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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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足を使った情報収集! 密室消失事件!?

 スナバさんと俺は初対面だ。

 だが、彼は俺たちを知っているという。


「任務で関わったって、ショッピングセンターのときですか?」

「いや。アソさん(トウコ)の件だ」


 リンがポンと手を叩く。


「ああ! トウコちゃんの家で、はじめて御庭さんと会った日ですね!」


 それは、冷蔵庫が悪性化寸前まで行ったとき。

 俺たち、御庭たち、大河さんたちが三すくみ状態でにらみ合っていたときだ。


 御庭たちはチームで動いていた。

 御庭とナギさん以外は姿を見せなかったけど、他にも誰かいたのは間違いない。


 ……とすると。

 当てはまるのは――


「つまり大河(たいが)さんを狙撃した人ですね!?」

「そうだ。窓を撃ち抜いたのは俺だ。本人に会うことがあれば直接謝罪しようと思っていた」


 スナバさんは無表情だ。

 誇るでもなく、悪びれるでもない。


 任務であり悪いことはしていない。

 そういうことだろう。


 それでも窓や家具を破壊したことを謝罪しようとしている。

 律儀(りちぎ)だな。


 あの時点での大河さんたちは敵対勢力だった。

 ナギさんと犬塚さんはバチバチに戦ってたし。


 一方、俺たちは保護対象だった。

 だから大河さんが俺のほうへ向かって踏み込んだとき、その足を狙撃したんだろう。


「俺を守ろうとしてくれたんですね?」

「そうだ。結果的には無用だったが」


 たしかに、意味はなかった。

 銃弾は効かなかったし、大河さんは敵じゃないし。


 俺は微妙な表情で言う。


「なんて言えばいいのかわからないが、援護ありがとう?」

「いや。礼はいい」


 スナバさんもやや微妙な表情だ。

 彼に人間らしい表情が浮かんだのをみて、俺は少し気楽になった。


 なんか緊張感あるんだよな、この人。



 そういえば、何の用なんだ?


 さっき鍵の件を手配してもらったけど、それにしちゃ早すぎる。

 偶然、近くにいたとか?



 俺は聞いてみる。


「もしかしてスナバさんたちが、鍵を開けてくれるんですか?」

「鍵? なんのことだ?」


 あれ?

 話が噛み合わないな。


 もしかして関係ないのか?

 ただ挨拶してくれただけ?


「違うんですか? 実は――」


 俺は事情を説明する。

 スナバさんはうなずく。


「そういうことなら同行しよう。ちょっとした鍵くらいなら開けられるからな」


 そういうことになった。




 結局、鍵開け要員は別の人を手配していていたようだ。

 御庭にはスナバさんに変更することでオーケーをとった。


 さっそく、俺たちは車で送ってもらい、スゲタリヒト氏のマンションに到着した。


「ここか……」


 リヒト氏の部屋の前にやってきた。

 俺はドアノブに手をかける。回らない。


「やっぱり、鍵がかかってるな。お願いできますか?」

「ああ。ちょっと待て」


 スナバさんは手になにか持っている。

 針金のようなものだ。


 それを鍵穴に差し込んで数秒後――


「開いたぞ」


 そう言いながらスナバさんはドアノブを回す。

 鍵は開いている!



「すごいな。スナバさんってこういうの得意なんですか?」


 スナバさんは誇るでもなく悪びれるでもない。

 淡々と答える。


「少しな」


 スナバさんがゆっくりドアを開ける。

 その手が止まる。


「内側にドアガードがある――ちょっと待て」


 チェーンタイプではなくて、U字タイプのドアガードのようだ。

 これ以上ドアは開かない。


「これじゃあ、外からは開けられないか?」

「いや、問題ない」


 スナバさんはどこからか細いヒモを取り出す。

 それをドアガードに結び付け、一旦ドアを閉める。


 なにをやっているのか、細部はよく見えない。


 そして――

 かしゃん、と小気味よい音を立ててドアガードが開く。


「これで入れるな」


 スナバさんはゆっくりとドアを開け、室内を確認する。

 慎重な動作だが、機敏で隙が無い。


 当たり前のように部屋に侵入していく。

 シズカちゃんもとてとてと、後に続く。


「おお……いとも簡単に!」

「すごいですねー」


 あとでやり方を教えてもらおう!

 感心する俺たちに、スナバさんが言う。


「この程度のドアや鍵は簡単に開けられる。あまり過信しないほうがいいぞ」

「簡単て! 普通は無理ですよ。リンの家に入るときは大変だったし……」


 普通は鍵やチェーンロックは突破できない。

 針金やヘアピンで鍵開けなんてムリだし!


 ん?

 スナバさんが怪訝な顔で俺を見ている。


「……彼女の家に忍び込もうとしたのか?」

「ああ、いやいや! へんな意味じゃなく!」


 あ、不審者みたいになってる!?

 誤解を招く言い方をしてしまったぜ!


 リンがなぜか自慢げに言う。


「壁から助けに来てくれたんですよー! すごいですよね!」

「状況がよくわからんが……」


 スナバさんは淡々と返す。

 ちゃんと弁明できたんだろうか!?



 俺たちは部屋を見回す。


「部屋は荒れてないな。リヒトさんは片づけのできる人だったようだ」

「いなくなっちゃったから少しホコリが積もっていますけど、ちゃんと掃除してたみたいですねー」


 床には薄くホコリが積もっている。

 歩くと足跡が残る。


 ちなみに俺たちは土足で上がりこんでいる。

 なにかあったときのためだ。



 スナバさんが言う。


「先客はいないようだ。この部屋に入るのは俺たちが最初だろう」



 室内は整然としている。

 争った形跡はない。


 ハカセの調査では、リヒト氏は自室にいるときにパージされたという。

 つまり部屋の中で携帯電話(スマートフォン)の電波が途絶えたということだ。


 ここは密室だった。

 死体はないし、争った形跡もなかった。

 そしてマンションの監視カメラ映像にも映っていない。


「やはり、ここの住人は切り離(パージ)されたんだろうな」

「そうみたいですねー」


 異能やスキルで転移した可能性はあるけど、考えたらきりがない。



 デスクの上にはパソコンが置かれている。

 一冊のノートが伏せられている。


 俺はノートを手に取ってページをめくる。


「やはりリヒト氏はダンジョン持ちだったようだ!」


 ノートに書かれていたのは――ダンジョンの地図だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] スナバさんて主人公より忍者っぽい… 隠密としてスニークミッションとかお手の物っぽい感じが
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