四大元素の忍法! 俺にぴったりなのは……?
火術。
忍者は火の扱いを得意とする。
敵の拠点や住居を焼くもよし。逃げるとき注意を引くもよし。
【火忍法】はフィクション忍者が使う火遁の術に近い。
リンが俺の顔色をうかがっている。
「それで……ゼンジさん……【火忍術】を取るんですか?」
「いや、取らないよ。火はリンが使えるしな」
リンは安心したように、ほっと息を吐く。
「よかったー。私、それしかできないから……」
やっぱり、気にしていたんだな。
「リン姉は戦わなくても最強だから大丈夫っス!」
リンは多彩な職業を持つが、攻撃に使えるのは魔法使いだけ。
「モデルも料理人も便利だし、戦うだけがスキルじゃないぞ」
「でも、一緒に戦えるスキルは【火魔法】しかないんです!」
ついこの間、相談された件だ。
リンは戦闘面で置いていかれることを心配している。
レベルも今は俺のほうが上だ。
火による攻撃という役割を奪うのは酷である。
「火はリンに任せる。それに俺が【火忍法】を取ったって追いつける気がしない!」
「リン姉の魔法は強すぎっスよね! チートっス!」
スキルレベル以上に強い。
これは【火魔法】が強いというよりはリンの資質である。
「そ、そうですか? じゃあもっと、がんばりますね!」
「うん。まあ、無理せずいこう」
真面目な顔でこぶしを握りこむリンであった。
リンが収納から取り出した茶を飲みつつ、スキルを吟味する。
「【火忍法】のほかに地、風、水の忍法もあるな。あと【影忍法】【幻術】もある」
「基本はそろってるんスね! 影が楽しいっスよ!」
「シャドウさんとかぶるだろ! 幻術もハルコさんとかぶるわ!」
「おもしろ術は何人いたっていいっス!」
「誰が面白さで選ぶか!」
「じゃあ、店長っぽいのは土属性っス!」
どっしりと頼りがいがある感じか?
俺はどっしり構えるタイプじゃないが。
土属性なら大河さんだろ。
「どこらへんが土っぽいんだよ?」
トウコが笑いながら言う。
「泥くさいトコっス!」
「うれしくねえよ! 地味ってことか!?」
「しっかりしてて、地に足がついていて……素敵です!」
「さすがリン! こういうホメ言葉がうれしいわ!」
「あたしもほめてるっス!」
「どこが!?」
ホメてるつもりだったのかよ!?
「勝てなくても相手が強くてもあきらめない感じっス!」
「あー。まあ、ホメてるのか……」
トウコが言っているのは冷蔵庫の件だろう。
ヒーローなら、ピンチに颯爽と駆けつけ、敵をなぎ倒す。
俺はそうじゃない。確かに泥臭い。
それを認めてくれるなら、ちょっとは頑張りがいもあるってもんだ!
俺は照れ隠しに話題を変える。
「どっちかと言えば俺って風属性じゃないか?」
「え? サワヤカイケメン枠に立候補っスか?」
言われてみれば水と風はイケメンか美女枠かもしれん。
そういう意味で言ったんじゃない。
「いや。身軽で自由な感じが……」
「そうですね! ゼンジさんに合います! かっこいいです!」
さすがリン! やたらほめてくれる!
でも持ち上げすぎだ!
「お、おう」
「店長のどのへんが風なんスか?」
じろじろ見るな。失礼だぞ!
「毒を使うのに風を操れたら便利だろ? 風下に立ったうぬの不覚よ! ってやりたいんだ」
「ぜんぜんサワヤカじゃないっスね!」
「風属性の毒使いは風上から無双する。解毒剤をくれと言ってももう遅い! って感じだ」
「毒使いが主人公とか、売れないっス!」
リンは首をかしげている。
「えっと……ゲームの話でしょうか?」
「あ、別にそういうゲームや漫画があるわけじゃないぞ」
言ってみただけである。
「でも風と毒は相性よさそうっス! あ、毒属性ってないんスかね?」
「毒忍法はないな」
スキルは個人の適正によるから、なんでも選べるわけじゃない。
「影忍法があるなら、光忍法もありそうですよねー?」
「光忍法もない。まあ、適正の問題かな? 光は俺にはまぶしすぎるぜ!」
「そうでしょうか? 私から見ればゼンジさんは明るくて、素敵で……」
リンは過大評価がすぎる!
「店長は陽キャには見えないっスねー!」
トウコは過小評価しすぎだろ!
いや、間違っちゃいないか。
「たしかに俺は影属性よりだよな……って、言わすな!」
基本的な属性――地・火・風・水の四大元素は選べる。
どれも魅力的だ。
リンと被るから火は外す。
となると残るのは――地、風、水。
地、あるいは土。
これは地味に思われがちだが、かなり強い。
なにしろ土は足元にある。
金属も土だし、毒も土に含まれることがある。
風、あるいは空気。
これもいい。空気は自分の周囲にあるからな。
カマイタチのような攻撃だけでなく、空気そのものを操作して窒息させたりと応用が利く。
侮られがちだが、実は強いやつ。
水は難しい。
周囲に水があるとは限らないから、使える状況が限られる。
水場から離れると使えなくなってしまう。
でも雨の日は無双できそうだ。
それに、水そのものを生み出せるならアリかな?
【影忍法】はロマン枠。忍者っぽくていい。
【隠密】との組み合わせでいろいろできそうだ。
でもシャドウさんとかぶるのでパス!
【幻術】はテクニカル。使い手次第では強い。
だがパスだ。
ハルコさんの異能と被るし、俺には分身があるからな。
「うーむ。どれも魅力的なんだが、しっくりこないな」
どれもよさそうなのに、決めかねる。
なにか引っかかるんだよな。
リンが言う。
「それって、いつもゼンジさんが使ってる術と違うからですか?」
「ああ、そうそう! 違和感の正体はこれか!」
言われてみればそうだ。
「どういうことっスか?」
「俺の術って、こういう属性系じゃないだろ? 分身とか入れ替えとかさ」
しいて言うなら忍者属性である!
魔法や忍法は似合わない。
「あー。そうっスね。店長は大技でどーんって感じしないっス!」
「今までの戦い方と違いすぎるから、ぶれる気がするんだ!」
となると俺が目指す方向性……理想のビルドは――
ご意見ご感想お待ちしております! お気軽にどうぞ!
「いいね」も励みになります!
 




