モノリス祭り!? 管理コンソールとモノリス……?
「ボス討伐報酬も貰ったし、今日は帰るか?」
「もう眠いっス」
「私もちょっと疲れましたねー。帰ってお風呂入りたいです」
この十階層まで一気に降りてきたからな。
道中も楽じゃない。
帰りもあるし、これ以上先に進むのは無理がある。
「んじゃ、キリもいいし帰るとするか!」
正直、俺はまだまだ戦える。
なにしろ、俺だけ体力に補正があるからな。
地味だけど役に立つステータスである!
逆につらそうなのはリンである。
別にリンがどんくさいわけじゃない。
運動神経は悪くないのだ。
ステータスに敏捷も体力もないからだ。
俺のダンジョンは足場が悪かったり高低差があったりと忙しい。
ついてくるだけでも大変なんだよな。
ちなみにトウコは敏捷のステータス補正でスイスイ進めている。
もともと身軽だし運動神経もいい。
でも、こむずかしいことを考えたせいで頭が疲れたかもな。
自律分身が言う。
「俺は十一階層を偵察してくるつもりだ。先に帰っていてくれ」
「お、そうだったな。頼むわ!」と俺。
分担できるっていいよな。
出してからまだそれほど時間は経っていない。
「【自律分身の術】を強化した結果も調べたいから、死なない程度にするけどな」と自律分身。
「ああ、それがいい。がんばれよ!」と俺。
自律分身は装備を整えて階段を降りていく。
その背に俺たちは応援の言葉をかける。
「いってらっしゃーい」
「お土産よろしくっス!」
……応援、かな?
トウコが黒い板を指さす。
「んで店長! モノリスはどうするんスか?」
「お、それか。それが管理コンソールってやつなのかな?」と俺。
天の声が言っていたものだ。
――管理者権限を獲得しました! 管理コンソールが設置されました!
あいかわらず説明は足りていない。
捨て猫にエサをやってないときのヤンキー。
普通のヤンキーだよぞれ!
「ちゃんと使い方を教えてほしいよな!」
リンは上を向き、口に手を当てて言う。
「どうやって使うんですかー?」
「リン姉……なにやってんスか?」
天の声だからって、上にいるわけじゃないと思う。
「え? お返事くれるかなーって」
でもかわいいのでヨシ!
「……返事は帰ってこないな。とりあえず調べてみよう。いつものモノリスと見た目は同じか……」
自動販売機くらいの大きさの黒い一枚板。
不思議な黒い物体。
表面は光を反射せず、光を吸い込んでいるかのようだ。
「二階層のと似てるっス!」
「ぜんぜん見分けがつきませんねー」
二階層にあるモノリスでは、魔石と素材を交換できた。
これは別の機能があるんだろうか?
分身で触っても何も起きない。二階層のモノリスと同じだ。
「触ってみるしかない、か?」
管理コンソールなんだから、なにかを操作できるんだろう。
リンが少し恥ずかしそうに手を差し出している。
……なんだ?
「手をつなぎましょう!」
「ああ、転移の罠対策か。さすがリン!」
俺はリンの手を取る。
リンとは前にリアルダンジョン攻略記の内容を話し合ったことがある。
モノリスにはいろんな機能がある。
その中には危険なものもある。転移の罠だ。
このタイミングで罠だったら、かなりあくどいぞ!
トウコはリンに抱きついて、顔を緩めている。
「つなぐのは手だけじゃなくてもいいっスよ! へへ!」
「さすがトウコ! 色欲の大罪も近いな!」
「じゃ、触るぞ!」
「ど、どうぞ!」
なぜかリンは顔を赤らめている。
ん……?
……いいのか?
じゃない!
「店長、おさわり宣言っスか!?」
「ちげーわ! モノリスにだよ!」
俺は勢いでモノリスに触れる。
視界が暗転する。
内臓がすっとする!
腹が浮くような感覚!
「――おおっ!?」
二人も俺と同時に声を上げる。
「きゃあっ!」
「び、ビビったっス!」
ここは一階層。
ダンジョンの入口、転送門のある部屋だ。
手はつないだまま。三人一緒に戻ってきた!
「さっきのは転移機能のモノリスだったんだな!」
「帰り道が楽になるやつっスね!」
「手をつないでいてよかったですねー!」
ゲームでよくあるやつ!
ボスを倒したり、最下層にたどり着いたあと、地上まで帰れるやつだ!
親切機能!
それだけじゃない。
転送門の横には、これまでなかったモノリスが設置されている。
「おお、モノリスが増えてるぞ!」
今日はモノリス祭りなのか!?




