ありえないことなどない。可能性は無限大だ!
ややこしい部分は斜め読みでよいです。
<経験が一定値に達しました。レベルが上がりました!>
「おっ! 久しぶりのレベルアップ!」
これでレベルは7だ。
しかし、長い間レベル上がらなかったな。
これは……適正レベルみたいなものがあるのか?
低階層で雑魚狩りをくり返しても経験値効率が悪いとかね。
一階でひたすらゴブリンを狩ってもレベルは上がりにくいってわけだ。
俺は死んだり怪我したりしたくないので低階層に入り浸っていた。
今は回復のあてができたから、ちょっとくらい無理しても大丈夫だ。
薬草や治癒薬のおかげで、安心して先へ進める。
今も、腰袋には布で大事に包んだ治癒薬がある。
薬草の十倍のポイントの品物だ。効果も期待している。
一応包みを解いて中身を確認してみたが、治癒薬はちゃんとあった。
開封もしていないから揮発して消えたりもしていない。
当然、新品未開封。状態良好だ。薬草のように半端に使って消えかけるようなこともない。
もちろん、新品なんだから、あって当たり前なんだが……ファンタジーだしな。
手に入れてからの経過時間で消えないとも限らない。一応のチェックだ。
おそらく治癒薬も薬草と同じ一回使い切りタイプ。
栄養ドリンクよりも小さい小瓶だから、飲み切るのは簡単だ。
デカい水薬だったら、腹がタポタポになるんだろうな。
小さい治癒薬でよかった。
四階層は俺の今のレベルだとやや難しいという感じか……
ということは……階層の倍くらいのレベルが適正ってことかな?
三階層だと、レベル6が適正。
そうだとすれば、俺にはちょうど良かったことになる。
それにしては、苦戦ぎみだった……ポイントを使い切っていなかったからか?
いや、そんなぴったりしたレベル設計だとは思えない。
スキルを全部戦闘系に振ってたらもっと楽なんだろうな。
俺のスキル構成はバランス型で、やや移動系に寄っている。
主力の忍術も攻撃的ではない……と思っていたが。
もはや分身の術は立派な攻撃技と言える。
攻守がそなわり最強に見える……!
分身の強さは実際、無敵なのだ。
本体を前に出さずに分身だけ戦わせる限り、俺は安全だ。
いわゆるダメージのフィードバックはない。
分身レベル3だとコストが重いことが難点だ。
コストの問題がなければ、多数の分身を同時に放つこともできる。
まあ、俺の頭が追いつかないので多数の分身を同時に操作するのは無理だけどね。
一人で数体のキャラを操作できるような廃ゲーマーなら、そういうこともできるかもしれない。
キーボードやコントローラーよりも分身の操作は難しいので、相当の練習が必要になるだろうけど。
リアルタイム操作の戦略ゲームとか、頭が混乱してうまくできないんだよな。
ゲームセンターにある、カードを操作して軍隊を動かすゲームとか、音ゲーみたいな手さばきが要求される。
ちょっとやってみて、挫折した。
できる人はすごいと思う……。
ある程度の指示での操作なら、俺でも数体は操れるだろう。
実戦で十分通用することはさっき試した限り、いけそうだ。
結局、スキルを連発すれば魔力酔いになってしまう。
ネックはステータスの魔力が平凡なこと。
そして魔力を回復する手段がないこと。
せっかくレベルも上がったし、そういうスキルを取得したい!
「コストを軽減するスキルとか、回復するスキルないのか? 俺が選べないだけ?」
どういうわけか、俺は魔力系のスキルが取得できない。
【身体強化・筋力】は取れるのに【身体強化・魔力】は選択肢にあがらないのだ。
これは……魔法忍者なんてありえないとか言ってた罰なのか?
俺が魔法や銃をありえないと……自分のスタイルに合わないと考えているからか?
ありえる。
リヒトさんは「認識」の話をしていた。
ダンジョンのアイテムが消える条件のことなので、ちょっと違う話のようでもある。
でも「俺が認識」することでダンジョンの法則……ルールが変わることになる。
俺の持ち物だから消えたら困る……と思っている物品は消えないことになる。
こんな都合のいい話、現実的には考えられない。
現実には物品が塵と消えたりはしないが、食べ物が腐敗したり金属がサビることはある。
そういうことを、一人の人間の意識や希望で変えることはできない。
普通はできないことだ。
しかし、現実にも特定の条件ではそういうことが起こるらしい。
量子力学の「二重スリット実験」などがそうだ。
科学者になるわけじゃないから、理解する必要はないんだけど……。
それはこういう実験だ。
電子を飛ばしてスリットを通過させ、向こう側にあるスクリーンに描かれる文様を調べる実験だ。
スリットが一つなら、直線の文様になる。
スリットが二つなら、縞模様になる。
二つのスリットに入った電子がぶつかり合うから縞模様になるのか……?
詳細は省くけど、肝はこの後。
スリット二つの状態で、ぶつかり合わないように単発の電子を発射する。
さらに、どちらのスリットに電子が入るかを観測する。
すると、結果が変わってくる。
縞模様ではなく直線になるのだ。
これは、観測することによって結果が変わるのではないか……ということらしい。
はっきり解明されていないらしい。
みんな大好きな、シュレーディンガーの猫も似た話だ。
観測されないなら、どういう状態だかは不明だという。
生きてる猫と死んでる猫が同時に存在するとかしないとか。
……ちょっと、何を言っているかわからない。
観測する、ということで結果が変わることがあるという話だ。
ダンジョンの法則は、現実世界よりもこの「認識」による振れ幅が大きいのかもしれない。
そうだとすれば、スキルの偏りもなんとなくは納得できる。
「なら、俺は魔法や銃、毒なんかの趣味に合わないスキルもアリだと思わなければ……」
魔力を回復するスキル……欲しい!
銃も毒も、忍者にはぴったりじゃないか。
銃なんて史実でも漫画でも使われているし。
火薬も煙玉もあるじゃないか。爆遁の術とかあるじゃないか。
死者をよみがえらせたり転生させる忍術すらある。
そこまでいくと忍法か。もう何でもありだ。
忍者の可能性は無限大だ。なんでもありだ。
許されぬことなどない、と言うではないか。
ああ、これはアサシンか。
忍者は暗殺者でもある。いいではないか。
アサシンだって銃も火薬も使うぞ。
「だんだん、アリに思えてきたな……」
そう、忍術には催眠術や精神操作すらもあるからな。
己に自己暗示をかけて……思い込むのだ。
「魔法はある……魔法はある……」
心を無にしろ。
すべてを受け入れろ。
敵が周囲に居ないことを確認して、目を閉じる。
さながら瞑想のように深く……念じる。
魔力を回復するスキル……!
魔力の消費を軽減するスキル……!
魔力を増加させるスキルよ……!
あるはずだ……! 取得できるはずだ……!
「でえいっ! ステータスっ!」
謎の気合と共に、ステータスウィンドウを開く。
すかさず、取得可能なスキル欄を確認する。
【薬術】【毒術】【瞑想】……。
魔力を回復しそうなスキルは現れなかったか……。
「ん、瞑想!? 前はこんなのなかったな。これはもしや……」
スキル欄を確認する。
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【瞑想】
レベル1:瞑想を行っている間、体力と魔力を回復する。
レベル1への必要ポイント:1
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あるっ!
やはり、認識次第でスキルが生えることがある!
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