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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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黒い獣は共食いで!

 伊達男(ウラド)暴食(ぼうしょく)と呼ばれた男は、やや険悪な雰囲気で会話している。


 俺は木の陰からそれを観察している。

 バレていない。


 あたりには血の匂いが立ち込め、獣たちは興奮して吠えている。

 おかげで俺の気配が目立たずにすむ。



 ウラドが苛立たしげに言う。


「このままじゃダンジョンがはちきれる! そうなれば、餌場(えさば)がなくなるぞ!」


 暴食は舌打ちする。


「ちっ! なら急ぐとしよう! ――出ろ、獣ども!」


 暴食の足元から、黒い影がわいて出る。

 影のように見えたそれは――獣だ。


 その姿は、このダンジョンで見慣れた大型の獣によく似ている。


 違うのは色。

 体毛というより、全身が黒。

 墨や影で作られているようにも見えるが、実体はありそうだ。


「グルル……」


 唸り声をあげるその姿にはどこか禍々(まがまが)しさを感じる。


 暴食の足元から次々と黒い獣が現れる。

 すぐに十数匹の群れとなって、ダンジョンの(モンスター)へと襲いかかってく。


 ダンジョンの獣はそれを迎え撃つ。

 まるで共食いだ!


 黒い獣がダンジョンの獣にかみついて引き倒す。

 そこへ別の獣が襲いかかる。


 黒い獣が傷ついて、黒い血が流れ出る。

 ……普通の生き物とは違う。


 二種の獣の群れはお互いを食い合っている。


 もう辺りは血の海のようだ。

 土にしみこむよりも流れる血が多い。

 ひどい光景だ……。



 個体の強さはダンジョンの獣のほうが強いようだ。

 だが、暴食は次々と黒い獣を呼び出していく。


 俺の【分身の術】のようなものだろうか。

 あるいは召喚とか……そういうスキルか?


 だんだんと数で圧倒して、ダンジョンの獣が減っていく。

 暴食も手を振るって、獣を食い続けている。


 獣は数を減らしていく――

 もう、勝負は一方的になってきた。



 そのとき森の奥から、身の毛がよだつような咆哮が聞こえてくる――


「ガォォォォ――!」


 びりびりと森の木々を震わせ、巨大な獣が現れる。

 ――デカい!


 ボス個体だろう!


 首が二つある巨大な獣だ。

 大きな口を開け、そこからチロチロと炎が出ている。


 獣が首をもたげて、炎を吐きつける。

 二人はそれを飛び退いてかわす。


 炎が激しく吹き抜ける。

 黒い獣も残っていた獣も、もろともに吹き飛んでいく。


 地面が黒く焼け焦げて、くすぶる。


 大した火力だ!

 かなり離れている俺のところまで熱気が来るほどだ。



 伊達男(ウラド)がきびしい口調で言う。


「――来たぞ。ボスだ。倒してもいいが、食うんじゃないぞ!」

「ああ。……我慢できたらな?」


「もし食ったなら、私の忍耐は限界を迎えると知れ!」

「くくっ! お前を食ってみるのもいいかもしれんなぁ?」


 この二人、ウラドと暴食に上下関係はないのだ。

 共闘しているように見えるが、同じ組織に属していないのかもしれない。


 ウラドの目的は収穫。タネを刈り取ること。

 タネとはボスのことだろう。


 ダンジョンを育てて、はちきれる前に収穫するってことだ。

 そのためにはボスを食われては困るらしい。


 つまり、ウラドの目的はボスにある。

 ボスを倒すこと。倒して得られるなにか……。



 一方、暴食の目的は食事だ。

 ウラドとはそう約束して、ここにいる。

 ただ、腹を満たしたいだけというシンプルな理由だ。


 暴食は、ボスだろうがウラドだろうが食えればそれで良いのだろう。

 だが、餌場がなくなってはこまるに違いない。

 餌場(えさば)とはこの場所。つまりダンジョンのことだ。


 でも、ボスを倒せばダンジョンは消えるはずだが……?


 ふむ……。

 似たようなダンジョンがあって、それをウラドが紹介するということか?



「話は終わりだ! くるぞ暴食!」

「ああ、()るぞ!」

「ガォォッ!」


 双頭の大型獣とウラドたちは戦闘を始める。

 俺はゆっくりと後退して、その場を去る。


 ――ここが退()き時だ!


 戦う様子を見てみたいとは思うが、それはできない。

 ボスを倒せば奴らはここを出る。


 そのとき、隠れきれるかはわからない。

 俺がこの場にいたことすら知られず、ひそかに立ち去るのが一番!


 情報は充分に得た!

 こいつらがボスを倒すなら、ダンジョンも領域も消えるはず!


 その前に、さっさと脱出するぜ!

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