クナイ、良くない!? 【装備】【スキル検証】【片手剣】【ファストスラッシュ】
忍者感マシマシ!
クナイの先端は鋭く、美しい。
輝く水晶の明かりの下で見るとその刃は芸術的ですらある。
艶消しの黒色のため、光を反射して輝くことはない。
漫画やアニメではキラキラと光を反射して飛ぶクナイがよく出てくる。
すごく格好いいし絵として映える。俺も好きだ。
だが、ここでは目立たないほうがいいのだ。
暗闇に潜み、暗殺をしようという時には。
暗殺する武器として、やはり切れ味鋭い刃物が最適だろう。
バットやナタで切りかかるのはスマートではない。
首をかき切ってヨシ、臓器を一突きにしてもヨシ。
殺り放題だ。
一応は、投げることもできるが……。
この四階層では、地底湖に池ポチャしてロストする心配があるので、今は投げない。
さっそくクナイを使って【片手剣】の検証を続けよう!
まずは【片手剣】が発動するかの確認からだ。
ナタも短いが、片手剣として扱われた。
ナタは刃渡り20センチほど、柄を含むと40センチだ。
作ったクナイはこれより短く、全長30センチ。
手に持ってみれば剣らしく感じられるので、大丈夫だとは思うが……。
もし長さが足りないことでスキルが乗らないとなれば、見直しが必要になる。
素材があれば、より長くしたりという調整もできる。
ダンジョンで鋭い刃物を使うのは初めてになるな。
まずは順手に持つ。親指と人差し指側に刃が来る。
普通の片手剣の持ち方と言える。
俺には剣術や武道の経験はない。
最近は、時間があればダンジョン攻略に役立つような動画を見ている。
忍術や古武道の動画はさんざん見た。
剣道やフェンシング、居合や日本刀の動画も見て勉強した。
俺にあるのはその程度の知識だ。
なので、このあたりは手探りでやっていくしかない。
スキルによっては知識を与えてくれるものもある。
【歩法】【軽業】は知識やコツのようなものが流れ込んでくる感じ。
技術のインストールみたいだな。
【打撃武器】や【片手剣】ではそういう技術の向上や知識の流入がほとんどない。
使い方がなんとなくわかる程度。
【片手剣】の基礎スキルは、知識や技術を与えてくれない。
基礎スキルは関連スキルを解放するだけのようだ。それ以外の効果はない。
【片手剣・威力強化】は、威力が上がるだけ。
スキルによって、知識が増えるタイプと、威力が上がるタイプがあるんだろう。
【歩法】などの技術のインストールがあるものとは違う感じだ。
この違いはなんだろう。
いや……脱線はよそう。
今はクナイ、そして【片手剣】の確認だ。
クナイを構えて、俺は少し戸惑っている。
「うーん。どう構えればいいんだ?」
正解が分からない。
ボクシングみたいに構えるか?
フェンシングみたいに構えるか?
うーん。バットなら構えなんて気にせず振り回せるんだけどな。
なまじちゃんとした武器を作ってしまったから、気持ちが構えてしまっている。
固くなっているんだな。
いかんいかん。
忍者は虚実にとらわれてはいけないのだ。
常識や固定観念を持ってはいけない。
セオリーや、テンプレや、ルールに縛られない。
ありえないと思うことだって起こりうる。
あると信じていたものが通用しないこともある。
武器の構えも、決まったポーズにこだわらないのがいいだろう。
クナイはどう構えることもできる。
持ち方も、方向も自在だ。
自然体でいこう!
上から下へと振り下ろすように振ってみる。
空気を裂くような音を立て、振り下ろされる刃は軽い。
バットやナタに比べて軽量で、小ぶりなクナイは扱いがたやすい。
連続で振っても、突いても、すぐに次の動作に移れる。
「ファストスラッシュ! ……よしっ!」
ちゃんと発動する。つまり、片手剣として扱われる。
そして、発動したファストスラッシュは、これまでで最速!
敵を止める力はこれまでの武器に劣る。
しかし、刃物としての鋭さで殺傷力は充分。
打撃力ではなく、切断力や貫通力なのだ。
相手の急所へ命中させれば、致命的な損害を与えられるだろう。
俺は素早さに特化した忍者だ。
ゴブリンやコウモリよりは素早く動ける。
小さな力でも、相手の急所を切り裂けば力は要らない。
当然だが、クナイは打撃武器ではない。
一応試してみたが、柄頭で打撃を意識して振っても【フルスイング】は発動できなかった。
まあ、試す前からわかってた。
当たり前だな。
【打撃武器】でなくてかまわない。
【片手剣】の対象になってくれているだけで御の字だ。
【小剣】や【短剣】【刀剣】じゃないとダメだと言われても困る。
【軽業】のおかげで手の中でクナイをくるくると回すこともたやすい。
順手から逆手。輪に指を入れて回転させてまた順手。
手を後ろに回して腰の後ろで左手に投げ渡す。
左手で輪の部分を握って、これまでとはリーチの違う刺突を繰り出す。
敏捷とスキルのおかげで、自在な手さばきだ。
ちょっとした曲芸師や手品師のようだ。
軽く小さなクナイは、体の延長のように自由自在だ。
「うむ、これは楽しい! 武器として使えなくてもいいくらいだ」
クルクルと武器を回しているだけでも楽しい。
もちろん武器として使うけど。
コイツを使うのが楽しみだ。
「よし、ゴブリン発見。試し切りさせてもらうぜ!」
あいかわらずの4人組。
少し広い足場なので、二人ずつ二組のような隊形だ。
俺は正面から隠れずに向かっていく。
投擲で数を減らすこともしない。
「ギッ!」
「ギャギャ!」
今回は分身も出さない。多対一を想定しての戦闘だ。
まあ、ヤバくなったらすぐ逃げるし、分身も投擲も使う。
こだわらないで、自然体で戦うのだ。
正々堂々やる必要なんてない。
「さて、こっちから行くぜ!」
こちらを発見して騒いでいるゴブリンは、まだ行動に移っていない。
素早く距離を詰める。
右手に握ったクナイを逆手に持ってだらりと下げるようにして走る。
いわゆる忍者走り……両手を後ろにして頭を突き出すような走り方。
正面の敵からは、腕に視線を遮られてクナイは見えない。
親指側に柄頭の輪は見えているが、注意していなければ気づかないだろう。
俺が狙うのは、左前の奴からだ。
走りながら距離を詰めた俺をゴブリンが迎え撃つ。
「ゴブッ!」
振り下ろすような棍棒の一撃を、左側に身をそらすように躱す。
この時、俺の体勢は右手を引いたような半身。
すれ違いざまに、逆手に握ったクナイを下から上に振り上げる。
「アギャアァ」
ゴブリンの喉元を切り裂き、血が噴き出す。
走り抜けた俺は返り血を浴びる位置にはいない。
すでにその先、奥のゴブリンへ向かっている。
奥のゴブリンはまだ構えてもいない。
武器は片手斧を下げている。
「ウギッ?」
ゴブリンが武器を構えた頃には、もう俺はその背後に回り込んでいる。
回り込むときの回転の勢いを乗せて、裏拳のようにクナイを打ち込む。
鋭い切っ先はたやすくゴブリンの背を貫き、切り裂く。
「ギッ……ウゥ……」
「二体目ッ!」
俺は常に一匹の敵と対峙する位置を取る。
接敵している敵を挟んで、その後ろにほかの敵がいる位置取りだ。
こうすることで、実質は一対一の戦いを繰り返すことになる。
死に体のゴブリンの腰のあたりを蹴り飛ばす。
蹴られたゴブリンが、もう一匹のゴブリンによろめいて倒れ掛かる。
仲間に寄りかかられて自由に動けないゴブリンの喉をつく。
声もなく、三匹目が絶命する。
蹴られたゴブリンも力尽きて塵と化す。
「これで三体!」
「ギアァ!」
そこへ、最後に残ったゴブリンがナイフを構えて突進してくる。
その顔は怒りと憎悪に染まって醜く歪んでいる。
なかなかの迫力だ。
しかし奴の武器はナイフでリーチはない。
突き出されたナイフの速度も遅い。
俺のほうが速い!
「ファストスラッシュ!」
ゴブリンのナイフが届くよりも前に、クナイがその胸を穿つ。
「ゲッ!」
「ラストっ!」
これで致命傷だ。
クナイを引き戻す動きのまま、半身をそらしてゴブリンの進路から身をかわす。
ゴブリンは武器を取り落とし、二三歩泳ぐように走ると、前向きに倒れこんだ。
後には魔石だけが転がっている。
「よし、全滅! ううむ。いいな! すれ違いざまに切ったり、背後に回って突くことが自然にできる。急所に当てれば一撃で倒せるし、威力も充分!」
リーチの短いクナイだが、小回りが利いて自分の手の延長のように扱える。
ナタの時にはリーチの短さが気になっていた。
それは小回りが利かないからだ。
ナタは重量がある。
このせいで、細かく振り回すことができない。
一撃を外した場合のリスクが大きいのだ。
その点、クナイは外しても二撃目を打つ余地がある。
ファストスラッシュを温存しておけば、リカバリーがきく安心感があるんだ。
やはりクナイは忍者によく馴染むッ!
ご意見ご感想、ブクマ評価いただけると嬉しいです!




