リアルダンジョン攻略記の調査結果! 浮上した名前とは……!?
腕時計の端末から御庭を呼び出す。
すぐに応答があった。
「やあクロウ君。どうしたのかな?」
「――という訳なんだが、時間あるか?」
俺は事情を説明する。
「僕は外出している。ハカセとは話せるよ」
「そうか。刀や槍を持ってたら見せてもらおうと思ったんだけど――」
「そうかい! 今度見せてあげるよ! 古今東西、あらゆる流派のめずらしい忍具の数々をね!」
「あ、やっぱり集めてるんだそういうの……」
少し会話して、通信を切る。
武器は今度見せてもらうことになった。
今日は御庭は不在。
でもハカセは拠点にいるらしい。
というかハカセは常に拠点にひきこもっている。
そういう訳で、御庭の拠点へやってきた。
寺の境内に入る。
「ん……?」
何かいやな感じがする。
ダンジョンの外では【危険察知】は働かないはずた。
だが似ている。
「急にどうしたんですか、ゼンジさん?」
立ち止まった俺にリンが声をかける。
もういやな感じは消えている。
周囲を見回してみても、異常はない。
「誰かに見られているような感覚というか……。言葉では説明しにくいんだけど」
「そうですか? 誰もいませんよー?」
さびれた廃寺だ。参拝客などいないし、人影はない。
「ま、気にしてもしょうがないか!」
ここは味方の拠点だ。
あまり気を張ってもしょうがない。
といって気を抜きすぎないように、警戒は残す。
俺たちは本堂ではなく御庭の事務所がある建物へ向かう。
この地下に公儀隠密の拠点がある。
ハカセはここにいる。
「お、来たねー。クロウっち! オトナシっち!」
「どうも」
「こんにちはハカセさん」
俺たちは軽くあいさつを交わすと本題に入る。
「で、今日聞きたいのは頼んでおいた件なんだけど……」
「もう調べ終わってるよー。聞きに来ないから興味ないのかと思ったんだけどさー?」
「あ、もう調べ終わってるんですね!」
「そりゃそうさ! 俺っちの腕で調べられないことなんて、あんまりないぜ!」
あんまりない、か。
さすがに何でもわかるわけじゃないんだな。
「調べ終わってたなら教えてくれよ!」
「まあ、そのあと色々あったし、こっちも忙しかったからねー」
「ああ、ショッピングセンターの事件か」
「他の事件の後片付けもそうだし、いろいろあんのよ」
「そりゃお疲れさん。聞かせてもらえるか?」
「いいよー。リアル・ダンジョン攻略記についてね。前も言ったけど、ネット上にそういうサイトは存在しない」
最初に頼んだ時に見てもらった。現時点で、ネット上にサイトは存在しない。
俺はうなずく。
「ああ、そうだったな」
「過去存在していた形跡もなかった。だけどそれを検索した人は何人かいる。クロウっちみたいにね」
俺はたしかにリアダンを読んだし、その内容も覚えている。
でもネット上には存在しない。
俺のパソコンも調べた。
だけどブラウザのお気に入りにすら登録されていなかったし、閲覧履歴にもなかった。
「それで、その人たちの端末にも侵入したのか?」
「咎めるような言い方はよしてくれよ? 該当者は三名いた。そして全員――行方不明なんだ!」
リアダンを検索していたということは、俺と同じ立場ってことだ。
あるいは、探ろうとしていた何者かって線もあるか?
ハカセが探し出せなかったということは、本当に行方が知れないということ。
つまり――
「――その人たちはパージされたってことか?」
「だろうねー。クロウっちは激しい頭痛を味わったんでしょ? それは認識阻害の働きだ。それでも危険な情報を知ろうとしたらいずれは追放されちゃうよねー?」
俺は危険性に気づいて途中で調べるのを後回しにした。
パージの実例も見た。
そうでなければ、他の人たちと同じ末路だったのかもしれない。
リンが口を押えて言う。
「そんな……」
「その人たちを調べてみたけど、明確な共通点はなかった」
「いちおう俺も確認したい。見せてくれるか?」
「いいよー。ほい!」
ハカセが軽快にキーボードを叩く。
ディスプレイに情報が映し出される。
顔写真、名前、住所。個人情報がこれでもかと書き出されている。
その中に気になる名前を見つける。
「スゲタ リヒト……?」
リヒト!?




