攻略再開! クローゼットダンジョン・第九階層!
八階層からの階段で、リンの用意した弁当を食い終える。
休息は充分。ケガはなく、魔力はある。
俺は腰を上げる。
「んじゃ、行くぞ。ここからは新しい敵が出る。対策アイテムも用意してあるが、慎重にな!」
「はーい!」
「やってやるっスよー!」
俺を先頭に、九階層へ踏み出す。
ここは一度偵察して、新しい敵が出るとわかっている。
おなじみのコウモリだ。だが、動きが違う。
この階も、六階層からづづく石造りの迷宮だ。
だが壁や床は古びて、ところどころ痛んでいる。
「ちょっと暗いっスねー」
石壁が崩れて、壁かけ松明も少ない。
壁からこぼれた砂で足元は埃っぽくなっている。
「炎で照らしましょうか?」
「いや、松明で充分だ。もうちょい分身を増やそう」
俺は分身に六階層で集めておいた松明を持たせる。
リンの魔力は戦闘用に温存。
俺の魔力は【瞑想】で回復できるし【分身の術】は調整がきく。
ダンジョンはいい!
本来の実力が発揮できるぜ!
「あざっス! これで見えるっ! 暗闇に浮かび上がるリン姉のボディラインが!」
「集中しろや!」
けしからんこと言うな!
ちろちろと揺れる炎に照らされて、リンの体はいつも以上に立体感をもって目に飛び込んでくる。
実にけしからん!
って、変な目で見るな!
集中しろ、俺!
リンは話の後半をスルーして、前方を指さす。
「あっ! 来ましたよ!」
コウモリの群れだ!
暗がりから、松明が照らす光の中に姿を現す。
「キィィ!」
頭上でコウモリが飛び回る。
だが、飛びかかっては来ない。
「分身! 盾を構えろ!」
俺の操作で、三体の分身が盾をかかげる。
俺たち三人を守るように、長方形の大きな盾を頭上に構えて、ひさしをつくる。
「キキッ!」
コウモリがやや高度を下げて、俺たちの頭上をかすめていく。
盾の上にコウモリが放った攻撃が着弾する。
連続して小さな爆発音がはじける。壁に光が明滅する。
攻撃の切れ間に、トウコが顔を出してショットガンを放つ。
「うらっ!」
コウモリが悲鳴を上げて撃ち落とされる。
「ファイアボール!」
火球が闇を切り裂き、コウモリを燃え上がらせる。
「ていっ」
俺も釘の束をまとめて投擲する。コウモリにクナイは惜しい。
当たれば落とせるから、小粒でいい!
俺たちは次々とコウモリを撃ち落としていく。
飛んでいるのは厄介だが、俺たちはみんな飛び道具を持っている。
「キィィ……」
最後の一匹を倒して、周囲を確認。
通路の奥、高い天井まで松明の光は届かない。
だが、暗闇を見通せる俺の目なら、少しの明かりがあれば充分だ。
敵の姿はない。
増援なし!
「――よし、戦闘終了! 余裕だったな!」
「ゼンジさんの盾のおかげですー!」
俺は分身に構えさせていた盾をおろす。
木製の盾の表面は荒れてささくれだっているが、まだ使える。
「ははっ! うんこ爆撃、やぶれたりっス!」
コウモリの新しい攻撃手段――フンによる攻撃だ。
爆発するフンを投下してくるのだが、これが地味にヤバい!
初回の攻略は対策なしで挑んだから、ちょっとした被害があった。
初見では、さすがに気づけない。
あのとき、俺はコウモリを待ち構えて刀を構えていた。
だが、近寄ってこない。
そして、なにかが降ってきた。
俺は【危険察知】のおかげで、からくも逃れた。
だが、リンが被弾。
耐久力のおかげでケガはしないですんだ。
それはよかったんだが――
食らったのがフンだとわかると、泣きそうな顔になってしまったのだ。
威力はそれほどではない。
だが、こちらの手の届かない空中からの遠距離攻撃は厄介だ。
俺やトウコが食らったら、即死はないにしてもケガをする。
群れの集中爆撃を食らえば、無事では済まない。
というわけで用意した対策が、盾なのだ!
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