表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

572/1471

普通の世界と異常な世界! ……普通ってなんだ!?

 リンはこの世界とはなにか、と聞いた。

 世界って言葉はなにを指してるんだ?


「うーん。世界ってのは、俺たちが今いる()()だよな?」


 俺は足元を指さす。

 荒れ寺の地下。御庭の拠点。オペレーションルーム。


 御庭は両手を大きく広げる。


「ここもそうだね。もっと広い。具体的に言うならこの日本、この地球、現代社会のことだね。それが僕らにとっての世界なんじゃないかな」


 御庭は具体的と言うが……抽象的でつかみどころがない。


「あいまいな話になってきたな。御庭が言いたいのは()()()()()ってことか?」

「そうだね。学校や会社に行く普通の生活。モンスターもダンジョンもない。普通の人々が思う普通の世界」


 普通か……。

 ダンジョンが現れる前の俺は、普通の世界に生きていた。


「毎日働いて……(むく)われない生活だったな」


「ふつーなんてつまらないっス!」

「ゼンジさんとトウコちゃんのいない生活なんて、考えられません!」



 御庭は少し真面目な顔で言う。


「クロウ君たちは普通じゃない世界に生きている。ダンジョンやスキル、ファンタジーな世界だね」

「ダンジョンは異物だって前に言ってたけど、そういうことか……」


「どういうことっスか?」

「ダンジョンは世界から見て異物。俺たちはダンジョンを持ってるだろ? つまり俺たちも異物。よそ者だ。外来種(がいらいしゅ)なんだよ」


「だからジャマなんスか? ポイされちゃうってことっスか!?」

「普通と違うと、嫌われちゃいますよね……」



 御庭が言う。


「僕ら異能者だって、普通とは言えないよね。だから元は異物だったのかもしれない。でも、長い時間をかけてこの世界になじんだんだんじゃないかな? もう認められてるって感じかな?」


「だから隠蔽がゆるくかかるのか?」

「うん。そうだと思う。僕ら異能者は普通に近い扱いをされる。まあ、お目こぼしだよね」


 在来種だって、最初はどこかから入ってきたかもしれない。

 まじりあって、土着した。


 俺は首をひねる。


「わかるようなわからないような……」

「ぜんぜんわかんないっス!」


「異能者さんたちは、いい外来種なんでしょうかー?」

「いい外来種? 外来種にいいも悪いもあるのか?」


 リンはもどかしそうに言う。


「外から入ってきたからって、みんな悪いわけじゃないですよね?」

「リンが言いたいのは動植物の外来種の話か?」


 外から入ってきた生物は別に悪者じゃない。

 人間が勝手に区別して駆除しようとしているだけだ。


「それもそうですけど……」


「リン君の話は的外れとは言えないね。小麦やジャガイモ、トマトも外から持ち込まれたものだ。おいしいし、役に立つ。悪いものとは言えない」


 ジャガイモは最近まで日本にはなかった。


 小麦って前からあったんじゃないか?

 詳しいわけじゃないけどさ。


「あれ? やっぱり植物の話か? また脱線してないか?」


「これは僕ら異能者の話さ。小麦は二千年以上前。ジャガイモは数百年前。そして僕ら異能者も古くからいる。おいしいかはさておき、役には立ってるのかもしれないね」


「古くからいる……。だから世界にとっては異物じゃないってことか?」

「うん。もちろん推測だけどね。僕はそう考える。異能者は現代社会に居てもおかしくないってことさ」


「ダンジョン保持者はダメで、異能者はアリだって言いたいのか?」

「わかんないっス! 同じじゃないっスか?」


 リンが言う。


「魔法はダメだけど、超能力は普通っぽいってことですよね?」

「そうだよリン君!」


 御庭はリンを両手で指さす。

 正解、ってことか。


「まだ俺にはピンとこないけどな」


 魔法と超能力は似ている。

 不思議な力で炎を生み出したりする。


 どっちも普通じゃないだろ?



 トウコが言う。


超能力(ちょーのうりょく)は現代能力バトルか、SF(エスエフ)っぽいっス!」


 ん? 漫画で言うところのジャンルの話か?

 現代社会になじむかどうか……?


「そう言われれば、魔法は現代っぽくないな」



 御庭が言う。


「そうだよ二人とも。具体的に考えてみようか。ドラゴンが日本にいたらどう思う? この世界にふさわしいかな?」

「ふさわしくない。ドラゴンはファンタジーっぽい」


「じゃあ、ゴブリンは?」

「アウトだよな」


「鬼ならどうかな?」

「お? ちょっと現代っぽいか?」


 ファンタジー感は薄れる。


「わかります! 昔話みたいな感じでしょうかー?」


 御庭がパチンと指を鳴らして、リンを指さす。


「そう! 鬼は昔から日本にいる。陰陽師とか、妖怪退治なんかもそうだよね?」


 昔々あるところに鬼が居ました。

 陰陽師が退治しました。()()で。


 うーん。わかる気がする。


「つまり鬼は日本になじんでいる。陰陽師や妖怪もアリってことか?」

「うんうん。はっきりした区切りのある話じゃないけど、なんとなく、っぽいでしょ?」


 別に日本じゃなくても鬼はいる。

 呼び方が違うだけで、不思議な存在はまぎれている。


「じゃあ吸血鬼だったらどうかな? この世界……地球に居たら不自然かな?」

「不自然だろ? ……だけど、ドラゴンやゴブリンよりはマシか……?」


「吸血鬼なら現代っぽいっス!」

「うーん。吸血鬼は実際に見たし、居るんだよな?」


「うん。吸血鬼は存在する。これはダンジョンから出てきたわけじゃないんだよ。この世界に根付いている普通の存在だ」

「……いやいや、普通じゃないだろ!」


「異能者のことを、クロウ君は知らなかったよね? うさんくさいと思ったはずだ。同じだよ。吸血鬼の存在も隠蔽されてるんだ。僕ら異能者のように、グレーな存在なんだね」


「普通か異常かなんて、あいまいでわかりそうにないな」

「僕にだってわからないさ。知りえる情報から推測できるだけだ。で、話を戻そう」


「ん。どこまで戻す? この世界についてか? ポーションか?」

「クロウ君からみて、ポーションはこの世界にふさわしいかな?」


 昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました。

 ポーションで腰痛が治りました。

 うむ……アウト!


「……ふさわしくない。ファンタジーまるだしだ!」

「ゲームっぽいっス!」

「そうですねー。ぜんぜん、この日本にはなじみそうにないです!」


 そうだ。普通の世界。現実世界。

 この世界にポーションはふさわしくない!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