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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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対策アイテムはタワーシールドで!

■対策アイテムはタワーシールドで!


 長方形の盾――タワーシールド。

 これが今回の対策アイテムだ。


 草原で()り出した木材や、ゴブリンの盾を材料にしている。


 盾は大きいので、自分で構えると邪魔だし重い。

 そこで分身に持たせているのだ!


 威力の低い爆発性のフンを防ぐだけなので、厚みは要らない。

 分身の腕力でも持てる。


「そこ、足元気をつけろよ!」

「あ! 気づきませんでした。ありがとうございまーす!」


 リンが小さく頭を下げる。


「上ばっかり見てると危ないっスねー」

「八階層までより罠は少ないけど、たまにあるからな」


 これも地道にマーキングして、夜光(やこう)塗料を塗ってある。

 入口周辺は罠をチェックしてある。


 今日は先へ進むので、罠チェックをしながら頭上も警戒していく。

 罠探しローラーは今日も活躍している!


「はぁ、またくるくる棒っスかー」

「イヤそうに言うな! おかげで罠を踏まずにすむんだぞ!」


「そうだよトウコちゃん。安心して進めるんだから、感謝しなくちゃ!」


 トウコは両手を広げて派手なリアクションを取る。


「でももっと、ばーっと進みたいっス! 店長のダンジョンは地味っス!」

「地味で暗くてなかなか進まなくて悪かったな! だけど、対策すりゃちゃんと進めるんだよ!」


 トウコは口をとがらせる。


「ちぇー」



 リンがとりなすように言う。


「ゼンジさんのダンジョンって……ちゃんと考えないと進めないですよねー」


 俺のダンジョンは敵が強いと言うより、無策では進めない感じだ。

 コツコツやれば、ちゃんと進む。


「……リンまでイヤになってきたか?」


 リンがぶんぶんと首を振る。


「いえ! そうじゃなくて! その……持ち主に似るのかなって」

「あー。言われてみればそうかもっス!」


「そうか?」

「このダンジョンは、なんだかしっかりしてますよね? ズルが出来ないっていうか……」


「地味でマジメっス!」

「ホメてんのか、けなしてんのか?」


「ほめてます! あの、えっと。ルールがちゃんとしてるからでしょうかー?」

「言われてみれば、そうかもな。他より正統派かもしれん」


 俺が正統派かどうかはさておいて、このダンジョンはやりがいがあるのだ。

 敵にしろ罠にしろ、対策できないことはない。

 試練を与えては来るが、達成できる難しさだ。


 コツコツやれば、ちゃんと勝てる。

 やればやっただけ、先へ進める。


 いまもローラーをコロコロして罠を探してマークしながら進んでいる。



 リンは少しムキになったように言う。


「だから、マジメなゼンジさんみたいだなーって。だから、ぜんぜんイヤじゃないんです!」

「ああ、それならよかった」


 このダンジョンを俺は気に入っている。

 俺のことではないとしても、嫌われたらショックだ。



 トウコも腕を組んでうなずく。


「店長のもリン姉のも、あたしのダンジョンに比べたら居心地いいっスよ!」

「そりゃお前のと比べれば、たいていのダンジョンがそうだろ」


 トウコは左右に首を振って言う。


「あたしはあんなに性格悪くないっス! おかしいっス!」

「別にトウコちゃんのダンジョンはトウコちゃんに似てないよ!」


「持ち主に似るとは限らないんじゃないか? ペットじゃあるまいし」


 ペットは飼い主に似るという。

 ダンジョンは別にそうじゃないだろ?


 リンが不思議そうに言う。


「でも、トウコちゃんのダンジョンは、なんで()()なのかなー?」


 それは俺も気になるところだ。


 なんでああも、殺意が高いのか。

 難易度にしろ、ルールにしろ、持ち主を殺そうとしているかのようだ。


「放置して、悪性手前まで行ったせいか?」

「でも最初からゾンビが出て、あたしはクリアできなかったっス! ムリゲーっス!」


 放置した理由は、クリアできずにひどい目にあったからだ。

 死ぬ思いをして……というか実際に死んでまで、潜る気にはならないだろう。



「放置する前から、ゾンビダンジョンだもんな」


 悪性の前段階までいったときは難易度に変化があった。

 だが、はじめから性質は同じ。

 最初から悪質で悪趣味なホラーダンジョンである。


 リンはこわごわと言う。


「私だったら、逃げちゃいますねー」

「でしょでしょ! あたしもサボったわけじゃないっス!」


 俺はうなずく。


「避けるのは普通だな。放置しちゃいけないとも知らなかったし。好き(この)んで攻略したりしないのが普通か」


 トウコが笑いながら言う。


「そう! 店長は意味もなく命がけでダンジョンに入りびたってるヘンタイっス!」

「ヘンタイじゃねーわ! 趣味で攻略してんだよ!」


 今だってダンジョン攻略は俺の趣味だ。

 好きだからやっている。


 悪性ダンジョンもそう。義務や正義感だけじゃない。

 厭々(いやいや)やってるわけじゃないんだ。



「でも草原ダンジョンはリン(ねえ)っぽいっス!」

「そうかもな。自然豊かで食べ物があって……なんか落ち着くよな」


 俺の言葉にリンは喜びの色を浮かべる。


「そ、そうですか!? よかったですー!」

「リンはダンジョンで食費を浮かせてたんだよな?」


 あと美容に使ったりしてた。

 ポーションを化粧水にしてたり。

 すごい贅沢だ。


 豊富な食べ物。

 人目を避けて過ごせる場所。

 リンは、そんな場所を求めていたのかもしれない。


「はい。私、引っ越しにお金使いすぎちゃって……ダンジョンがなかったら、ゼンジさんのそばにいられなかったかもしれません」


 リンはじっと俺を見ている。

 リンが求めていたのは……。


 俺はこっぱずしくなって目をそらす。


「……ダンジョンがあってよかったな」

「はい!」



「冷蔵庫は例外として、俺たちに向いたダンジョンが現れるのかもしれないな」


 俺たちの望み、求めるものが反映される?

 あるいは持ち主に似たダンジョンが現れるのか……?


 だけどトウコは……あんな悪夢を求めてはいないはずだ。

 明るく裏表のないトウコと、危険で悪意のあるダンジョン。

 ぜんぜん似ていない。


「なんか、あたしのだけハズレっス! 不公平(ふこーへー)っス!」

「まあ、お前のせいじゃない。冷蔵庫の攻略もみんなでやろうぜ!」


「ちぇー」


 俺はトウコの頭に手を置いてなぐさめた。

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