巨大ワニの後始末。【解体】の謎に迫る!?
リンがワニの尻尾を解体した時のことを思い返す。
尻尾を切断するのは重労働だった。
硬いカボチャを切るのに似ている。
何度も包丁を入れてはギコギコと力を込めていたのだ。
マグロの解体ショーみたいとも言える。
【解体】は戦闘用ではなく、食材用のスキルだ。
攻撃力や切断力を強化しない。
バラバラに分解するような便利スキルでもない。
俺とトウコはそっちを期待していたんだけど、実際はもっと地味である。
効果は――モンスターの一部を食材に変えること。
たぶんモンスターを倒すことで発動する。
最後の一撃を入れることが発動条件じゃないかな?
効果はさまざまだ。
これまで見た中でも数パターンあった。
スライムを解体したときは、核をえぐるようにしていた。
核が残って、粘液の体は消えた。
鹿を解体したときは、何度も包丁を突き入れた。
倒すと肉が残り、体は塵になって消えた。
今回は尻尾を切断した。
切断した尻尾が残って、体は塵になった。
核や尻尾のように、体から切り離すとその部位が残る。
ただ敵を倒した場合は、肉がドロップするってことだな。
「しかし【解体】するとおトクだよな」
「そうですねー。お肉がたくさん取れましたー!」
トウコがかじった尻尾は、まだほとんど残っている。
数十キロはある。子豚くらいのサイズ感だ。
食べきれる気がしないぞ、こりゃ。
これでも尻尾全体ではなく、一部。
根元は太すぎたから先端を切り落としたのだ。
「皮もついてるし、素材として使えるといいんだけどな」
「消えないといいっスね!」
ワニの皮は頑丈だし、防具にできそうだ。
「料理するとき、気を付けますね!」
「ああ。必要な素材だと意識しておいてくれ」
トウコはしたり顔でうなずく。
「認識しとけば消えない説っスね!」
「うまくいくといいですねー」
「さて、そろそろ拠点に引き上げようか」
「そっスね!」
ワニが大暴れしたため、周囲のモンスターは逃げている。
戦いの場を準備する段階で間引きもしてある。
モンスターに襲われる心配はない。
とはいえ、ここにいてもしょうがない。
「はい! 帰ってごはんにしましょう!」
「ワニ料理が楽しみだな!」
「あたしもー! リン姉の料理は別腹っス!」
リンは尻尾肉を前に困り顔だ。
「うーん。大きすぎて私の【食品収納】には入りませんねー。どうしましょうかー」
トウコがにやにや笑いを浮かべる。
「大きすぎて、リン姉には入らないっスか! へへ」
「入るわけないだろ! 二メートルはあるわ!」
リンはまじめに悩んでいるらしく、俺たちの会話をスルーした。
「シカさんの上質肉もまだ残ってますし……ふつうのお肉も……」
「捨てるのはもったいないよな。どうしたもんか」
食材を捨てるのは気が引ける。
と言って食べきれる量じゃないし。
「あ、思いついたっス! いらない分は畑にまけばどうっスか?」
「あ、いいんじゃないか? 魔石みたいに肥料になるかもしれないぞ!」
有機物として肥料にするのではない。
魔石と同じように扱うのだ。
捨てる認識があれば、塵になって消える。
肥料にするつもりで畑にまけば、魔石のように栄養になるかもしれない。
「そうですねー! あとで試してみましょう!」
肉で野菜を育てるわけだ。
エコと言うか、不思議な感じ!
俺は柵の残骸からソリを作って尻尾肉を積む。
前に作った木材運搬用の木馬と同じようなものだ。
疲れはあるが、心地よく思えてくる。
戦利品を持って帰る俺たちの足取りは軽い。
おいしいご飯が待ってるからね!
 




