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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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VSボス戦! 巨大グモは暗闇で! その2

 トウコは銃を向け、引き金を引こうとする。

 だが――弾丸は発射されない。


 それより前に腕が小さな網にからめとられてしまったのだ。


「うえっ!? ――う、撃てないっス!?」


 引き金を引く指も動かせないらしい。

 だが、全身に糸が巻き付いたわけではない。


 飛来した糸は、さきほど自律分身が受けたものよりも小さい。

 さっきのが大きな投げ網なら、これは弾丸だ。


 さらに小粒の()()()()が連続で飛んでくる。

 二体の分身が盾を構えてトウコの前に立つ。


「分身! ふせげ!」


 次々と着弾した糸弾が盾を白く染めていく。

 これは盾で防げる!


「んなろっ!」


 トウコが逆の手で銃を抜く。マグナム銃だ。

 俺はポーチから投げクナイを抜く。


「トウコ! ピアスショットだ!」

「りょっ!」


 トウコは素早くマグナム銃の狙いを定めて、引き金を引く。

 轟音。空を裂いて弾丸が飛ぶ。


 俺は弾道をなぞるように、同じ軌道でクナイを投擲。

 両手で二本。これは溝をつけた特製品だ。


 弾丸がクモの胴体に着弾。

 ピアスショットはそのまま防御膜を貫通して、背後まで突き抜ける。

 さらに俺のクナイも後を追うように傷口に命中。


「うしっ! 命中っス!」

「いいぞ! こっちも当たった!」


 一拍遅れて、リンが叫ぶ。


「ファイアボール!」


 火球が飛ぶ。

 だがクモは素早く動いて柱の(かげ)に逃れる。


 外れた!



 トウコは銃口を天井に向けてさまよわせる。


「見失ったっス!」


 俺も天井に視線を送る。だがクモの姿はない。

 巨体のわりに素早いぞ……。


「柱の陰から出ていく姿は見えなかったが……どこだ?」


 奴は【隠密】を持っているかもしれない。

 すでに柱の陰から移動している……?


「おい! 前だ!」と自律分身。

「なにっ!?」と俺。


 いつのまに、床の上にクモが降り立っている。

 音も気配も感じなかった!


「ひえっ!」


 トウコがひきつったような声を出す。

 もうトウコのすぐ近くにいる!


 巨大なクモは上体を持ち上げて、前脚を振り上げる。

 そして、まるで抱きつくかのように、足を動かす。


 トウコは転がるようにして、横に跳ぶ。

 クモの攻撃は空をきった。


 だが――


「あっ!?」


 トウコが驚きの声を上げる。

 転がったときに手の糸が床に張りついてしまったのだ。


 腕を床から引きはがそうとしているが、はがれない!


 クモが迫る。


 俺はすかさす準備しておいた術を放つ――


「――入れ替えの術! むっ!?」


 ――だが不発!


 トウコは動いていない。発動条件は満たしているはず――

 いや、床に接着されているからか!?


 接着されているということは、床と一体になっているということ。


 サイズ制限だ!

 これでは発動できない!


 クモが再び上体を上げ、攻撃姿勢を取ってトウコに迫る。

 その口元からは毒液がしたたっている。


 俺は刀を逆手に走り出す。

 力強く地を蹴って、体を前へと押し出す。


 速く! もっと速く!


「うりゃあっ!」


 俺は走り込んだ勢いのまま、体ごとぶつかっていく。

 衝突の直前に身体をひねって、刀を振るう。


 加速と体重を乗せてクモの前脚へと斬りつける。

 刃は通らない。防御膜のせいだ!


 それでも渾身の力を込めた刀は、クモの前脚をはじき上げる。

 刀もはじかれて、体勢が崩れている。


 だが俺の攻撃は終わらない。

 さらに一撃。もっと速く鋭い一撃をぶちこめ!


「ファストっ!」


 【ファストスラッシュ】が刀を加速する。

 崩れた体勢から無理やりに切り戻す!


 速度の乗った斬撃が、前脚を切り落とす。


 クモはひるまず、残った前脚を俺に振り下ろそうとしている。

 無理をして崩れた体勢から回避は不可能!


