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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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再びのショッピングセンター!?

 自動ドアをくぐり、建物の一階へ。

 もう電力が通っている。つまり、ダンジョン領域ではない。


 避難を促すアナウンスが鳴り響いている。


「あれ? まだ誰もいないんスね」

「さっきまでダンジョン領域にのまれてたからだろうな」


 中に人はいない。

 事前に避難して、その後ダンジョン領域になっていたからな。


 認識阻害があるので、ダンジョン領域に一般人は入ろうとしない。

 用事があるとか強い意志があれば入ってしまうが、外で避難を促しているので無理に入る人はいないはずだ。


 店員や警備員すらいないのは、このためだ。


「もう少ししたら、人が入ってくるんでしょうか?」

「たぶんな」


 話しながらエスカレータを駆け登る。

 二階も正常だ。



 犬塚さんは先に行き、もう姿は見えない。

 一刻も早く仇を見つけたいのだろう。



 三階へ向かうエスカレータには電力が来ていない。


「電気がついていない。三階はまだダンジョン領域内みたいだ。警戒しろ」

「リョーカイっス!」

「はい。……結構時間が経つのに、まだダンジョン領域が残っているんですねー」


「うむ……俺が脱出してから三十分くらい経ったかな?」

「ダンジョンが消えるのって、時間がかかるんですねー」

「さっさと消えてほしいっス!」


 前の大鬼ダンジョンのときは、ダンジョンが消えるのにそれほど時間はかからなかったけど……。


 でも、あそこはマンションの一室だ。

 こちらは広いフロアが三階分ある。

 規模が違う。


「たぶんだが……大きなダンジョンだと時間がかかるのかもな?」

「あ、きっとそうです! 広がった分だけ、戻るのが遅いのかもしれませんねー」


「そういえば店長。悪性ダンジョンって世界からポイされちゃうんじゃないんスか?」

「今回はその前に解決できたってことだろ。だからパージは起こらなかった」


 ダンジョン領域が広がって、対処できないと世界はその領域を切り捨てる。

 だが今回は、世界による切り離し(パージ)は起こらなかった。


 もしパージが起こったら、このショッピングセンターは丸ごと消え去ってしまったはずだ。



「ボスを、吸血鬼さんたちが倒したってことですよねー?」


 偵察した内容は二人にも説明してある。


「ああ、ウラドと暴食がボスを倒したんだろう」

「そいつらって、まだこのへんにいるんスかね? 戦う感じっスか?」


 トウコはきょろきょろと周囲を見回す。


「あいつらはたぶん、俺たちより強いぞ。なるべく戦いたくないな」

「そうなんですねー。無理しないようにしましょう」


「でもそれって、犬塚さんしだいっスよね?」

「そうだな。ずっと探してきたカタキだ。見つけてほしいとも思うけど、出くわさないことを祈ってもいるよ」


 犬塚さんにとっては倒すべき仇だ。

 これまで必死に探してきた相手。

 見つければ戦いを挑むだろう。


 犬塚さんが勝てる相手なのか、俺にはわからないが……。


 復讐は止められない。

 家族を殺されているんだ。

 やめろなんて、部外者の俺は言えない。



「お、いたぞ」


 ダンジョンの転送門がある洋服店に犬塚さんがいた。

 あたりを嗅ぎまわっている。


「犬塚さん!」

「ああ、来たんだねェ。でもこれは、アタシの問題だ。無理についてくることは――」


 犬塚さんは首を振っている。

 だが、俺は帰るつもりはない。


「いや、放ってはおけない。奴らは危険だ。見逃せば、またこういう事件を起こす!」

「そうかい。じゃあ、気をつけな。そこら中からどぶ臭い匂いがするよォ!」


 ダンジョンを出たなら、ウラドと暴食は転送門の周辺を通ったはずだ。

 まだ匂いは残っていたんだな。


「仇の匂いがあるんですね? もう一人の匂いはどうですか?」

「もう一匹は吸血鬼だねェ。ま、今そっちはどうでもいいさ」


 犬塚さんははっきりと断言する。


「うえぇ? 匂いだけで吸血鬼ってわかるんスか?」

「ああ。血の匂い。鼻持ちならない高慢ちきな匂い。それに日焼け止めクリームだよォ」


「その匂いはウラドと呼ばれていた男の匂いだと思う。日に当たらない服を着ていた。やっぱりあいつは吸血鬼だったか……」

「吸血鬼とか、会ってみたいっス!」


 トウコは目を輝かせている。


「ええっ!? トウコちゃん、会いたいの? こわい人なんじゃないかなー?」

「吸血鬼は耽美! 甘美! エロス! しびれてあこがれるっス!」


「それは創作の話だぞ! 実際は人を食うバケモノだからな!」



 犬塚さんは俺たちのたわいない会話を無視して言う。


「で、そいつらを見たのはどこだい? このあたりかい?」

「俺が奴らを見たのはダンジョンの中でした。そこの試着室に転送門があって――」


 犬塚さんは試着室を確認する。


「もうダンジョンの入口は閉じているみたいだねェ」


 俺は試着室を覗き込む。

 もぬけのから。転送門は消えて、ただの試着室だ。


「てことは、もうダンジョンには入れないな」


 中はもう調べられない。

 ボスは倒されているってことだ。


「じゃあ、そろそろダンジョン領域も消えるでしょうかー?」

「そのはずっスね!」



「あんたたちはここに来るまで、敵に出くわさなかったみたいだねェ?」

「ああ。俺たちはここまで、吸血鬼にも暴食にも出くわさなかった。それに、普通のモンスターもいなかったな」


 敵に出くわさず、三階まで一気にこれた。

 三階にはモンスターがいるものと思っていたんだが……。



 犬塚さんが言う。


「二階にあいつの匂いはなかった。このあたりからは新しい匂いがする! だから、まだこの辺にいるはずなんだッ!」

「二階に匂いがない……?」


 三階に来るには二階を通るはずだ。

 別のルート……たとえば駐車場から連絡通路で来た、とか?



 リンが言う。


「ダンジョン領域が残っているなら、モンスターもいるんでしょうかー?」

「いてもいいはずっスよね? 消えるわけじゃないっスよね?」


 この状況だと、敵はどうなるんだ?

 ボスを倒したからって、すでに湧いていた敵は消えないはず。


 いま、転送門は閉じている。

 まだ領域は残っている。


「そうだな……。それに、もうモンスターは湧かないのか?」


 犬塚さんが言う。


「いや、領域があるならモンスターは湧くはずさァ! でも、三階に敵はいなかった」


「うぇ? いるはずなのにいないんスか?」

「つまり……誰かが倒してるってことか!?」


「そうなるねェ!」


 そのとき、遠くで戦闘音が聞こえた。


「犬の声が聞こえたっス!」


 獣の叫び声。悲鳴。

 そしてその声はすぐに途切れる。


「――この感じ……暴食だ!」


 まだ奴は、このショッピングセンターにいる!

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