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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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三つ目の事件はデパートで!

 御庭が三つ目の事件について話し始める。


 スクリーンの映像が切り替わり、デパートが表示される。

 これは俺でも知っているほど有名なデパートだ。


「事件はデパートの地下で起きた。年末年始でにぎわっていた……」


「デパ地下って、やばくないっスか!?」

「そうだな。他の場所に比べて、かなり人が多いよな?」


 御庭は頷く。


「普通なら、こんな場所にダンジョンができるはずがない。過去にも例がないんだ!」

「ああ、そうだろうな」


 悪性ダンジョンについて最近知ったばかりの俺でも、異常な出来事だとわかる。

 人混みのど真ん中にダンジョンができたりしたら、安心して暮らせない。


 ここは現代日本だ。平和に、現実的に人々は暮らしている。

 ファンタジー世界みたいにモンスターやダンジョンが湧くわけがないんだ。


「ここには、チームを送れなかった。すぐに動ける部隊がなくてね」

「じゃあ、どうしたんだ? どうしようもなかったってことか?」


「いや、特異対策課の別チームが動いていた。戦闘を主に行う部隊だ。それも精鋭部隊が送り込まれた」


 特異対策課(とくいたいさくか)は、俺たち公儀隠密以外にも部署がある。

 その精鋭部隊か。


「そりゃ心強いな。どうなったんだ?」

「僕もそう判断して、こっちの部隊はホテルに回したんだ。だけど――彼らは壊滅(かいめつ)してしまった! 全滅(ぜんめつ)だよ!」


 御庭の言葉に、俺たちは驚く。


「うえぇ!? 精鋭部隊なのにやられちゃったんスか!?」

「そんな……!」


「それほど敵が強かったのか?」

「強さの問題じゃないんだ。正確に言えば、彼らは消滅(しょうめつ)したんだよ。ダンジョン領域ごとパージされてしまったんだ!」


「ああ、領域ごと切り離(パージ)されたのか!」


 精鋭部隊だろうと、自分たちのいる場所ごと消えてしまっては対処できない。

 どうしようもないな……!



 リンが言う。


「でも、その前に外に逃げられなかったんでしょうか?」

「ああ、だよな? パージの前には気配でわかるはずだろ?


 パージが起こる前には予兆がある。

 精鋭部隊なら、それを知らないわけはない。


 御庭が少し申し訳なさそうに言う。


「僕らは中に入っていないから、ダンジョン内でなにが起きたかはわからない。もしかすると脱出できない理由があったのかもしれない」


「敵が強かったんスかね?」

「にらみ合って撤退できなかったのか……あり得る話だ」


 ショッピングセンターだって、そうなる可能性はあった。

 ウラドと暴食のボス戦を俺たちが妨害したら、時間がかかってパージが起きたかもしれない。


「それで、どうなったんですかー?」

「彼らは戻らず、パージがおきた。その結果、ビルの地下部分がごっそりなくなってしまった!」


 俺は聞き返す。


「地下部分だって? ビル全体じゃないのか?」

「うん。地上部分の建物は残っているよ」


 しかし、それって……。

 本筋とは関係ないかもしれないけど、それっておかしいことになるよな?


「……ビルが倒れちまうんじゃないか?」


 柱とか、建物の強度はどうなっちゃうんだよ!?

 地下にあった施設がなくなっても大丈夫なのか?


「そのあたりは隠蔽の力がうまく働く。ビルが倒れたり機能不全に陥ったりしない。どれだけの力が働いたらそうなるんだろうね?」


 隠蔽の力は記憶を消すだけじゃない。

 異能やダンジョンの痕跡を消すために世界の一部を切り離したりもする。

 つまり、世界の一部が切り取られて、周辺の空間がくっつく。


 世界が縮んでも、周辺には影響しないという、よくわからないことが起きる。


 建物の一部が消えても、影響は抑えられるらしい。


 たとえば変電施設が地下にあったとする。

 パージに巻き込まれて施設が消えれば、ビルの残った部分が停電する。

 そうなれば異常がバレてしまう。


 理屈はわからないが、世界は問題を修復してしまう。


「とんでもないな……認識阻害の力!」

「世界のパワーっスね。まさにチートっス!」


 まさにチート。世界が行う現実改変だ。

 あれだけの事件で、異常がバレないわけはない。


 これまでもダンジョンの存在は人々に知られていない。

 こうして無理やりに、世界は情報を秘匿(ひとく)する。



 リンは考え込んでいる。


隠蔽(いんぺい)の力って、なんでもありなんでしょうか?」

「なんでもありではないよ、リン君。今回のケースはかなりの余波があるだろう。デパートの地下にいた人々、その家族、従業員……その関係者の記憶を書き換えたり、建物を修正したりすれば無理が出る。隠しきれないほころびもあるはずだよ」


 リンは首を横に振る。


「いえ……隠すことじゃなくて。ええと、そのために使う力にも限界があるんじゃないかなって……。ほら、魔法だって使いすぎると疲れちゃいますよね?」


 ん……? 疲れる?

 そういう見方もあるのか!?


 隠蔽は世界の仕組みだ。自動的に起きる修正力。

 違反すると追放される。そういうルールみたいなもの。


 人間が使うスキルや魔法とは違う……と俺は思っていた。

 だが、何らかの力が作用するなら――


「リンが言いたいのは隠蔽の力にかかる()()()のことか?」


 リンは嬉しそうに俺を見て頷く。


「そうですー! 私が言いたいのはそれです!」


 御庭は少し考えてから言う。


「うーん。独特の観点だね、リン君。……世界にかかる負担(コスト)か。あるかもしれないね」


 パージは世界に負担がかかる……?

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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃ現実の理を捻じ曲げるんだから それに必要なエネルギーというかリソースはありますよね… もし限界を超えたらどうなるのか恐ろしい話
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