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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
一章 ステイホームはダンジョンで!

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見敵必殺! 三階層の中央の戦い!? その2

 手にしていた薬草を、口に放り込んで咀嚼(そしゃく)する。


 それを見たゴブリンがギャアギャアとわめく。

 地団駄を踏んでるやつもいるな。

 コミカルな連中だ。


 これからの戦闘で負傷したとしても、これである程度は保険になる。

 負傷がなく戦闘を終えたとしても、筋肉痛や小さな負傷が癒されるので無駄にはならない。



 わめきながら、ゴブリンの群れが俺をめがけて殺到する。


 俺は広場の中央、宝箱の前で、それを迎え撃つ。


 広場はそれほど広くないが、ここから巨石……壁は遠い。

 つまり障害物のない平坦な足場での戦いとなる。


 頼りの壁はない。

 隠れ潜む場所もない。

 これは、ボス戦に挑むための訓練でもある。


 どういう状況か、どういう相手かもわからない。

 正面切っての戦いが苦手では、勝てないのだ。


 ここはあえて、平地での戦いを経験しておく!



「分身の術! 分身の術!」


 俺は二体の分身を生み出し、ナタと釘を投げ渡す。

 分身はもっと出せるが、ちゃんと操作しようと思えば二体が限界だ。


 これで戦闘準備はととのった。


「ガアア!」


 ゴブリンの一匹が、動きを見せる。

 これが戦闘開始の合図となった。


「まずはお前からだ! くらえっ!」


 投擲した二本の棒手裏剣が頭部に突き刺さり、先頭のゴブリンがのけ反って倒れる。


 その間に別のゴブリンが飛び出し、こちらへ走りだす。

 これに、ナタを持った分身一号を向かわせる。


 飛び出したゴブリンに、分身を操作してカウンター気味にナタを振る。

 これは、コウモリでも練習した動きだ。タイミングはバッチリ。


 ナタは重量で振り下ろすので、分身の体に反動は伝わりにくい。

 素手や寸鉄と違って、反動での自滅の心配は少ない。


 愚直に走ってきたゴブリンの頭部にナタがめりこみ、鈍い音を立てる。

 ゴブリンはよろめき、倒れる。

 分身の腕力では即死には至らないようだ。

 だが、もう起き上がることはないだろう。


 それと同時。ゴブリンが、分身一号を狙って飛びかかる。

 これに分身二号を割り込ませ、横から蹴り飛ばす。

 打撃ではなく、足裏で押して吹き飛ばす蹴り方だ。


 軌道をそらされたゴブリンは飛びかかった勢いのまま、顔面から床へダイブする。

 デコボコした床に突っ込んで、顔面を血だらけにしている。

 見てるだけで痛そうだ!



