地図情報! 交通標識クイズ!?
俺たちは管理コンソールのダンジョン情報閲覧画面の確認を続ける。
「さて、階層情報は飛ばして地図を見てみようか!」
「安全地帯がわかるかもしれないっス!」
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ダンジョン情報閲覧
・ダンジョン情報
・階層情報
・地図情報
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俺は地図情報をタップする。
画面が切り替わる。
階層を選ぶ表示だな。
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・第一階層
・第二階層
・第三階層
……
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リンが首をかしげる。
「分身さんが調べてるのに、第十一階層が表示されないんですねー」
「あれ? 二号は店長みたいなもんっスよね?」
自律には管理者権限がないからか?
あるいは俺がダンジョンの持ち主だからか?
「わからん。とりあえず第一階層を選ぶぞ」
画面が切り替わる。
かなり精細な地図が表示される。
線と記号で表現されているが、輪郭はかなり精細だ。
定規でひいたような図面じゃなくて、でこぼこも表現されている。
文字はなく、さっぱりした最小限の地図である。
リンが感心したように言う。
「ゼンジさんのダンジョンって広いんですねー」
「ああ。いつもは最短ルートで進んでるからな」
一階層は分岐が少ない。
とはいえ、外れルートを含めればそれなりに広い。
「この地図、立体じゃないんスねー」
「ん? たしかに平面だな」
高低差は表現されてない。
「触ったら変わんないっスか?」
俺は画面を両手でずらすように触れてみる。
地図の向きは回転するが、立体映像のようにグリグリ動かせるわけじゃないようだ。
「んー。できないな。でも縮尺は変えられるぞ」
操作はスマホと同じ感じ。
つまんだり広げたりして地図を拡大縮小できる。
「スマホみたいっスねー」
「そうだな、地図アプリみたいだ」
リンが不思議そうに言う。
「管理コンソールって、もっとファンタジーなのかと思ってました」
管理コンソールと呼んでいるこれは、不思議な一枚板――モノリスである。
ファンタジーかエスエフな代物。謎の物体である。
パソコンやディスプレイとは違う。
でも表示は現代的で、現代人の俺には親しみやすい。
ファンタジー的な地図だとすれば、ぼろぼろの羊皮紙ににじんだインクで書いた地図みたいになるだろう。
忍者っぽくするなら墨で描いた白黒の巻物になるだろう。
そのほうが雰囲気はあるよな。
「これは俺の認識をくみ取ってるんじゃないか?」
「スキルもそうっスよね!」
操作がスマホっぽくなる。
スキルがゲームっぽくなる。
ダンジョンのルールやスキルの効果には幅がある。
管理コンソールの操作方法が現代的なのも同じだろう。
持ち主の意識を反映している。
てことは――書き換えることもできるんじゃないか?
「この階段の表示、わかりにくいよな?」
「そうっスね」
俺は地図の階段部分を指さす。
階段の表示は記号で表現されている。
この表示を変えようと意識してみる。
――できた!
表示が変わって、記号の横にくだり階段と表記されている。
「……あれ? さっきはサンカクみたいな記号だけだったっス!」
「表示を変えれるんですねー!?」
――俺の認識で地図も書き変わる。
「安全地帯らしきマークはないな」
「あ、それを調べるんでしたねー」
今表示している第一階層にはそれらしき記号はない。
階段は階段マークだけだ。
「安全地帯っぽいマークはないっスね!」
「第十階層を見てみるか。ボス部屋があるし」
俺が画面を切り替える。
十階層の地図は一部が欠けた状態だ。
部屋全体を歩き回ったわけじゃあないからな。
真ん中はボス部屋だ。
剣が二本、バッテン印に重なっている。
これはボス部屋を示す記号だろう。
その両側の部屋には別の記号がある!
「あっ! ここ! 下矢印みたいなやつがあるっス!」
「これ、安全地帯のマークか? どっかで見たことあるような……」
ひらがなの「く」を左に回転したような図である。
「そうですねー。どこでしたっけ? ……あ、横断歩道のところで見た気がします!」
「てことは道路標識か……? 言われてみればそうかも」
よく覚えてるな、そんなの。
いや、俺も見たことはある。
そんな、うろ覚えの知識でも地図に反映されるのか?
すげーな、ダンジョンシステム!?
「でも階段は道路標識じゃないですよね?」
「階段の標識がどんなか、ちょっとわからん」
「階段の絵みたいな感じなんですよ! 段差みたいなカクカクした図です!」
「へえ。しかし、よく覚えてるなリン」
「私、見たものを覚えるのは得意なんです!」
リンが近寄ってくる。
なにかを期待する目。
リンがやや頭を傾けて、目をつぶる。
……?
あ、撫でるのか!?
「では……」
俺はやや躊躇しながらもリンの頭を撫でる。
むむっ!?
なんだこの手触り!
髪の毛さらさらだぞ!
それでいてしっとりしている!?
指の間を流れる髪はなめらかで、癖になりそうだ。
リンは満足げに目を細めている。
「えへへ……」
「……ううむ」
ずっと撫でていたい……。
「あー! 店長、あたしのときと違くないっスか!? 鼻の下のびてるっス!」
「そりゃお前、違うだろ! ちょっとやってみろ!」
トウコがリンの頭に手を伸ばす。
「おおー!? なんスかコレ! キューティクル!」
「なんかずっと撫でてたいよな! どうなってんだこの手触りは!?」
「あっ! く、くすぐったいですー」
「あ、すまん。調子に乗ったわ!」
俺が手を離すとリンは名残惜しそうな顔をしている。
「キューティクルーっ!」
トウコはまだやめていない。
くせになっちゃうね!




