ショッピングデートはあの場所で……!?
藪を焼いて宝箱を回収していく。
茂みの中には数匹のスライムが潜んでいて、簡単にまとめて倒せる。
平地にいるスライムより集まっているので、効率がいい。
「昔はもっとこういう場所があったんですけど……」
「どんどん焼いてたら減っちゃったんだな」
「そうなんですー」
「やっぱりレベル上げのためか?」
リンは少し恥ずかしそうに言う。
「いえ……。ゼリーを集めてて……」
「ああ、食べるためか」
食費の節約という切実な理由であった!
「一人で戦うのはこわくて、遠くには行けなかったので……」
リンは方向音痴だしな。
拠点の見えないような場所に一人で行ったら迷子になってしまう。
ダンジョンで遭難とか、命の危険すらある。
「一人で無理しなくてよかったよ」
「今ならウサギさんやシカさんも食べられます! ゼンジさんのおかげです!」
「んじゃ、シカでも狩りに行くか?」
午後の授業はないらしい。
深いところへはトウコがいるときに行くとして、肉狩りなら問題ないだろう。
「それもいいんですけど……」
リンはちらちらと顔色をうかがっている。
ふむ?
続く言葉を待つ。
リンは意を決したように言う。
「せ、せっかくなのでお出かけしませんか?」
「ん? 出かけるって外へか?」
「はい! だめでしょうか……?」
「いいぞ。行こう!」
お出かけ。
つまりはデートである!
というわけで、俺たちはマスク姿で歩いている。
まだパンデミックは収まっていない。
これは、ショッピングデートというやつだ。
街へ出ていくつかの店を周る。
といっても、オシャレなブティックではない。
流行りのカフェでもない。
やってきたのはホームセンターである。
色気もへったくれもないね!
「これ、欲しかったんですー!」
リンは調理器具をいくつか購入した。
公儀隠密からの給料で財布はふくらんでいる。
続いて大工道具コーナーだ。
俺は斧を選びながら言う。
「ほんとにこんな店でよかったか?」
「はい! 道具を選んでるゼンジさんを見てるのは楽しいです!」
現代のお店の品質はすごい。
こんな優れた道具が一万円以下で買えちゃう!
「自分で作るのもいいんだけど、既製品はよく考えられてるんだよな。しかも安い! これなんか――」
売られている道具はどれもよく考えて作られている。
だから、安物でも見るべきところはある。
高級品や一級品でなくても参考にはなるのだ。
それに、買った品をベースにしてクラフトすれば品質はさらに高まる!
俺は道具を手に取って、使い道や改良点を述べていく。
「そうなんですねー!」
リンは笑顔でうなずいている。
あ、けっこう楽しいかも!
「刀や槍が現代で買えたら、簡単に武器が強化できるんだけどな」
さすがに本格的な武器は店では買えない。
骨董品や美術品では意味が薄いし、真剣はハードルが高い。
「御庭さんなら持ってるんじゃないでしょうかー?」
「お。そうだな! 忍者グッズ集めてそう……連絡してみるか」
あ、ハカセに頼んでおいた件も気になる!
リアル・ダンジョン攻略記と、管理人のリヒトさんのことだ。
わかったら連絡くれるとか言ってたけど、忘れられてるんじゃないか?
 




