまくいってよかった!
リンが感心したように言う。
「なんでも作れて、ゼンジさんはすごいですねー」
「なんでもは作れないぞ。忍具だけだ!」
「柵が壊されたときはあせったっス!」
「ああ、あれはあせったな。結構しっかり作ったんだけど、ワニはパワーもすごかった」
パワーとスピード、さらにタフネス。
フィジカルが強すぎるぜ。ワニ!
「リン姉の射程距離に入ったときの安心感っ! 頼れるっス!」
「新しく取った【魔力強化】のおかげで、少し楽に魔法が使えたんですよー」
「威力はどうだ?」
「うーん。強くなってると思うんですが、ワニさんには効いてなくて……」
「効いてないわけじゃないぞ。ちゃんとヒットポイントは削れていたはずだ」
「あいつ、銃で撃ってもリアクションないから、わかんないっスね!」
「たしかに、効いてるかわからなくて困ったな」
耐久力が高すぎて効果が見えにくいのだ。
倒せないかと思ったわ。
「あ、でもいつもより楽に戦えたと思います!」
「魔力が増えた実感あったのか?」
「はい! いつもはもっと早く疲れちゃいますねー」
「魔力切れの課題はクリアできたんだろうけど……今日はさすがに長丁場だったな」
「あたしもヘトヘトっス!」
「トウコのは走ったからだよな」
チャージショットは魔力を食うが、普通の銃撃は魔力を使わない。
「でも【身体強化・体力】で次からは余裕っス!」
「よし! 次もエサ役は任せる!」
「うえぇ!? そういう意味じゃないっス!」
トウコは情けない顔ですがりついてきた。
 




