開封! 宝箱! ゼリーの味はアレの味!?
「それじゃ、宝箱あけてみるか?」
「んじゃ、アタシはさっきのシカの宝箱を開けるっス!」
トウコが宝箱を開ける。
先ほど倒した二頭の角鹿の分からだ。
「中身は――鹿の角っス! も一個は皮っス!」
「おお、やっと来たか!」
森エリアでの目的は鹿の素材集めだった。
これでゲットできたな。
どうせならボス素材が欲しいが、湧くまで数日かかる。
また日を改めよう!
水スライムの宝箱は合計七個。
こっちはリンと手分けして開ける。
中身は――ゼリーが四、魔石が三。
ほくほく顔でリンが言う。
「やりましたねー。このゼリーは食べられますよ!」
「いつものスライムゼリーより水分が多そうだな」
手の上にゼリーをのせて観察する。
サバンナの砂スライムは砂が混じっていた。
あれは食べられない。
水スライムのゼリーはどうだ?
他のゼリーと比べると水分が多い。
ぷるぷると手の上で揺れている。
光に透かして見ると、きらきら輝いている。
透明に近い水色。
砂のような不純物は混じっていない。
スライムゼリーにはスライムがすんでいた環境が反映されるようだ。
水スライムのゼリーには水が混じっているのかもしれない。
見た目には、食べても問題なさそうに見える。
早くもトウコは口に放り込んでいる。
「んー? あんまり味しないっス!」
「お水の味に、すこし草っぽい青くささがありますねー」
食レポはリンのほうがうまいな。
俺も食べてみる。
「たしかに、うっすいキャベツみたいな感じだな」
トウコが思いついたように言う。
「あ、これ! 水たまりの味っス!」
「水たまりの味ってどんなだよ!」
「鼻から食べたらもっと近いっス!」
「それ、溺れてるだけだろ!?」
食べてるのと違う!
トウコは水たまりの水をがぶ飲みしてたんだよな……。
水たまりの中には木の根やコケの生えた岩がある。
雨水も流れ込んでいる。
その味か……。
「あんまりおいしくないっス!」
「トウコのせいで水たまり味としか思えなくなったじゃねーか……」
「あ、じゃあ口直しに、ハチミツ味にしましょう!」
リンは収納から別のスライムゼリーを取り出す。
これは樹の上から落ちてきたスライムのものだ。
リンがハチミツをゼリーにかけて差し出してくる。
「うん、うまい!」
「うまっ! んー。でもハチミツがおいしいだけっスね!」
「トウコちゃん……もう少し言い方ねー?」
元も子もないこと言いよる!
料理だって塩や砂糖をいれなきゃおいしくならない。
「まあハチミツゼリーとして美味いんだから、これはこれでヨシ!」
相性ってもんがある。
ハチミツをパンにかけたらうまい。
だけどご飯にはかけては食べない。
ハチミツとゼリーは相性がいいと言える。
つまりうまい!
「ゼンジさん。【調理】スキルを取るのはどうでしょうか?」
「ん? 料理を作るスキルだっけ?」
「リン姉は料理できるから要らないんスよね?」
スキルがなくても料理はできる。充分にうまい。
だから【調理】は選ばないことになったはずだ。
「【調理】の中に【調味】があるの。味をつけたら、おいしく食べてもらえるかなって……」
ああ。水たまりゼリーをおいしく食べるためか。
そのためにスキルを取る必要はないと思える。
リンのスキルは簡易モードだ。
一つのスキルに複数のスキルが含まれる。
たしか【調理】に含まれるスキルはこんな感じだったはず。
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【調理】【調味】【温度感知】【料理無毒化】
【食材保存】【食材加熱】【食材冷却】【食材攪拌】
【食材計量】【タイマー】
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料理には便利だが、戦闘には使えそうにない。
そして簡易モードはスキルの取得に十ポイントもかかる。
「……料理人のスキルは【食材】だけで充分じゃないか?」
「そうなんですよねー。調味料を使えばいいし……。もったいないですよね……戦えるスキルをとりたいし……」
リンは次のスキルをどうするか悩んでいるようだ。
【火魔法】のレベルを上げるには大量のポイントが必要だ。
「俺は戦闘系を推す! 戦いでもリンを頼りにしているからな!」
「はい! 【調理】はやめましょう! 戦えるスキルを考えますね!」
おう……!
迷いがあっさりと消えてしまった!
かすかな物音にトウコが反応した。
「あっちからシカが来るっス!」
俺は槍を取り出し、分身に持たせる。
「んじゃ、あれをしとめたら帰ろうか」
「はい! 帰ってごはんにしましょう!」
ボス鹿の上質肉を食べるのだ!
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