ダンジョン保持者と異能者の違い……?
ポーションは隠蔽が強く働く。
強力なアイテムゆえに、外では危険物なんだ。
外で使うべきでないというのが結論になる。
じゃあ、使い方を工夫したらどうだ?
「なあ御庭。異能者にポーションを使う場合はどうなる?」
トウコが不思議そうに言う。
「え? なにが違うんスか?」
「一般人と違って、異能者には隠蔽の力が効きにくいだろ。もともとスキルやポーションを知ってる相手に使えば大丈夫なんじゃないか?」
「そうですね! このお寺みたいに、霊場だったら違うかもしれません!」
御庭が言う。
「つまり、相手と場所を選んで使えば許されるかを聞きたいんだね?」
「そうだ」
「ある意味ではその通りだね。だけど、ポーションが危険なのは、すぐに傷を治せるからだ。気をつけないといけないよ」
「うぇっ!? ヒーラーはアブないんスか!?」
「うん。治癒能力者は珍しいんだよ。その理由はポーションと同じだね。これはスキルでも異能でも一緒だ」
「パージされるからか……」
いろんな異能、超能力がある。
サイコキネシスやテレパシーは目に見えない。
体が頑丈だとか匂いに敏感だとか、そういう能力は人に気付かれにくい。
治癒能力は目で見て効果がわかりやすい。バレやすい。
バレるとパージされる。
治癒能力を持った異能者が最初から少ないんじゃない。
数が減ってしまうから、珍しいんだ。
「そうだよクロウ君。一般人を相手に治癒能力を使ったら、パージされるってことだ。だから数が少ない」
「つまりバレなきゃ大丈夫なんだよな?」
「バレないように使うのが難しい。ケガ人が急に元気になったらどう思う? 重病人が起き上がったら?」
「そりゃ、不自然だよな……。じゃあ自分を癒すとか、目立たないケガならどうだ?」
「うん。工夫すれば使える。そこが難しいんだけどね!」
「包帯を巻くくらいなら大丈夫だよな? 傷口も隠れるし!」
御庭はうなずく。
「うん。それならバレにくいだろうね」
リンがトウコを見る。
「気を付けてね、トウコちゃん?」
「うぇ? なんでっスかリン姉?」
「ほら、犬塚さんに包帯を巻いてあげたとき、ダンジョンの外だったから……」
「あ、そういえば【応急処置】したっスね!」
暴食が逃げたあと、消火器ボックス前でのことだ。
「あのときは誰も見てなかったし、大丈夫だと思うぞ」
「回復効果もなくて、ただ包帯巻いただけっス!」
リンは安心したように言う。
「あ、そうなんだー。スキルが弱くなってたんですね!」
御庭がトウコに言う。
「トウコ君は治癒能力があるんだね? なら気を付けて使うんだよ!」
「ちょっと血が止まるくらいっスけどねー。でも気を付けるっス!」
スキルレベルが低いから、効果もそれなりでしかない。
おかげで外で使っても効果がなかった。
回復系のスキルを育てるなら気をつけなきゃな。
「なあ御庭。さっき治癒能力の場合、スキルでも異能でも同じだって言ってたけどさ。前、異能者には隠蔽が効きにくいって言ってたよな?」
「えー! ズルいっス!」
御庭が眉を上げる。
イケメンがやると様になるね。
「よく覚えてたねクロウ君。たしかに異能は隠蔽がゆるくかかる。だけど基本は同じだ。目立てばパージされるよ」
「ああ、治癒は目立つし、隠蔽が強くかかる。だから異能者でもパージされるのか……」
トウコが御庭に言う。
「じゃあじゃあ! 異能とスキルってなにが違うんスか!?」
「似た力だけど、少し違う。異能は超能力や霊能力みたいなもの……普通とは異なる力ではあるけど、この世界の力と言えるんだ。それに対してスキルはダンジョンの力だよね?」
「つまりファンタジーな力か……」
異能はこの世界の力。
スキルはダンジョンの――ファンタジーの力。
リンが小さく手を上げる。
「あの……。この世界って、どういう意味なんでしょうかー?」
この世界を守ろうとする隠蔽の力。
切り離しと認識阻害。
前に御庭はそう説明した。
なんとなく納得してたけど、たしかによくわからんね。