 分身を操作する俺にゴブリンが近づく。

 今の動作で分身は動けない。体勢を立て直すよう指示を送る。

 俺は迫るゴブリンへ注意を向ける。


「ガアッ!」


 叫び声と共に振り下ろされた棍棒をかいくぐり、左前へ踏み込む。

 ぶうん、と耳元で棍棒がうなりをあげる。棍棒は空を切る。


 ゴブリンの側面から、逆手に持ったクナイをガラあきの脇腹へ突き込む。

 コンパクトな二連撃。脇の下、脇腹に致命的なダメージを与える。


「グッ」


 空気を押し出すような声をあげてゴブリンが動きを止める。

 ――その後ろ。新たなゴブリンが片手斧を振りかぶっている。


 クナイを刺したゴブリンの体を、そのゴブリンへぶつけるように突き飛ばす。

 片手斧のゴブリンは、それに遮られて俺のもとへ近寄れない。


 ゴブリンはとっさに片手斧でそれを打ち払う。

 弱ったほうのゴブリンが塵と消える。


 俺と斧ゴブリンを遮るものがなくなった。

 そこへ踏み込み、斧を構えなおそうとする腕をつかみ、ねじり上げる。


「アギッ!?」

「――この腕、もらった!」


 腕をつかんだまま、俺は体をひねるよう強く踏み切って跳ぶ。


 側宙(サイドフリップ)に近い動きだ。


 横回転をかけて、腕をひねりあげながら投げ飛ばす。

 ごきごきと、奴の関節が破壊される音が腕に伝わってくる。


 俺は着地と同時に勢いのまま前方へ身を投げ出す。

 開けたスペース――安全な場所へ立って、周囲を確認する。


 俺の近く――手の届く範囲には敵はいない。


 分身一号の足元に、ナタで頭を割って無力化したゴブリンが転がっている。

 分身二号の前には、床へダイブしたゴブリンが起き上がりかけている。

 それぞれにとどめを刺すように指示しておく。



「アガァァァ! アアアァ!」


 腕を砕いたゴブリンが転げまわって、わめいている。

 俺は素早く腰袋から棒手裏剣を取り出し、投擲してとどめを刺す。


 ゴブリンが取り落とした片手斧も、同時に塵となる。

 武器はモンスターの一部とみなされているのか、回収はできない。


 なにがなんでも物資を取らせないつもりか、このダンジョン。

 渋い、渋すぎる。



 ゴブリンが、一つにまとまるような動きを見せている。

 一匹ずつかかってきて各個撃破されるのを警戒しているんだろうか。


 ……ゴブリンのくせに、ちょっとは頭を使うのか?


「妙な動きを……何か考えがあるのか?」


 一応は警戒して、分身を近くに呼び寄せる。

 自分の両脇に配して、武器を構えさせる。


 そこへ、ある程度集まったゴブリン達が――


 ――そのままバラバラに突撃してきた!


 何の作戦もなかった!


「アギャア!」

「ギギャッ!」


 思い思いの叫び声をあげて、我先にとこちらへ向かってくる。

 連携も何もあったもんじゃない。


「ははっ! それでこそゴブリンだよ!」


 急に賢くなったらびっくりするわ。

 期待通りで安心した。


 とはいえ、押し合いへし合いしながらも、ある程度のまとまりはある。

 こうなると少し面倒だ。


 俺のクナイはリーチもないし、まとめて敵を倒すような技もない。

 だが――。


「行け一号! つっこめ二号! 両翼から突撃だ!」


 分身を両翼から突撃させる。

 ナタを持った一号には、横振り攻撃のモーションのイメージを伝える。

 相手集団の外側の相手を、中央に押し込めるようなイメージ。

 リーチの短い寸鉄持ちの二号は、体ごとぶち当たる腰だめ突撃だ。


 分身が突撃を成功させる。

 そして、撃破される。


 ナタを持った分身一号は、攻撃後の隙に反撃を受けて散る。

 二号は果敢に体ごと敵にぶち当たり、その衝撃を受けて塵となる。


 だが、それでいい。

 役目は果たしてくれた!

 狙い通り、敵集団を押し込んで足を止めてくれた。


「ここだっ!」


 俺の体はすでに動き出している。

 忍者走りの体勢で、ゴブリンの群れめがけて走りこむ。


 両手は背後にあって、敵からは見えない。

 体を左右に振って走りながら、攻撃を打ち込む最適の角度を探る。


 左右どちらから攻撃するかを読ませない、有名な抜け忍の必殺技のように駆けていく。


 ――右手に持っていたクナイを腰の後ろで左手に投げ渡す。



 敵集団と俺が交錯するその瞬間――


 ――背中に背負っていた愛用のバットを抜いて全力で振り抜く!


変移(へんい)抜刀(バット)かすみ振り(フルスイング)!」


 【フルスイング】が発動し、小さくまとまったゴブリンの群れに炸裂する。

 まるでボウリングのピンのように、吹き飛ぶゴブリン達。


 【フルスイング】の本領は威力ではなく、ノックバック効果にある。

 殴りつけたバットは、反動で止められることなく次々とゴブリンをなぎ倒していく。

 そして、大きな反発力で弾き飛ばすのだ!


「ギャァッ!」

「っしゃあ! ストラァイクッ!」


 技っぽく言ってはみたものの、やったことはいつもの【フルスイング】だ。

 クナイで攻撃すると見せかけ、バットで攻撃する。


 左手でバットケースをずらし、右手でバットを抜く。

 バットケースは抜きやすいようにスリットが入っているので、簡単に抜けるようになっている。


 【フルスイング】は片手でも当然発動する。

 両手振りよりも威力は落ちるが、当てて吹き飛ばすことを重視している。


 意表を突こうがつくまいが、ゴブリンにはどうせ当たるのだが、無駄ではない。

 いつか現れる強敵に使うための予行練習なのだ。



 吹き飛んだゴブリンはいくらか生き残っている。

 だが、倒し切らなくても問題はない。

 生き残ったゴブリンの動きは鈍くなっている。

 とどめの棒手裏剣を打ち込んで仕留める。


「よし、全滅!」


 広場には倒したゴブリンの魔石が転がっている。

 まとめて多くの敵を倒すことができて、効率もよかったな!


 文句なしの勝利だ!

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― 新着の感想 ―
[一言] おぉ、強くなってる(//∇//)
[一言] 少しゴブリンが可愛いと思ってしまった…不覚!
[一言] やっぱりヤキウ忍者じゃねーか!
感想一覧
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