逆手で刀を振るには……!?
本日三話目!
「うーん。この後は、どう振るのがいいか……」
俺は洞窟の拠点で一人、刀を振っている。
フォームをチェックして、改善しているところだ。
「振りきった後の動きが難しいんだよな」
忍者刀を片手で構える。
刀身を小指側にした逆手の握りだ。
忍者らしい構え。
それらしいからやってるだけではない。
逆手で刀を握るのは、洞窟だからだ。
場所に合わせて構えも変わる。
狭い洞窟では大上段には構えられない。
刃は体に引きつけてコンパクトにする。
片手で扱う理由はほかにもある。
俺の武器スキルは【片手剣】だからだ。
刀は両手で扱うこともできる。
でもそれじゃあスキルが発揮されない。
剣道のように両手で構えたほうが、取り回しはいい。
二本の腕をテコのように使ってきり返せばいい。
普通の刀の使い方ならイメージしやすい。
だが、片手だとそうはいかない。
俺はフォームを意識しながら刀を振る。
下から上へと刀が走る。
「まず一撃! これはいい」
逆手に構えると、相手を斬れるコースは限られる。
縦に切るときは下から斬り上げる動き。
横に振ればボクシングのフックのような横薙ぎの軌道だ。
「二発目――!」
手首を柔らかく回転させて切り戻す感じ。
ナイフや小太刀のように、ひるがえらせる動きだ。
忍者刀は一般的な日本刀よりも短い。
大刀と小太刀の中間のような使い方ができる。
それは逆に中途半端とも言える。
片手で扱うには重すぎて手首に負担がかかるのだ。
それに、逆手だと力もかけにくい。
俺の刀は峰が分厚くなっている。打撃に使うためだ。
これも軽さを犠牲にしている。
斬る、叩く、突く。全部できる。
両手でも片手でも扱える。
なんでもできるが、突き抜けていない。
持ち主の俺に似て器用貧乏である。
さすが相棒。さすが愛刀!
逆手にはデメリットが多い。
それなのになぜ使うのか。
それは俺の戦い方に起因する。
攻撃よりも防御に重点を置いているからだ。
被弾しないこと。
相手の正面に立たないように立ち回る。
走り抜けるようにして、すれ違いざまに斬る。
この場合は逆手のほうがやりやすい。
力ではなく刃の鋭さで撫でるように斬る。
狭い場所では肘の側に引きつけておけば小回りが利く。
走るときも壁に張り付くときも邪魔にならない。
刀をひじに引きつけて後ろに回せば、正面からは刀身が見えない。
対人戦では虚をつくことができる。
しかしこれはダンジョンでは役に立っていない。
なぜなら、相手がモンスターだから。
突っ込んでくるばかりで駆け引きが生まれにくい。
コウモリやクモは本能的な動き。ゴブリンは単純。
剣の理など考える敵はいない。
俺の剣は我流で、まともに学んだものではない。
スキルから流れ込んできた知識と、漫画やアニメによるものだ。
それだけでは足りないので剣術や体術も研究している。
動画で気軽に武道に触れられる現代は素晴らしいよな。
とはいえ見るのとやるのとは違う。
細かい動作はしっくりこない部分もある。
それをこうして練習して修正していくのだ。
今度は手首の返しを使わない攻撃を試す。
「問題は二撃目なんだが……」
下から上に刀を振る。
びっと風を切り裂く。
斬り上げた後は、突きさすように振り下ろす動きが自然だ。
うん。これもいい。
次は横。
右から左へ薙ぐ。
手首を返して斬る。
縦の場合と基本は同じ。
横薙ぎからの突き。
肘うちのように戻しながら突き刺す。
実戦では脇を切るように通り過ぎて、背中へ突き刺す感じになる。
悪くない!
フォームの確認はいいだろう。
次は実戦だ!
間違えて明日の分を投稿……!




