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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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スナイパーでレンジャーでニンジャー!?

 俺はスナバさんに向けて言う。


「シズカちゃんはサイレンサーで、スナバさんがスナイパー、というわけですね」

「あ、お二人がそうなんですか!」


 御庭と面談したときトウコがカッコいいと喜んでいた二人組(ツーマンセル)だ。


「まあ、そうだ。コードネームなどやめろと言っているんだが、御庭は聞いてくれない」


 スナバさんはやれやれと首を振る。

 わかるわー。


「俺なんてザ・ニンジャとか言われてる。ダサすぎるだろ……」


 俺はまだ受け入れていない。

 勝手に呼ばれるだけである。


 リンはぐっと小さなガッツポーズを作る。


「私はいいと思いますよー? ザ・ニンジャ!」

「そうか? リンやトウコのはまだマシだと思うけど……」


「私はファイアスターターですねー。トウコちゃんはザ・ガンスリンガーで……かっこいいですねー!」

アソ(トウコ)さんは銃を使うのか。俺もそうだ。いずれ腕前を見せてもらいたいものだな」


「スナバさんはやっぱり、スナイパーなんですか?」

「狙撃専門ではないがな。俺はレンジャーだ」


 リンは首をかしげる。


「れんじゃー? 変身するんですか?」

「リン、そうじゃない。変身戦隊モノのナントカレンジャーとは違うからな?」


 リンは漫画や特撮に(うと)い。

 頑張ったけどハズレである。


 海外でレンジャーと言えば森林保護官とか公園保護官を指すことが多い。

 日本だと変身ヒーロー部隊のイメージが強い。

 あるいは救助隊。オレンジ服のレンジャーかな。


「あれ? そうなんですか?」


 スナバさんの物腰からして、軍事関係の意味だと予想できる。

 もちろんリンは軍事用語にも明るくない。



 俺はスナバさんへたずねる。


「スナバさんは自衛隊の方なんですか?」

「もう退職しているがな」


 元自衛官か。


「ええと、レンジャーってどういうものなんですかー?」

「簡単に言えば特殊部隊員だ。偵察や潜入、襲撃や爆破、生存(サバイバル)技術などを得意とする」


 自衛隊のレンジャーといえば、エリート兵士である。

 かなり厳しい訓練をクリアしないと認められない。


 隠密行動や情報収集なども行う。


「なんだか、忍者みたいですねー」

「たしかに現代の忍者って感じだな」


「俺が扱うのは主に小銃(アサルトライフル)だ。街中で長距離射撃の機会は少ないから狙撃銃(スナイパーライフル)は使わない」

「今日はどちらも持っていませんね?」


「ああ。戦闘を想定した任務ではないからな」

「銃を持って歩くのはマズいですよね」


「そういうことだ」


 銃刀法違反である。

 ライフルは目立つ。


 俺だって刀は帯びていない。

 【忍具収納】の中にある。


 スナバさんも隠し持っているかもしれないな。



 スナバさんが言う。


「シズカの話に戻そう」

「はい」


 スナバさんはまじめな顔で続ける。


「俺はある任務で、さらわれた子供を追っていた。施設を突き止めて潜入したが、もう連中は逃げた後だった。そこは――」


 スナバさんは暗い表情で頭を抱える。

 俺は続く言葉を待つ。


「――地獄だった。ろくな食事を与えられずに死んでいる者。血を抜かれている者、目を潰されている者……。皆、助からなかった。助かったのは……助かってくれたのはシズカだけだ」


 リンは悲しげに首を振る。


「そんな……ひどい」


 俺はスナバさんにたずねる。


連中(れんちゅう)……それをやった奴らはどうなったんですか?」


「何人かは始末した。その前に吐かせた情報によれば、他の子供たちは俺が襲撃する前に移動したらしい。連中は商品と呼んでいた。成功例だとな。つまり生きている。だから俺は連中を追っている。任務とは関係なくな!」


 ……なんてことだ。

 孤独な子供なんて生易しいものじゃない。


「その施設は子供にダンジョンを呼ばせるためのもので、それを売り物にしていたってことですか?」

「そうらしい。ダンジョンをどう売り買いするのかはわからんが……」


 ダンジョンは個人に紐づいている。

 他人のダンジョンを奪うことなんてできるのか?


「ダンジョンなんて、どうして欲しがるんでしょうか? ふつうの人は入れませんよね?」


 持ち主が死ねば消える。

 パージされた場合も消える。

 ダンジョン保持者でなければ中には入れない。


 たしかに普通の人にとっては意味がない。

 だけど――


「ダンジョン保持者なら……! ダンジョンの中に入れるし、意味があるのかもしれない」


「どんな理由があるにせよ、あんな地獄は二度と繰り返させない。連中を探し出して償いをさせる!」


 スナバさんは決意を込めたように言う。



 他人の問題だ。

 でもこれは個人の復讐とは違う。


 スナバさんにとっても無関係。

 任務だったはずだ。


 彼がやらなきゃならない理由なんてない。

 俺にもない。


 ちょっと話を聞いただけの事件に過ぎないし、関わる必要はない。


 だが、そう簡単には割り切れない。


 ダンジョンに苦しめられる人を救いたいから、俺は公儀隠密に入った。

 ましてや、ダンジョンのために子供を苦しめるなんて、許されない!



「……俺も協力しますよ」


 自然と、そう答えていた。

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