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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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復讐はドブの香り!? その2

その1はずいぶん前です。四章の前半にあります。

 犬塚さんは暴食の匂いは三階に漂っていると言った。

 そして、二階に匂いはなかったという。


 ならば、まだ三階にいるのだ。

 そして聞こえてきた獣の声。途切れる鳴き声。


「――この感じ……暴食だ!」

「そっちかっ!」


 犬塚さんは声のしたほうへと走っていく。

 手にはナイフを握っている。


 俺たちも後を追う。



 暴食が獣を食らっている。

 ほとんど体を失った獣が塵になって消える。


「ああ、食い足りん……!」

「あんたが食らうのは、アタシのナイフだよっ!」


 犬塚さんがナイフを投げ放つ。


「――むっ!?」


 暴食は振り向きながら、それを手で払い落とした。

 そのナイフを犬塚さんが、空中でつかみ――


「死になっ!」

「ッッ――!」


 ナイフの一撃が暴食の胸元を切り裂いた!

 血が噴き出して、あたりを赤く染める。


 さらに犬塚さんのナイフがきらめく。


「らああッ!」


 二度、三度。

 暴食はそれをかわせず、腕で受ける。

 コートが切り裂かれ、腕から血が滴る。


「ぐあっ! き……貴様はなんだ!?」


 暴食は背後へ飛んで逃れた。

 だが、犬塚さんはすぐに距離を詰める。


「お前を殺すものさァ!」


 犬塚さんは答えながらも、手を休めない。

 問答無用だ!

 最初から殺す気だし、許す気もない。


 匂いで判別しているから人違いもあり得ない。



 暴食が手を振りかぶる。


「――調子に、乗るなぁっ!」

「ふんっ――」


 当然、その狙いは犬塚さんだ。

 だが犬塚さんは退()かず、さらに踏み込んでいく。


「――その手、なにかある! かわせっ!」


 そう叫んだ俺の言葉より早く、犬塚さんは回避行動に移っている。

 横や後ろではなく、前へ。


 身をかがめ、ナイフの刃で暴食の腕を受ける。


「ぐうっ!」

「あんたこそ調子に乗ってんじゃないよォ!」


 犬塚さんはナイフの刃を立てて、暴食の前腕をすべらせた。

 肌に埋まった刃が、手首からひじのあたりまで、深く長い傷をつくる。

 派手に血が噴き出す。


「う、うおおっ!」


 暴食が逆の手を振る。


「おっとォ!」


 犬塚さんはそれをかわして飛び退く。

 距離が離れた。


 おお! ――犬塚さん、強いぞ!



 暴食が叫ぶように言う。


「け、獣どもっ! 出ろ!」


 暴食の足元から黒い影が現れる。


「ガウォ!」


 現れた黒い獣が飛びかかっていく。

 犬塚さんはナイフを突き立てる。


 獣はさらに増えていく。

 足元から湧き出るように二匹……三匹。増え続ける。


「ちっ! まるで腐った死体だ! 臭くてたまらないねェ!」


 犬塚さんは飛びかかってくる獣を切り倒していく。

 しかし、暴食が獣を増やすほうが速い。


 暴食はじりじりと距離を取っていく。


「ガウッ!」


 獣が大口を開けて、犬塚さんにかみつこうとする。

 だが、それはかなわない。


 俺はいまフリーだ。黙って見過ごすわけはない!


「させるかっ!」


 俺が投擲した投銛(ペグ)が口の中に突き刺さる。

 二投目のペグが頭部に命中。塵へと変える。


 この黒い獣にヒットポイントはないようだな!

 ダンジョンのモンスターよりも脆い!


「ふん。帰れと言ったのにねェ。だけど、ありがとうよォ!」


 犬塚さんは口元を少し緩ませて笑う。

 ナイフは次々と獣を刈り取っていく。



 俺はリンとトウコに声をかける。


「俺たちも手伝うぞ! ふたりとも、距離を保って近づくなよ!」


 暴食の手に触れるリスクは避けたい。

 それに近づくと犬塚さんの邪魔になるしな。


 俺たちは援護するだけでいい。


「はいっ! ファイアボール!」


 火球が黒い獣を焼き払う。

 燃え上がった獣はそのまま塵になる。


「ピアスショットォー!」


 トウコの銃が火を噴く。

 その狙いは暴食本体だ。


 狙いは正確。

 そして、高速で飛ぶ弾丸はかわせない!


 狙いたがわず、貫通弾が暴食の頭部へ命中する!


「ぐっ!? うおおおぉ!?」


 暴食の頭部から激しく血が噴き出す。


「やったっスか!」


 トウコがフラグじみたことを言う。

 だから、それを口にするな!


「まだだトウコ! ()ってない!」

「うえぇっ! (ハジ)かれたっス!」


 命中したが、弾丸は頭部を吹き飛ばしてはいない。

 ヒットポイントの防御膜が、弾丸の軌道を変えてしまったのだ。


 それでも貫通弾は防御を突き抜けて、こめかみの肉をえぐっている。

 ダメージは大きい!


 暴食が頭を押さえてトウコをにらむ。


「貴様ぁ……ぐちゃぐちゃにすりつぶして食ってやるっ!」

「ぐちゃぐちゃになるのはあんただよォ!」


 再び距離を詰めた犬塚さんがナイフを振る。

 暴食はそれを無事な左腕で迎え撃つ。


「やかましいっ! 腕ごと食ってやるっ!」


 突き出されたナイフを掴むような軌道。

 自信に満ちた暴食の表情。


 ――この攻撃は、なにかある!



「ちいィっ!」


 犬塚さんは腕を引っ込める。

 そのまま、かなり無理な体制で体をひねって飛び退く。


 暴食の腕が空中をえぐる。

 空振りだ!


 空気を切り裂いた攻撃の軌道が、弧を描くように光を放っている。

 犬塚さんのナイフの刃の半分ほどが欠けて……いや、食われている。


 回避が遅れていたら、やられていたな!



「犬塚さん! なにかのスキルだ! 触れるのはマズい!」

「ああ、わかってるよォ……ヤバい匂いがぷんぷんする!」


 暴食は足元から新たな獣を呼び出す。

 また距離が離れてしまった!

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[気になる点] だか、犬塚さんは退かず、さらに踏み込んでいく。
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