管理コンソールはオフィシャル情報で!
本日二話目!
トウコは管理コンソールを手でバンバンと叩く。
「やっぱりダンジョンってケチっスね!」
「まあ、そうむくれるな。いい情報も載ってるだろ?」
俺はコンソールを示す。
今の権限でも、ドロップ方式、宝箱、罠、安全地帯の情報は表示されている。
記述はシンプルだが、貴重な情報だ。
「でも、こんなの元から知ってるし、見ればわかるっス!」
敵を倒すと必ず魔石が落ちる。
宝箱がある。罠がある。
たしかに、目新しい情報じゃない。
「安全地帯については、意味のある情報だと思うぞ?」
「同じじゃないっスかね? もう知ってるし、使ってるっス!」
「いや、知ってるつもりになってるだけだ。ほら、安全地帯は見てもわからないだろ?」
「うぇ? 見えないけど、あるっスよ!?」
俺たちは階段で休憩している。
敵は湧かないし、基本的にはこちらに気づかない。
だから、これまでに敵に襲われたことはない。
――結果として安全ではあった。
「そうだな。俺たちは安全だと思って使っている。でも、それは安全だと仮定してるだけだ」
「ハッキリ書いてあることが大事なんですよねー?」
トウコは首をかしげる。
「え? えーと、書いてあるから、なんなんスか?」
「管理コンソールの情報は正しいはずだ。そこに安全地帯があると書かれた意味はデカい!」
管理者権限を与えて、わざとウソの情報を流す?
まさか、そんなことはしないだろう。
ダンジョンはそんな手の込んだことをしない。
不便で説明不足だが、ダンジョンは公平だと思う。
俺はダンジョンを信じる。
「あー! ゲームなら運営の情報みたいなもんスね!」
「うんえい……? えーと、ゲームを作っている会社さんですか?」
運営発表。公式情報。
正しい情報だ。
もちろんダンジョンはゲームではない。
運営やら発売元は存在しない。
……少なくともゲーム会社じゃあない。
「そう。オフィシャルな情報だ。有志が作ったウィキとか攻略動画とは違う。間違いない情報ってことだ」
「なる! それなら信頼できるっス!」
「そうなんですねー」
基本的には、間違いない情報だ。
でも絶対はない。
「まあ、オフィシャルも間違うことはあるけどな」
「あー。バグっスね?」
「バグだけじゃない。仕様変更。バランス調整。いろいろあるな」
「下方修正はカンベンっス!」
ダンジョンでもこういう変更は起きる。
たとえば五階層の報酬ではエラーが生じた。
でも十階層では自律分身が宝箱を開けてもエラーは起きなかった。
つまり、エラーが修正されている。
前の段階では宝箱は討伐者本人が開ける前提で作られていた。
分身は討伐者本人ではない。そこでエラーが起きた。
だが今回は自律分身が宝箱を開けても、俺が宝箱を開けたのと同じだと判定された。
エラーは起きず、スムーズに報酬が入った。
「オフィシャルなお話なのに、変わっちゃうんですか?」
「ゲームに限った話じゃないぞ。お値段据え置きでお菓子の量が減ったりするだろ?」
「ああ……! 悲しいですよねー!」
「ニュースだって間違っていたことを訂正することはある。発表が正しいとは限らない」
リンは困った顔で言う。
「それじゃあ、なにを信じていいのかわからなくなっちゃいますねー」
トウコは不満げに言う。
「そもそも情報少なくないっスか? ケチっス!」
「いずれは出てくるのかもしれませんねー」
俺はうなずく。
「権限が強くなれば、情報量も増えるのかもしれないな」
アップデートされる場合もあるから、今表示されている情報がすべてとは限らない。
復活の項目は、権限がないのに表示されている。
これは俺が知りたがっていたからなんじゃないか?
ある意味親切に、権限がない情報すら教えてくれたのかもしれない。
「ま、とりあえず管理コンソールの情報は正しいってことにしよう!」
「そうっスね!」
「はーい」
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