 だが――すでに術は用意してある!


「入れ替えの術ッ!」


 今度こそ発動!

 対象は盾を持った分身だ。


 俺はトウコの前へ。

 分身はクモの前へ!


 分身が盾で前脚の一撃を受け止める。

 そのままクモがのしかかる。


 分身にそれを支える力はない。

 押し倒され、クモの下敷きにされてしまう。


 毒液が滴る牙が、分身に突き立てられる。

 分身は塵となって消える。


 ――だが盾は残る。


 クモは脚で盾を押しのけようとするが――ぴったりと張りついている。


 盾にはびっしりとクモ自身が放った粘着糸が付着しているのだ。

 足に張りついた盾が邪魔をしてクモは動きを止める。


「よし、動きが止まった! リン、よく狙って撃て!」と自律分身。

「はいっ!」


 自律分身が鎖分銅を投げ放つ。

 ワイヤーがクモの足を捉える。


 リンが突き出した手の中に炎が渦巻く。


「ファイアァ――ランスーっ!」


 詠唱とともに、極太の炎の槍が放たれる。

 クモは逃れようと動くが、盾と分銅がそれを阻む。


 命中。炎がクモを包み込む。

 クモがもがいて、体を丸める。


 クモには発声器官がないから、悲鳴を上げたりはしない。

 だが、充分な痛手を与えている。


 次第に炎が小さくなる。

 ヒットポイントの作用だろう。


 クモがかさかさと、暗闇の中へと逃れる。

 俺はその背にクナイを投擲する。

 ヒットポイントはもうないらしく、簡単に突き立った。


「うりゃっ」と自律分身。


 投げたのは蓄光塗料だ。

 クモの背に瓶が当たって、中身が付着する。


 これでもう見失うことはない。


「あ、逃げるっスよ! トドメを!」


 トウコがじれったそうな声を上げる。

 手はまだ外れず、床に張りついている。


 俺は刀を糸に当てて引く。


「ん、切れないな。頑丈だ」

「な、なに落ち着いてんスか!? あたしはあとでいいっス!」


 暗闇の中、蓄光塗料がぼんやりと光っている。

 光は天井の隅で動きを止めている。


「あいつはもう、なにもできないさ。そろそろ効いてくる頃だ」と俺。

「どっちを使ったんだ?」と自律分身。


 俺は刀を動かして糸を斬っていく。


「両方。先に目つぶしだ」と俺。

「な、なんの話っスか?」


 毒の話である。


「ピアスショットのあと打ち込んだクナイに毒を仕込んでおいたんだ。奴はもう見えていないはずだ」と俺。


 視覚阻害毒(目つぶし)をたっぷり塗っておいた。


 投げモノの激辛刺激物(目つぶし)玉とは効き方が違う。

 目に当てる必要はない。体内に入れば効果を発揮する。


 あのままクモが隠れていたら楽に勝てていたのだ。


「あの時点でほとんど勝負はついてたんだよな。近づかれたときは焦ったけど」と自律分身。


 毒が効くには時間がかかる。

 クモに毒耐性があるかはわからないが、視界を奪えば脅威は小さい。


 さらに念のため麻痺毒を塗ったクナイも打ち込んだ。

 二種類の毒には耐えられないだろう。


 【隠密】しようが、蓄光塗料でマーキングしたから見失うことはない。

 今もぼんやりした光は動かない。

 痛手を受けたクモは天井でじっとしているようだ。


 あとはいつも通り、遠くから射殺のパターンで勝てる。

 負ける要素はぜんぜんない。


 トウコの手の糸がやっと斬れた。

 刀にはねばつく糸がまとわりついている。


 ま、これはクモを殺せば消えるだろう。



 トウコはぽかんと口を開けている。


「えっ? 終わり? 勝ちっスか?」

「ああ」と俺。


 リンが頬を紅潮させながら言う。


「全部予定通りなんですか? さすがゼンジさん! かっこいいですー!」

「まあな!」と自律分身。


 予想より苦戦したけど!


 遠くに見える蓄光塗料の明かりが、落下して地面に落ちた。

 麻痺毒もちゃんと効いたようだな!

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